先程、クリーヴランド管弦楽団が発表したリリースによると、ウェルザー=メストさんが癌の治療のため、年内の演奏会の予定を全て降板になりました。

https://www.clevelandorchestra.com/globalassets/editorial/press-releases/2023/news-fwm-2023_09_07.pdf

今年のニューイヤーコンサートで大成功をおさめたウェルザー=メスト指揮によるシュトラウス一家のアンコールをウィーン・フィル来日公演で聴きたかったのですが、とても残念なニュースです。ドクターは完全に回復だろうとしていますが、今後、12ヶ月から14ヶ月の治療が必要だと書かれています。2025年元旦のニューイヤーコンサートはJ.シュトラウス2世の生誕200周年記念のアニバーサリーコンサートなので、ウェルザー=メスト指揮を予想していましたが、こちらも少し雲行きが怪しくなりました。ウェルザー=メストは夏のザルツブルク音楽祭で主力指揮者なので、影響は大きく、来年早々に回復して頂きたいです。


先月からウェルザー=メストさんの病状は少し怪しい部分があり(先月段階までは整形外科の治療とされてました)、当ブログでも注目しておりました。

このリリースを受けて、今年のウィーン・フィル来日公演の代役は気になりますが、ジョルダンまたはハーディングのどちらかだと予想します(他の有力指揮者の可能性は、↑上記のブログで指揮者のスケジュールを確認しております)。筆者の希望としてはティーレマン、フルシャあたりが来日して欲しいですが、残念ながら、ティーレマンはベルリン、フルシャはシカゴで予定が入ってます。スケジュールが確認できていない有力なマエストロは、バレンボイムですが、実はウィーン・フィル幹部によると、今年の来日公演として予定されていた指揮者は当初はバレンボイムでしたが、昨年からの体調不良およびベルリンの監督退任で、来日公演の指揮者が、ある意味、代役としてウェルザー=メストになっていました。ウィーン・フィルは10月下旬のソヒエフ指揮のウィーンでの定期演奏会から、ソヒエフの同行で台湾・韓国ツアーを名古屋公演の前々日まで行いますが、ソヒエフがその後、ドレスデンの仕事があるため、日本公演には参加できません。バレンボイムがウィーン・フィルと来日したら、奇跡の来日公演になりますが、公演回数が多く、移動も多いので現実味は薄いです。同様にメータもスケジュールが確認できないですが、来日は厳しいかもしれません。この点については5/6のブログで言及しております。

ハーディングは8月下旬のザルツブルク音楽祭のウェルザー=メスト指揮公演の代役をしており、来日公演のR.シュトラウスを演奏しています。またハーディングは9月のウィーンでの定期演奏会でドヴォルザークの9番を演奏する予定なので、ハーディングが来日する場合はドヴォルザークは8番から9番に変更になる可能性もあります。ハーディングは9月末と10月にウィーンでもリハーサルできますし、日本公演への準備の負担が少ないと言えます。ウィーン・フィルは現在、欧州ツアー中で、代役決定はウィーン・フィル幹部がウィーンに戻ってから正式決定となるでしょう。

(追記: 9/11 13時)

サントリーホール側も先程、リリースを出しました。今回は指揮者交代でチケットの払い戻しを受け付けてくれるそうです。代役の指揮者や曲目を発表せずに、このような対応は珍しい印象がありますが、代役の指揮者が微妙なのでしょうか。


(追記: 9/22 16時)

ウィーン・フィルの来日公演は、トゥガン・ソヒエフに変更で、曲目には変更なしと発表されました。ダニエル・フロシャウアー楽団長は「今回の変更を快諾してくれたトゥガン・ソヒエフとシュターツカペレ・ドレスデンには特別な感謝の意を表明いたします。また、日本側のNHK交響楽団への理解にも感謝しています。」とのことで、予想外でしたが、ソヒエフのドレスデン公演をキャンセルして、日本公演に参加してくれることになりました。これで、ソヒエフは10/19からのウィーンでの公演から、日本公演まで1ヶ月に及ぶ演奏ツアーを行うことになり、ウィーン・フィルとの関係性が深くなるでしょう。NHK交響楽団への理解の部分は、まだ一般発売前の来年1月・ソヒエフ指揮・N響公演のチケットの売れ行きに影響するので、N響側への仁義切り(事前相談)をしたと言うことでしょう。西日本のブロガーがソヒエフがN響と日本国内の活動制限契約があると書いていたそうですが、そんなことはありません。ドイツ在住の日本人ブロガーも同じことを言ってますが、ラトルがベルリン・フィルの音楽監督時代にバイエルン放送響などに客演していますし、ソヒエフはN響の役職はない指揮者なので、国内活動は自由なはずです。来年はソヒエフは1月にN響定期にも出ますし、12月にはミュンヘン・フィルと来日します。N響の首席指揮者のルイージは今年9月と12月にN響を指揮しますが、11月にコンセルトヘボウと来日する予定です。ですので、国内活動での契約上の縛りはなく、N響への気遣いレベルだと思います。

一方で、ソヒエフの代役となったドレスデンのコンサートの指揮者は、女性のミルガ・グラジニーテ=ティーラになりました。ドレスデンの関係者は寛容ですね↓。

昨年12月にティーレマンさんが来日した時は、ドレスデンの欧州ツアーをキャンセルして、バレンボイムの代わりに来日公演をしました。ドレスデンはこの点、寛容なので、ウィーン・フィン幹部がそこを知っていてソヒエフの来日公演を依頼したのであれば、かなりの策士です。

ソヒエフの追っかけ情報によると、ドレスデンのジルヴェスターコンサートは元々、ウェルザー=メストでしたが、その代役がソヒエフとなり、玉突き状態になってます。このコンサートはドイツ国内で中継されるので、ソヒエフとしては11月の定期演奏会よりは格上のコンサートの指揮者になり、得をした形になっています。ウィーン・フィルの来日公演の指揮者交代で、日本・オーストリア・ドイツの3カ国で取引が行われていた点が興味深いです。