(2019年8月のザルツブルク音楽祭でのドミンゴ)


先日のムーティの春祭のアイーダ演奏会形式があまりにも酷く、今週末のエレクトラは行かないことにしました。ほとんどの音楽評論家がムーティを絶賛しているのが驚きで、今は癒されるためにハワイに来ています。エレクトラは主要5役がドイツ、英国、ロシア、日本とバラバラで、ドイツ語圏出身の歌手で揃えるべきでしょう。これも絶賛されてますが、本物を知らない方はそうなります。こう言う企画面も春祭のダメなところで、春祭については後日、まとめてコメントしたいと思います。


《今回のブログは、ガラパゴス音楽評論家による宣伝のような類いではなく、個人的な見解です》


タイトルの通り、今年は多くのスター歌手が来日していますが、特に5月と6月は充実しているように思います。春祭や新国立劇場の小粒な歌手を聴くよりはこちらの方が良いと思います。✳︎ルネ・パーペは大尊敬してますので例外です。


1. まず、5月の2週目にドミンゴが来日します。過去何度も「最後の来日公演」と告知に書かれていましたが、この部分はあまり焦点にはならないでしょう。83歳で現役で最も歌っている唯一の三大テノールですが、バリトンに転向してから、レパートリーが増えました。彼の最近の印象深い公演は、2019年の夏のザルツブルク音楽祭での公演です。この年に「me too」運動でドミンゴも過去のセクハラ問題を追及されて、多くの公演自粛やキャンセルされておりました。こう言う問題に比較的おおらかなザルツブルクで、ドミンゴが出演することになり、会場は女性の観客含めて、ブラボー喝采の歓迎ムードでした。この時のカーテンコールの時にドミンゴが涙ぐんでいたのが記憶に残っています↓。

声量は落ちているとは思いますが、ドミンゴらしい艶のある歌唱を期待したいです。


2. ドミンゴの翌週には、筆者が世界最高峰のソプラノだと思っているグレゴリアンのコンサートがあります。彼女を最初に聴いたのは、2017年のザルツブルク音楽祭「ヴォツェック」です。この時はM.ゲルネが圧倒的な存在で、あまりグレゴリアンには注目が行きませんでしたが、18年のザルツブルク音楽祭での「サロメ」は近年で最高のサロメでした。彼女の歌唱と演技は完璧で、グレゴリアンの良さはやはりフルステージのオペラで発揮されます。この公演で世界的に注目されるようになったと思います。以降、グレゴリアンが出演するザルツブルク音楽祭のオペラは20年のコロナの年以外は毎年聴いており、特に21年の「エレクトラ」と昨年の「マクベス」は秀逸でした。こちらの映像は彼女のザルツブルク音楽祭でのインタビューと公演の様子がレビューされてます↓。

東響の「サロメ」の演奏会形式でも圧倒的な存在でしたが、今回の東京でのコンサートは多言語で彼女の魅力がたっぷり味わえると思います。特にオペラ「ルサルカ」の《月に寄せる歌》はとても美しい名曲です↓(この映像で演技しながらの歌唱が秀逸です)。AプロとBプロの両日ともに聴けます。

グレゴリアンが失敗することは見たことがありません。しかも、映像で話されていたように、2人のお子様を大事に育児されながら、公演をこなしている点に脱帽です。


3. 6月に入るとポスト三大テノールと言われたアラーニャが久しぶりに来日します。アラーニャについては、先月のブログで取り上げましたので、宜しければ、ご覧になってください。

とにかく、この人の公演は何が起こるか分からないので、スリルがあります。


4. 最後は6月下旬にMETオケと一緒に来日する当代一のメゾ・ソプラノのガランチャでしょう。少し残念なのは曲目が「青ひげ公の城」(演奏会形式)で、マニアックな曲なので、チケットが余っているようです。METオケ来日公演にはソプラノのオロペサらも同行しますが、どうせなら、分かりやすくヴェルディのレクイエムをやった方が興行上は良かったと思いますが、ガランチャが来日する時は必ず行くことにしています。彼女は忙しすぎて、ザルツブルクのオペラにも出なくなりました。ちなみに、この公演、龍角散がスポンサーになったので、サントリーホールで龍角散飴が配布されると、龍角散臭がホール内に充満して、困りますね。


まとめると、来月と再来月にソプラノ、メゾ、テノール、バリトンの第1人者が揃っていて、この4人が同時に出るガラ・コンサートが実現していれば凄かったと思います。実力面で確かなのは、グレゴリアンとガランチャの女性陣で、過去の栄光はありますが、不透明で読めないのがドミンゴとアラーニャの男性陣と言えるでしょう。こんなスター歌手がせっかく来日しているのであれば、新国立劇場でのオペラに出て欲しいものです。