今日はソヒエフのロシアン・プログラムを聴きNHKホールに行きました。今月のプログラム・ノートは、AプロとCプロは良く書かれていて勉強になりますが、Bプロを先読みすると、何が言いたいのかあまり良く分からないです↓。

https://www.nhkso.or.jp/concert/phil24Jan.pdf


今日の木本さんの解説によると、プロコフィエフは「音楽のエンジニア」、リャードフは「音の細密画家」と言われているらしいですが、初めて知りました。リャードフの小曲は、ソヒエフがN響でよく取り上げていますが、「魔法にかけられた湖」(2008年)、「魔の湖」(2013年)、「バーバ・ヤガー」(2019年)が印象に残っています。いずれも初めて聴く曲でしたが、美しい神秘的な自然を描いていました。今日のリャードフの「キキモラ」は、ロシアのおとぎ話に出てくる不思議な「妖精」のような存在を意味しますが、第1部は哀愁が漂う静的な音楽でしたが、第2部は一転して明るく動的な音楽になり、人々と動物の営みをモチーフとするようなおもちゃ箱のような不思議な音楽でした。リャードフの絵画的な作曲技法とソヒエフの美しい旋律を紡ぎ出す指揮がフィットしておりました。


今日のメインは「ロメオとジュリエット」組曲のソヒエフ編です。プロコフィエフのバレエ音楽の原曲は物語通りの流れですが、管弦楽団版の組曲はストーリーの順番とは異なります。今日のソヒエフ版は、組曲の順番も変えて、ソヒエフ・シェフによるセレクトである点が見どころです。有名な「モンタギュー家とキャピュレット家」から「ロメオとジュリエットの別れ」の5曲は「組曲第2番」と同じ流れですが、藤森首席を始めとするチェロセクションの主旋律やヴィオラ・ソロを務めた中村(翔)さんのソロが極めて素晴らしかったです。組曲第3番の「朝の踊り」からはソヒエフのオリジナルの構成になりますが、音のキレが秀逸でした。ソヒエフは様々な指示を各セクションに出していましたが、N響がそれに完全に応えているので、ソヒエフが指揮しながら笑顔になってました。組曲第2番の6番と7番が演奏されると、ここで組曲第2番の全ての曲が完遂されます。最後の2曲は一転して、組曲第1番からの「仮面」と「タイボルトの死」になり、物語としては逆戻りの構成で演奏されますが、このアレンジの意図がはっきりとは分かりませんでした。しかし、ソヒエフの最後の2曲の指揮を見ていると、この2曲がソヒエフの十八番のように思えました。ソヒエフはあまりスコアを見ずに、「タイボルトの死」ではオケがフル編成での壮大な音楽で幕を閉じますが、ベルリン・フィル並みのスーパーカーのような爆音でした。変化が激しい戦いとタイボルトの死を描いたこの曲はこのバレエ組曲で最も演奏効果が発揮されるので、ここでソヒエフ編曲で閉じたかった理由としては、何となく分かる気がしてきました。今日もブラボー喝采で、明日も聴きに行きたいのですが、別件があって残念ながら行けません。この1週間でソヒエフ指揮・N響を3回聴きましたが、今のところ、昨年のウィーン・フィル来日公演と同じくらい素晴らしく、低価格で、NHKホールと言う悪条件にも関わらず、これほどのクオリティの演奏会を体験できるのは嬉しいです。ちなみに、昨日発売された「音楽の友」コンサート・ベストテンで、40人の音楽評論家が昨年の良かった10公演をリストアップしてますが、ソヒエフ・N響と書いた人は1人だけで、残りの39人の選球眼とセンスを疑います。


あまり評判の良くなかった「休憩無しのCプロ」を聴くのは今日がラストで、来シーズンの新しいN響・Cプロを楽しみにしております。


(評価)★★★★ 明日も行きたいですが、行けないのが残念です!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

曲目
リャードフ/交響詩「キキモラ」作品63
プロコフィエフ(ソヒエフ編)/バレエ組曲「ロメオとジュリエット」