頭文字K、ホロデンコ。 | クラシック♪インド部のブログ

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西洋クラシック音楽とインドというどうにも関係のなさそうな二つの事柄を中心に語るフリーライター&編集者、高坂はる香のブログ。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって何かが生まれる瞬間を妄想しています。

ヴァン・クライバーンコンクールから4か月がたちました。
ホロデンコ、東京でのリサイタルも、来月11月22日に迫ってまいりました!

 
こういう大きいコンクールに優勝すると一気にキャラが変わる人もときどきいますが、
ホロデンコはさすがの我が道をゆく安定感。
(…もとい、すでに活躍しているピアニストでしたからね)
こちらの最近マリインスキー劇場のYoutubeでアップされたインタビューを見ると、少々ニヤけたイイ感じの表情そのままに、相変わらずのシブい声で語っています。


ホロデンコと言えば、2010年の仙台国際音楽コンクールで優勝して何度も来日していますから、既に演奏を聴いたことのある方も多いでしょう。
「もう聴いたことあるからいいかなー」
…と思っているアナタ。
多分、記憶の中のホロデンコと、今のホロデンコは、だいぶ違います。語り口こそ、あのときと変わらぬぼそぼそ喋りの彼ですが、演奏は格段に進化しました。
正直に言うと、2010年当時、わたくし、彼の演奏にいまいちピンと来ていませんでした。
しかし! 変わってましたねー。今回のクライバーンコンクールで聴いたときには。
こんなに面白い音楽をする人だったっけ? と、驚いてしまいました。
とくに印象的だった予選第2ステージの演奏がこちら

改めて見ると、すごい顔で弾いてるなー。とくに最後のペトリューシュカ。
ネット配信で観ていたみなさんはさぞかし楽しかったことでしょう。(これ、音に集中できないレベルだよ!)


その変化の裏には、コンクールや演奏会での成功と失敗、そこからの、音楽の喜びと血のにじむような努力という、さまざまな経験が影響しているのでしょう。
3歳になるお子さんとの会話からもインスピレーションを受けることがあるみたい。
彼がファイナルで弾いたモーツァルトのピアノ協奏曲は絶品でしたが、
「モーツァルトの音楽には聡明さがあるが、同時に子どものコミュニケーション手段に通じる表現があると思う。娘が生まれて一緒にいるようになってから、それを感じられるようになった」
なんて言ってました。


今回の来日リサイタルプログラムは、リストの超絶技巧練習曲ノンストップ一本勝負(=休憩なしの1時間)です。
動画でご覧いただける通り、彼はおじいちゃんみたいに背中を丸めてトコトコステージに出てきますが、(奥さん、なんか言ってあげてよ!と思うんですけど。ヨガインストラクター兼ピアニストだそうなので)、ピアノを弾き始めれば、技巧がもちろん冴えわたります。
が、表現にはどこか往年の巨匠のようなシブさもあって、いわゆる今どきの超絶技巧の若手ピアニストたちとは一線を画しています。ぜひライブで体感してほしいです。



ところで今、ふと思い出しました。
予選の結果発表が終わったあとのプレスルーム、都合でもうテキサスを離れる、某“ピアノコンクール評論家”のおじさんが、とつぜん含み笑いしながらこんなことを言い出しました。
「私には、このコンクールの優勝者が見えた。それは、頭文字が“K”のピアニストだ」
予選通過したピアニストのなかに、それは2人しかいません。
ホロデンコ(Kholodenko)と、ホジャイノフ(Khozyainov)。
びっくりして、どうしてわかるの?夢でお告げでもあったの?と尋ねても、ニヤニヤするばかりで何も教えてくれません。
「なにそれー。これが当たったら次からあなたのことを“神”と呼びます」
…なーんていう会話をしました。


驚きです。ぴたりと当たったわけです。
次に会ったときは、このおっさんを、神、と呼ばねば。


…しかしその後、関係各位に聞くところにより明らかになりましたが、
どうやらこの方、優勝するのはホジャイノフのほうだと思っていたらしい…。


ヴァディム・ホロデンコのリサイタルは、11月22日(金)19時、浜離宮朝日ホール
しかもチケット3800円! 
安いな…。お聴き逃しなく。