チョ君 | クラシック♪インド部のブログ

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西洋クラシック音楽とインドというどうにも関係のなさそうな二つの事柄を中心に語るフリーライター&編集者、高坂はる香のブログ。
ピアノや西洋クラシック音楽とインドというすばらしい文化が刺激しあって何かが生まれる瞬間を妄想しています。

浜離宮朝日ホールの「浜離宮ピアノ・セレクション」、2人目となるチョ・ソンジンのリサイタルが、週明け6月24日月曜日にせまってまいりました! すでにチョン・ミョンフン指揮N響の定期演奏会でもすばらしい演奏を聴かせてくれたようですね。

チョ君(なんとなくこう呼ぶのを気に入っている)は昨年秋からパリに留学し、その変化がそろそろ現れてくるかな…という時期。
チョ君が現在パリ音楽院で師事しているのは、ミシェル・ベロフ。ベロフ氏、クライバーンコンクールでも、おじいちゃん審査員が多い中で、ひとり、さわやかな白パンツ姿がまぶしかったです。さすが、63歳にして3歳の子持ち(孫じゃないよ)。
そんなベロフ氏からチョ君があんなことやこんなことを伝授されていると思うと、その音楽的な変容がとても楽しみであり、また同時にあのピュアボーイなチョ君がどこかに行ってしまうのではないかと気が気ではありません(大げさ)。

去年浜松コンクールのときにお会いしたときにも(ミニインタビューはこちら)、顔立ちもだいぶシュッとして、背も高くなり、大人っぽくなっていました。このときに感じたそれまでのチョ君との違いは、あの“すごく人見知りっぽい気配“が消えて、なんというか、ちょっと人に興味を持つ雰囲気が出てきていたこと。やっぱり祖国を出て一人で生活し始めたことで、何かが変わり始めているのだなと思いました。
パリでは韓国にはなかなか来ないアーティストの演奏も聴けるので、たくさんコンサート会場に通って楽しくて仕方がないとのこと。そんな音楽の刺激も、きっと彼の音楽に変化をもたらしているでしょう。ミョンフン始め、プレトニョフやゲルギエフなど、偉大な指揮者との共演経験も着実に重ねています。これだけチャンスが与えられるというのは、やはり何か持ってる人なんだろうな。

音楽や精神がもっとも大きく成長するであろうこの時期。だから正直、私にとって次のリサイタルは予想不能です。とはいえ、あの明るく、聴く者に生命力を分け与えてくれるような音はいつでもそこにあるでしょうね。万が一あのチョ君がパリの荒波にもまれて一時的にやさぐれていたとしても(…まぁないと思いますけど)、こういう天性の才を持った音楽家の変容というのは、逐一追っていくこと自体がとても充実した体験だよなぁと思います。

さて、今回のリサイタルプログラムはこちら。

シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番イ長調 Op.120, D664
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第2番 ニ短調 op.14
ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番「葬送」 変ロ短調 op.35
ラヴェル:ラ・ヴァルス(ピアノ独奏版)


ラヴェルのラ・ヴァルスは十八番なんだって。去年浜松でも、そう聞いて期待していたら、さらにその期待を超える演奏をしてくれました。こういう色彩豊かでいきいきした作品を弾かせると、絶品だね。フランス生活でさらに磨きがかかっていると思うとますます楽しみ。
去年のリサイタルでは、ご本人いわく「あまり演奏される機会が少ないけど気に入っている作品」だというプロコフィエフのソナタ2番も演奏していました。あのときは比較的なめらかな表現で、チョ君的プロコフィエフの世界はこんな感じなんだなぁと思った記憶。これもまた、フランスの荒波にもまれて、ちょっと狂気的な要素も入り込んできていたりしたらおもしろそうだなと勝手に期待を膨らませています。

…ここまで書いて、なんだかわたくし、荒波、荒波って、まるでフランス生活に対してだいぶ偏見があるみたいな書き方だな、と気が付きました(笑)。べつにそんなこともないんですけど、たとえば音楽院にはデュモンみたいな頑固者がうようよしていて音楽論を戦わせていると思うと、強くなくちゃ生きていけないだろ、と思うわけです。フランス帰りのピアノの留学生、みんな強そうだし…。ただ、それだけのことですよ。

 

写真は、ちょうど2年前のこの時期、チャイコフスキーコンクールのときに撮った写真。このときにも大人っぽくなったなと思いましたが(お月様みたい、といわれていた15歳のころとはだいぶ変わったなと)、この時に比べてまた雰囲気が変わりましたね。
今回は、浜離宮朝日ホールというピアノにちょうどよいサイズのホールで聴けるというのも楽しみです。