今日のソヒエフ・N響はとにかく凄かったです!本題の前に、昨日、元ウィーン・フィルのキュッヒルさんに都内の某ホテルで偶然お会いしたので「今年の春祭のトリスタンに出ますか?」と聞いたら、「今年は乗らない」とのことでした。これは残念な話ですが、トリスタンは大作ですし、指揮者のヤノフスキさんは難しい方ですので、コンマスの仕事は一筋縄ではいかないと思うのですが、誰がコンマスやるのでしょうか。関係者からの噂話によると、今年のN響コンマスは日本人ゲストコンマスが多いようです。


今日は昨日の悪天候から一転して、快晴で心地よい天気の中、ソヒエフ指揮のN響定期Aプロの2日目に行きました。筆者の経験と勘で、名演の予感がするプログラムは2日間連続で行くことにしております。N響の今シーズンに2日連続行く予定は今回だけで、昨シーズンはパーヴォ指揮の「アルプス交響曲」の時でしたが、この公演は先日のブログで勝手ながら昨年の私のベスト10の公演としました↓。

今週18日に発売される「音楽の友」では日本のガラパゴス音楽評論家らによる「コンサート・ベストテン2023」が発表されますが、おそらく、東響・エレクトラや都響・コパチンスカヤ公演が上位に入り、ベルリン・フィルなどの海外オケの一部がそれに続くと予想します。また、オワコン化している新国立劇場オペラも2作品(例: タンホイザー、シモン)くらいがランキング入りしているのではないでしょうか。ちなみに、私のベスト公演と被るのは数公演だと思いますし、(音楽評論関係者への招待が少ないこともあり)パーヴォのN響は音楽の友のベストテンに入らないと思います。


今日の公演はソヒエフの繊細な指揮ぶりをきちんと観たいと思いまして、1階前方の席にしました。昨日は見どころ・聴きどころがたくさんあり、感想としては未完成でしたので、昨日の補完として感想を書きたいと思います。前半の「カルメン組曲」は、作曲家のシチェドリンがボリショイ劇場のバレリーナの妻のためにバレエ版に編曲したもので、何度も聴いているオペラ「カルメン」と異なり、弦楽と多彩な打楽器によるもので、新鮮なアプローチで聴くことができます。例えば、第2曲の主旋律は打楽器の竹島さんによるマリンバで演奏されます。ティンパニを除く打楽器奏者は4人ですが、竹島さんが1番多くの打楽器(珍しい楽器もありました)を担当されていて大活躍です。この曲の白眉は、第7曲の間奏曲と第11曲の「花の歌」ですが、この曲の前後ではソヒエフは小休止をして、オケを整えていました。終曲のラストの鐘の音は、カルメンが天国に行くシーンを描いているかのような情景をソヒエフがうまく描いてました。


後半の組曲「マ・メール・ロワ」は、ソヒエフが腕だけでなく、顔、上半身を駆使しながら、指先で繊細な指示を出して、美しい旋律を引き出していました。今日は指揮棒を使わない理由が何となく分かります。終曲の大円団は、昨日よりダイナミックかつ優雅な演奏で、今日の公演を鑑賞された方はかなりラッキーだと思います。後半最後の「ラ・ヴァルス」からはTrp3, Hrn2らが参加して大規模な編成になります。管弦楽のための舞踊詩として作曲されたこの曲はプログラム・ノートによると「ラヴェルが想定した場面は『1885年頃のウィーンの皇帝の宮殿』」と書いてあり、宮殿内の優雅なシーンと騒ぎのシーンの様々なシーンが描かれているのでしょうか。今日のソヒエフは昨日と違い、あまりスコアを見ずに、良い意味で暴れていましたし、ソヒエフらしい美しい色彩感が増していました。以前、当ブログでは「ソヒエフはTVカメラが入っていない時は良い意味で、自由かつ暴れる傾向がある」と書いたことがありますが、今日もこの法則に当てはまります。昨日に比べると3曲ともにデュナーミクが効いていて、N響がうまく応えていました。全体を通してキズはあまりありませんでしたし、2年前のラトル指揮・ロンドン交響楽団の来日公演の「ラ・ヴァルス」を超える素晴らしい演奏でした。特にVa首席の村上さんがベルリン・フィル首席のグロス並みに動いていたのが印象的で、N響とソヒエフの関係性の良さを感じますし、NHKホールなのに、よく響いていたと思います。N響の首席指揮者はルイージが契約延長しましたが、やはりソヒエフがN響首席になって欲しかったです。ブラボーの数は昨日よりは多く、ソロ・カーテンコールは盛り上がっていました。今日のコンサートは定期会員用のCD化をして欲しいですが、おそらく先月のルイージ指揮の「一千人の交響曲」のCDになると予想します。「一千人」より今日のコンサートの方が感動度合いが、はるかに上です。今回の定期演奏会は2001回目の記念コンサートと捉えるべきでした。今日の評価は今年初の最高評価(5つ星)で、本公演のNHKでの放映が楽しみです。


(評価)★★★★★ ソヒエフ指揮のフランス音楽は世界一であることを実感しました!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


曲目
ビゼー(シチェドリン編)/バレエ音楽「カルメン組曲」
ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」
ラヴェル/バレエ音楽「ラ・ヴァルス」