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クラシック♪インド部のブログ

西洋クラシック音楽とインドというどうにも関係のなさそうな二つの事柄を中心に語るフリーライター&編集者、高坂はる香のブログ。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって何かが生まれる瞬間を妄想しています。

2014年がやってきました。
ほとんどの記念日的なものを気にせず過ごしている私ですが、
元日だけはけっこう意識します。
そして毎年なんとなく今年はこういうことに気を付けて生きようという目標をたてるのですが、
今年はやろうと思っていることがたくさんありすぎて、その考えすらまとまりません。


ところで、年末年始実家に帰ったら、台所がリフォームされていました。
まぶしいくらい白いシステムキッチンに、断熱材をいれたフローリングの床、
天井まではりかえられていました。
リフォームする前、母から
「もしも建て替えたほうがよければ二世帯住宅にするけど?」と言われ、
一体もう一世帯は何を想定しているのかと不思議に思いました。
(私にはきょうだいがいませんし、結婚する予定もとくにありません)

以前、実家の台所の流し台前の天上には、赤茶色のしみがありました。
子供心に、血のあとみたいで気持ち悪いな…と思っていましたが、
あるとき母から、「あーあれね、お母さんが前にケチャップくっつけちゃったの」
と聞かされ、どんだけの勢いでチューブを握りつぶすと天上まで飛び散るのだろうと、
やはり不思議に思ったものです。
うちのおかあさんてサザエさんみたいだな、とも思いました。

しかし、今回約20年の時を経て、新しい事実が判明しました。
どうやらそのとき、母は手を滑らせてケチャップのチューブを床に落っことし、
その反動で勢いよくケチャップが飛び出して、天上にくっついたのだとのこと。
「お母さん、びっくりしたよ~」と、母は当時を振り返りました。
そんな奇跡的なハプニング話、こっちのほうがびっくりします。


今回のリフォームにあたって、いろいろなところを綺麗にしたみたいです。
私が幼少期から弾いていたアップライトピアノにはベロアのカバーがかけてありましたが、
これがつんつるてんになっていたのでどうしたのかと思ったら、
母が「洗ったら縮んじゃった」と言っていました。

…で、とくに今回の話、音楽的なオチはありませんが、
生まれたときからずっと親しんでいた台所の思い出を残しておきたく、書いてみました。
みなさん、ケチャップの落下と洗濯物のちぢみにはくれぐれもご注意を。


さて、2014年。
今年はウェブサイトの立ち上げ、クラシックソムリエ検定公式テキスト続編の出版、
インドでの記録のまとめ直し、未踏の地で開催される某コンクールの取材など、
計画していることがいろいろあります。
とくにインド関係のプロジェクトは、“今ならイケる!”という気配を感じています。
けっこう、機が熟すタイミングを見計らうのは得意です。

そんなわけで、なにせこんな母に育てられた私ですから至らぬ点も多いと思いますが、
今年もがんばりますので、どうぞよろしくお願いします。

2014年がみなさまにとって幸せな明るい年でありますように。

 

ピアニストの青柳晋さん。
どんなことにも興味津々、おかしなプロジェクトにもいつも快く協力してくださり、
文章を書かせても超お上手、
なにより嬉々としてインドくんだりまでピアノを弾きに行ってくれるピアニスト、そうそういません。
それでいて芸大の准教授でいらっしゃる。もちろんピアノの腕も抜群。
自分は心の中で、青柳さんを「日本ピアノ界インドの星」と呼んでおります。


そんな青柳さん毎年恒例の自主企画コンサートシリーズ「リストのいる部屋」がもうすぐです。

 
12月25日(水)浜離宮朝日ホール

第1部
シューベルト:楽興の時 D780(全6曲)
シューベルト:3つのピアノ曲 D946

第2部
シューベルト=リスト:
さすらい人 S.558 R.243-11
ウィリアム・シェイクスピアのセレナーデ S.558 R.243-9
君こそ我が憩い S.558 R.243-4

リスト:2つの伝説 S.175 R.17
第1曲 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
第2曲 波の上を歩くパオラの聖フランチェスコ


リストを部屋の主に立て、ゲストを招くという趣向を凝らしたプログラム。
今年はシューベルトです。あらまぁ、ここでもシューベルト!
青柳さん、これまで演奏会のメインプログラムでシューベルトを弾くことがなかったというから、驚きです。


今回、ぶらあぼ12月号に演奏会についてのインタビューを書いています。
しかし1000字では書ききれないことがたくさんありました。
例えば興味深かったのが、このところ急に高まったシューベルトへの関心についての話。
学生時代から聴くのは好きだったけれど、
当時自分で弾きたいとはこれっぽっちも思わなかったという。
それが急にこの数年で、その独特の死生観にぐんぐん興味が沸いてきたのだそう。

どうしてこれまでシューベルトを弾くことがなかたのですか?と尋ねると、
「う~ん…。当時はモリモリしてたからじゃない?」
という、わかるような、わからないような答えが返ってきました。
モリモリか…。さすがにぶらあぼの記事には書けないな…。


で、いろいろ話を聞いて、ピンときました。
おそらくこれは、ああ見えて40代半ばを迎えようとしている青柳さんに
あの不安定な青年シューベルトを包み込む“包容力”がついたということなのではなかいか!と。
きっとそうなのでは!と言ったら、うーん、そうかな?と言われましたが。反応イマイチ。


昨年も夜想曲を録音したフォーレについて尋ねたとき、
とくに晩年の作品にあらわれる死生観に魅かれ、取り組みたいと思うようになったと言っていました。
青柳さんもピアニストとして新たなステージに入ったのだなと感じるご発言。
これだから、同時代に生きる演奏家を追うのは楽しい。
ピアニストによっては、いくつになってもバリバリ系の作品を弾き続ける人もいて、
それはそれで、どんな心理なのだろうと推測するのもおもしろい。


もうひとつ青柳さんの話で印象に残った言葉。
「正解がない、謎だらけのことを、ずっと探っていくのが我々の仕事。
ピアニストは、ミステリーハンターみたいなものですから」

…すごいなぁ、としみじみ思うと同時に、
青柳さんがヒトシ君人形のコスチュームに身を包んだ姿が浮かび、
なんだか似合いそうだなぁと思ったり。
せっかくいい話だったのに…。


シューベルトから、シューベルト=リストの歌曲編曲作品、
そしてリスト最晩年の宗教的作品という、聴きごたえたっぷりのプログラム。
楽しみです。


ところで青柳さんには、
次回(12月14日)放送のラジオ「みよたカンタービレ」にゲスト出演していただきます。
演奏会の話題そっちのけでかなりの時間を割いて、
なつかしいインドの思い出について語っていただいています。
放送後はすぐにアーカイブがアップされる予定です。
またツイッターなどで告知しますので、ぜひお聞きくださいね。

意識して見ているからなのかもかもしれませんが、
今年の冬はシューベルトが多いような気がします。
何かピニストのみなさん、そういう気分なんでしょうか。
そんな中、2010年からシューベルトの連続演奏会をおこなっている
ゲルハルト・オピッツさんのリサイタル、完結編となる第7回、第8回がもうすぐ行われますね。

【第7回】
2013年12月5日(木)19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 D840
3つのピアノ曲 D946
ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 D850

【第8回】
2013年12月20日(金)19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

ピアノ・ソナタ 第6番 ホ短調 D566
ハンガリーのメロディ ロ短調 D817
アレグレット ハ短調 D915
2つのスケルツォ D593
ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960


ああ、ほんとうにもうすぐだわ。
オピッツさんの写真、モノクロ加工されているものを見ることが多いせいか
これまで意識することがありませんでしたが、
11月のぶらあぼに載っているカラーの写真を見ていて、この方の目は青いんだなぁと改めて。
えびす顔というか、サンタ顔というか、
とても素敵な風貌がトレードマークのオピッツさんですが、
若い頃ってどんな感じだったのだろうと思ってgoogle画像検索してみたところ、
わかったのは、どうやら、昔からこういう感じだったらしいということ。
一貫して安定した、癒しキャラです。


そんな余計な話はさておき、オピッツさんといえば、
ヴィルヘルム・ケンプの薫陶を受けてドイツ・ピアノの正統派を代表するピアニスト。
ベートーヴェンやブラームスといういわゆるドイツものにはもちろん定評があります。
音楽史的な流れでみたとき、
いわばその間にはさまれているシューベルトにオピッツさんがフォーカスするというのは、
ものすごく意味のあることなのではないかと思ったりします。
ベートーヴェンの死の翌年、たった31年しか生きずにこの世を去り、
同時代、後世の音楽家に多大な影響を与えたシューベルト。
ベートーヴェンの葬式のあと仲間と集まった場で「一番先に死ぬものにカンパーイ!」と
不吉な乾杯の音頭をとった、みたいな逸話もありますね。おかしな人です。いい意味で。



実は最近、某ピアノ雑誌のとある特集記事のために
オピッツさんからコメントをいただく機会がありました。
その中で印象深かった一言。

「私が幸運に恵まれた場合、そして、作曲家の魂が喜んで私に力を貸してくれる場合には、
本番前日、ふと作曲家から、よりクリアなメッセージを受け取ることができます。
そうして、作曲家の望み通りの特別なメッセージを演奏会で伝えることができるようになるんですよねー」


シリーズ完結編とあって、おそらく演奏会前日、
オピッツさんのもとにシューベルトさんからのお告げが届くことでしょう。
それを聴けるとは、実に楽しみです。
12月5日と20日、東京オペラシティですよ!