今週末に世界的なオペラ指揮者のP.ジョルダンがN響と初共演をし、シューマンの「ライン」交響曲と「ニーベルングの指環」の抜粋版を披露します。これはN響の2025/26シーズンの後半の必見の公演ですが、まだチケットは少し余っているようです。

P.ジョルダンは先週土曜日に来日して、3日間のオフのあと、昨日からN響とリハをしております。N響の練習場にはワーグナーのスコアの指定どおりにハープが6台並んでおり、これは圧巻の光景です。日本のオーケストラのワーグナー公演でハープ6台を揃えたケースをあまり見た記憶がありません。

これはP.ジョルダンのワーグナー作品へのこだわりでしょう。彼の父アルミン・ジョルダンはワーグナーを得意としていた指揮者で、フィリップは20歳でジェフリー・テイト指揮の「ニーベルングの指環」のアシスタントを担当します。この若さで「指環」のアシスタントを日本では体験できないはずです。フィリップに尊敬する指揮者について聞くと、1番が父のアルミン・ジョルダン、2位がバレンボイム、3位がティーレマンだそうで、いずれもワーグナー指揮者で、P.ジョルダンはワーグナー巨匠からの薫陶を受けた現代を代表するワーグナー指揮者と言えます。筆者が次に「指環」のサイクル上演を観に行くとするなら、ティーレマンまたはP.ジョルダン指揮には行きたいと思います。この2人がドイツ語ネイティブの生粋のワーグナー指揮者と言えます。P.ジョルダンは理解不能なオペラ演出を嫌いますが、その代表がバイロイトの「指環」であり、24年のバイロイトの降板しますが、同じ24年イースター時期のベルリンの「指環」は理解困難な演出なのですが、「ティーレマンに頼まれた。バレンボイム仕込みのベルリン州立歌劇場のオケで指揮したい」と言う理由で、ベルリンの「指環」は指揮しました。その様子がこちらになります↓。

スペインやオーストラリアなどの指揮者による「指環」の公演もありますが、ワーグナーによる膨大な音符の量と言語の量を処理するにはドイツ語ネイティブが有利です。例えば、ラトルの「ラインの黄金」「ジークフリート」などを鑑賞しましたが、ワーグナー音楽の凄みや興奮作用は感じませんでした。


P.ジョルダンは若い時から何度も「指環」を指揮していますが、今回、N響定期で演奏されるのは「指環」のP.ジョルダン編曲による管弦楽版から「神々の黄昏」が演奏されます。「指環」の管弦楽版・ハイライト版は何人かの指揮者によってセレクトされて演奏されており、有名なところで言うと、マゼール版の「言葉のない《指環》」ですが、P.ジョルダンも筆者もこのバージョンが好きではありません。マゼール版には例えば「ヴァルハラ城への神々の入場」や「ワルキューレの騎行」などの名曲が取り上げられてませんが、P.ジョルダン版ではきちんと名曲が収まっており、肝心の「神々の黄昏」のラストの幕からたっぷりと抜粋されているところが素晴らしいです。この演奏では歌手のパートを音域を合わせ、様々な楽器で代用していて、ストーリー展開が自然で追いやすくなっておりますP.ジョルダンから「これを聴いてくれ」と言われてから、下記の録音が愛聴盤になり、以降、マゼール盤は聴いてません↓。

上述の理由で今週末のN響定期は必見です。15時間にわたる「指環」の総まとめとしての「ブリュンヒルデの自己犠牲」にハマった方は、ドイツ語圏で「指環」のチクルス公演をご鑑賞ください。


P.ジョルダンは昨年までオペラの仕事が忙しかったので、今後はコンサートの指揮を中心にするそうですが、次の来日公演(おそらく彼の手兵のフランス国立管弦楽団)が楽しみです。彼は今回の来日が4回目で、1回目が札幌のPMF、2回目がウィーン響来日、3回目が昨年のウィーン国立歌劇場来日で、51歳にしては来日回数が少ないと言えるでしょう。東京滞在は今回が3回目で、今週月曜日に初めて渋谷のスクランブル交差点を訪問したそうです。


最後に、今月のN響の公演プログラムのAプロとBプロの解説は役に立たないので、他の解説を読んだ方が良いと思います。ワーグナーの「神々の黄昏」の日本語訳は分かりにくい上に誤訳があります↓。

https://www.nhkso.or.jp/concert/phil26Feb.pdf