ミステリーハンター青柳晋 12月25日浜離宮朝日ホール | クラシック♪インド部のブログ

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西洋クラシック音楽とインドというどうにも関係のなさそうな二つの事柄を中心に語るフリーライター&編集者、高坂はる香のブログ。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって何かが生まれる瞬間を妄想しています。

ピアニストの青柳晋さん。
どんなことにも興味津々、おかしなプロジェクトにもいつも快く協力してくださり、
文章を書かせても超お上手、
なにより嬉々としてインドくんだりまでピアノを弾きに行ってくれるピアニスト、そうそういません。
それでいて芸大の准教授でいらっしゃる。もちろんピアノの腕も抜群。
自分は心の中で、青柳さんを「日本ピアノ界インドの星」と呼んでおります。


そんな青柳さん毎年恒例の自主企画コンサートシリーズ「リストのいる部屋」がもうすぐです。

 
12月25日(水)浜離宮朝日ホール

第1部
シューベルト:楽興の時 D780(全6曲)
シューベルト:3つのピアノ曲 D946

第2部
シューベルト=リスト:
さすらい人 S.558 R.243-11
ウィリアム・シェイクスピアのセレナーデ S.558 R.243-9
君こそ我が憩い S.558 R.243-4

リスト:2つの伝説 S.175 R.17
第1曲 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
第2曲 波の上を歩くパオラの聖フランチェスコ


リストを部屋の主に立て、ゲストを招くという趣向を凝らしたプログラム。
今年はシューベルトです。あらまぁ、ここでもシューベルト!
青柳さん、これまで演奏会のメインプログラムでシューベルトを弾くことがなかったというから、驚きです。


今回、ぶらあぼ12月号に演奏会についてのインタビューを書いています。
しかし1000字では書ききれないことがたくさんありました。
例えば興味深かったのが、このところ急に高まったシューベルトへの関心についての話。
学生時代から聴くのは好きだったけれど、
当時自分で弾きたいとはこれっぽっちも思わなかったという。
それが急にこの数年で、その独特の死生観にぐんぐん興味が沸いてきたのだそう。

どうしてこれまでシューベルトを弾くことがなかたのですか?と尋ねると、
「う~ん…。当時はモリモリしてたからじゃない?」
という、わかるような、わからないような答えが返ってきました。
モリモリか…。さすがにぶらあぼの記事には書けないな…。


で、いろいろ話を聞いて、ピンときました。
おそらくこれは、ああ見えて40代半ばを迎えようとしている青柳さんに
あの不安定な青年シューベルトを包み込む“包容力”がついたということなのではなかいか!と。
きっとそうなのでは!と言ったら、うーん、そうかな?と言われましたが。反応イマイチ。


昨年も夜想曲を録音したフォーレについて尋ねたとき、
とくに晩年の作品にあらわれる死生観に魅かれ、取り組みたいと思うようになったと言っていました。
青柳さんもピアニストとして新たなステージに入ったのだなと感じるご発言。
これだから、同時代に生きる演奏家を追うのは楽しい。
ピアニストによっては、いくつになってもバリバリ系の作品を弾き続ける人もいて、
それはそれで、どんな心理なのだろうと推測するのもおもしろい。


もうひとつ青柳さんの話で印象に残った言葉。
「正解がない、謎だらけのことを、ずっと探っていくのが我々の仕事。
ピアニストは、ミステリーハンターみたいなものですから」

…すごいなぁ、としみじみ思うと同時に、
青柳さんがヒトシ君人形のコスチュームに身を包んだ姿が浮かび、
なんだか似合いそうだなぁと思ったり。
せっかくいい話だったのに…。


シューベルトから、シューベルト=リストの歌曲編曲作品、
そしてリスト最晩年の宗教的作品という、聴きごたえたっぷりのプログラム。
楽しみです。


ところで青柳さんには、
次回(12月14日)放送のラジオ「みよたカンタービレ」にゲスト出演していただきます。
演奏会の話題そっちのけでかなりの時間を割いて、
なつかしいインドの思い出について語っていただいています。
放送後はすぐにアーカイブがアップされる予定です。
またツイッターなどで告知しますので、ぜひお聞きくださいね。