ワーグナーのオペラのこと | クラシック♪インド部のブログ

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西洋クラシック音楽とインドというどうにも関係のなさそうな二つの事柄を中心に語るフリーライター&編集者、高坂はる香のブログ。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって何かが生まれる瞬間を妄想しています。

最近よく、ワーグナーのオペラについて思うことがあるのです。
それは、「どんな心構えで聴きにいったらいいのか?」という、大変根本的な(そして間の抜けた)お悩み。


それを改めて感じたのは、この春いくつかワーグナーの作品を立て続けに聴いたときでした。
これまでは、オペラはただひたすらに真面目に観ていました。しかし最近、ストーリーも事前に頭に入ってちょっとだけ余裕を持って聴けるようになってきたところで、物語から感じるものも少しずつ変わってきました。
どのオペラにもよくある、ちょっとおかしなストーリーや、おマヌケすぎるとつっこみたくなるキャラクターの行動の数々…。それに対し、特にワーグナーの作品の場合、荘厳で重々しく完璧な音楽がかぶさってくるので、ギャップがすごすぎて、どうしたらいいのかわからなくなる…。
昨シーズンのMETライブビューイング「パルシファル」を観にいったあたりで、その混乱は最高潮に達しました。ワーグナーが拍手をすることさえ禁止したというこの聖なる作品。そう事前にすりこまれていればいるほど、自分の豊かな想像力がいろいろなことを妄想させて、それはもう、笑いをこらえるのに必死なシーンがちらほら(とくに2幕まで)。
多分いけないのはワーグナーではなく自分の想像力の回路だと思うんですが。ああ、こんな聴衆、もしもワーグナーに見つかったらつまみ出されるだろうなと。…わかっているんですが、おもしろくてやめられない。結果、どんな顔をしてそこに座っていたらよかったのだろうか…という悶々とした気持ちを抱えつつ、帰路につくのでした。
ワグネリアンに怒られそう。
でも、決してワーグナーに真剣に向き合おうとしていないわけではないのです。彼が義父のリストにあてて書いた「ブッダまじすごい!」みたいな書簡を読むにつけ、強い共感を覚えているのですよ。本当に。


さて、METライブビューイング、ただ今アンコール上映中です。
「ニーベルングの指環」チクルスのアンコール上映は8月中で終わってしまいましたが、わたくしを混乱の渦におとしいれた「パルシファル」はこの後も上映があります。すごい舞台です。
あとこちらはワーグナーではありませんが、時代を20世紀に移した新演出の「リゴレット」もとても、おもしろ悲しかったです。おすすめ。
ちなみに、先日放送されたラジオ「みよたカンタービレ」で、松竹のMETライブビューイング担当の方をお招きしてお話を聞いています。次シーズンのおすすめ公演の話も楽しいですよ。
ラジオのPodcastは、こちら。(前半と後半にわかれています)

そして!
もうすぐびわ湖ホールプロデュースオペラ「ワルキューレ」が、神奈川とびわ湖で上演されます。「指環」の2夜目にあたる演目ですね。
この公演について、音友9月号掲載のインタビューのために、先日指揮者の沼尻竜典さんにお話を伺いましたが、「“指環”の多神教の世界は、日本人にはとても馴染みやすいはず。神様が人間的に描かれているのは、日本の国造りの神話と似通ったところがある」と聞いて、確かにねぇと思いました。神様だからってなんでも思い通りにいくわけではなく、夫婦喧嘩したり、嫉妬したりする。
多神教と言われるとどうしてもヒンズー教だ!と思ってしまうのですが、もっと身近に似たものがあるじゃないの、と思いました。…というか、つながっているんだから当然か。

こちらの公演は、神奈川が9月14、15日、びわ湖が21、22日です。
演出のジョエル・ローウェルスさんは、沼尻さんいわく、「正統的な演出の中で、物語の核心をつくドキッとするものを見せる」能力がすごいとのこと。いいですねぇ、そういうの。


沼尻さんのお話は、その他、オペラを振るにあたっては、読書(普通の小説とかのこと)が欠かせない…など、興味深い内容でした。が、あんまりここに書くのもアレなんで、詳しくは音楽の友9月号をどうぞ。この号には、来年の来日ピアニスト情報などもたっぷり載っていましたよ。

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