今月と来月は世界最高峰のスター歌手が続々と来日しますが↓、その第1弾がドミンゴです。

83歳になるドミンゴは、これまで「最後の来日公演」みたいに言われてきました。主催者の告知チラシには「日本のファンに最後の贈り物」と書いてありました。しかし、今日のコンサートを聴く限り、声の艶やエンターテイナーとしては健在で、まだまだ来日してくれるような気がします。日本にお小遣い稼ぎで適当に公演して、和食と観光を主目的とする海外アーティストはいますが、ドミンゴは真剣で手抜きをしません。今日の前半はヴェルディなどのオペラのアリアをしっかり聴かせてくれて、後半はサルスエラ中心で楽しく聴く感じの構成でした。


ドミンゴは「アンドレア・シェニエ」から登場しますが、ステージに入ってくるとブラボーが出て歓迎されます。背中が少し曲がっているのは仕方ないですが、往年の声量はさすがに出ないものの、真剣に演技をしながら、ドミンゴらしい声の艶はありました。28歳のソプラノ歌手のコネサはキューバ系アメリカ人で、華奢なスマートな容姿ではありますが、「トスカ」や「蝶々夫人」をドラマティックに歌います。この方は、「椿姫」のようなキャラクターが合っていると思いました。新国立劇場の今週からの「椿姫」に出て欲しかったです。コネサが登場する際にドミンゴがアテンドするシーンは面白かったです。前半のドミンゴは「マクベス」と「イル・トロヴァトーレ」を歌いますが、どちらも難しいアリアですが、迫真の演技で堂々と歌い上げました。


後半はドミンゴのルーツであるサルスエラを中心としてますが、主催者から事前の曲目発表がないので予習不可能で、ステージに字幕無し、プログラムに対訳無しで、歌詞を理解するのが不可能でした。しかし、初聴でも聴きやすい曲で、ミュージカル・テイストで、軽い気分で聴くことができました。ドミンゴも楽しそうに歌っていましたが、最後のソロバーサル作曲のサルスエラ「港の酒場女」はドミンゴの十八番で、別格です↓。

この曲は三大テノールのコンサートなどでドミンゴがよく歌っていて、テノールの曲です。ドミンゴは2010年頃からテノールからバリトンに転向し、筆者は2010年1月のMETで「シモン・ボッカネグラ」(レヴァイン指揮)で初めてドミンゴのバリトンを鑑賞しました。今回もバリトンの曲ばかりですが、83歳のドミンゴはこの「港の酒場女」だけは、まさかのテノールで歌っていました(筆者が聴いた感じですと、テノールの音域だと思います)。往年のドミンゴを彷彿させてくれて、この曲が今日の白眉でした。アンコールではドミンゴのエンターテイナーぶりが炸裂し、レハールでは孫くらいの歳の差のソプラノのコメサと踊ったり、指揮者と会場とのやり取りで笑わせてくれました。また、ドミンゴが元気に来日してくれることを期待します。

(評価)★★★★ ドミンゴの声の艶は健在でした!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演 

〈曲目〉

第1部
ヴェルディ:歌劇「シチリアの晩鐘」より序曲
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」より〝祖国の敵〟(ドミンゴ)
プッチーニ:歌劇「トスカ」より〝歌に生き、愛に生き〟(コネサ)
ヴェルディ:歌劇「マクベス」より 〝裏切り者め!憐み、誉れ、愛〟(ドミンゴ)
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より〝ある晴れた日に〟(コネサ)
プッチーニ:歌劇「マノンレスコー」より間奏曲
ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より二重唱〝よいか?~私の願いを聞いてください〟(ドミンゴ&コネサ)


第2部
ヒメネス:サルスエラ「ルイス・アロンソの結婚」より間奏曲
ソウトゥーリョ/ベルト:サルスエラ「ソル・デル・パラルの女」より〝幸せな時はもはや〟(ドミンゴ)
モレノ=トローバ:サルスエラ「マルチェーナの女」より〝ペテネラ〟(コネサ)
ゲレーロ:サルスエラ「ロス・ガビラネス」より〝私の村〟(ドミンゴ)
ソウトゥーリョ/ベルト:サルスエラ「口づけの伝説」より間奏曲
ペネーリャ:歌劇「山猫」より〝僕は闘牛士になりたいんだ〟(ドミンゴ&コネサ)
バルビエリ:サルスエラ「ラバピエスの理髪師」より〝パロマの歌〟(コネサ)
ソロサーバル:サルスエラ「港の酒場女」より〝そんなことはありえない〟(ドミンゴ)


アンコール〉 ✳︎確認中: ドミンゴが「グラナダ」、コネサが1曲ソロで歌っていました。

ビジュガス/ゴメス:私の歌の黒髪の女 La Morenade mi copla【二重唱】

レハール:唇は語らずとも Lippen Schweigen 
~喜歌劇『メリー・ウィドウ』より
【二重唱】

ベラスケス:ベサメ・ムーチョ

【二重唱】

出演:プラシド・ドミンゴ、モニカ・コネサ(ソプラノ)
指揮:マルコ・ボエーミ
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団