“ほにゃらら”ピアニストについて考えたこと(上杉春雄リサイタル情報) | クラシック♪インド部のブログ

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西洋クラシック音楽とインドというどうにも関係のなさそうな二つの事柄を中心に語るフリーライター&編集者、高坂はる香のブログ。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって何かが生まれる瞬間を妄想しています。

ぶらあぼ9月号の巻頭「ぷれすてーじ」で、医者でピアニストの上杉春雄さんのインタビューを書いています。

こちら。

上杉さんは現在札幌を拠点に(というより、お医者さんとしてのお仕事が“札幌麻生脳神経外科病院の、神経内科医長”だそうです)活動されています。マリア・カナルスコンクール上位入賞などをきっかけに、医大生ピアニストとしてデビューしたんですって。

今年はデビュー25周年。それを記念したリサイタルがこの10月に行われるということで、お話を伺いました。

とても興味深かったです。話を聞きながら、原稿をまとめながら、いつにない部分の脳みそをフル活用しました。

その理由はふたつ。
まずクセナキスのくだり。

ぶらあぼの原稿ではそうとう端折ってまとめていますが、さらに超簡単に言うと、クセナキスの「ヘルマ」を聴くと宇宙を漂う素粒子を感じるというお話だったんですが。おかげで久しぶりに、すごい勢いで宇宙について考えました。クセナキスの「ヘルマ」については、高橋悠二さんによる演奏動画をYoutubeで発見しました。すごいので、ご興味のある方はぜひ検索してみてください。

もうひとつは、音楽は第3のDNAだというお話。
これは、ぶらあぼの原稿内に書ききれませんでした。

生物が種を保存してゆくために肉体を通じて伝えられていくのが、いわゆる普通のDNAですね。
で、蓄えたデータや知識を伝えるために発達したのが言語で、これが第2のDNAだと。さらに言葉では伝えられないものを残すために発達したのが芸術で、これが第3のDNAだと上杉さんは言います。だから、“芸術”は生み出された瞬間に、心の中に残って受け継がれることを本能的に望んでいるのだ、と言うお話。
こういうことを、診療の合間に考えているんだって。

普通のピアニスト(というか人間)ではあまり考えなさそうなこの持論。やはり医者であることとピアニストであることがつながっているんですね、というと、
「でもみなさん、医者のピアニストを聴こうと思っているわけでも、ピアニストに身体を見てもらおうと思っているわけでもないでしょ?」
とのお答え。

…確かに。

でもこの発言をうけて逆に、“○○ピアニスト”ってよく変わりダネ的に思われがちだけど、結局、それがめずらしくて聴きに来ているというのではなく、その“○○”の視点で見続けた景色によって磨かれた感性、それが奏でる音楽を聴きに行っているということなんだろうなと、今更改めて思いました。

 “○○”はなんでもいいんだけど。

“アイドル”でもいいし、“東大生”でもいいし、はたまた“イケメン”でもいい。

イケメンとしてちやほやされながら生きてきた男の奏でる音楽というのも、なんだか味がありそうじゃないですか。“イケメン”の言葉がチケットを売るためにつけられたものだと思うと一気に浅い感じがするけど、そうじゃなく。しばらく、そういう風に受け止めてみようと思います。

…と、なんだかやたらイケメンに恨みがありそうなことを書いてしまいましたが、べつにそんなことでもありません。

上杉さんの演奏会情報は、こちら。

★2014年1月9日追記
G-Call/クラシックソムリエ協会共催
G-Callサロン 上杉春雄ピアノリサイタル

日 時:1月18日(土) 15:30開場 16:00~
開催場所:五反田・東京デザインセンター5階「G-Call Club」サロン
募集人数:50名
参加費:3,500円(税込)


バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻より19番&20番
モーツァルト:幻想曲K475
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番K331「トルコ行進曲つき」
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

詳細、予約はG-CallのHPから!