前回の記事からずいぶんたったけど。
なんだかちょっと、心の中で温めておきたい気持ちもあって。
でも、
初盆もお彼岸も終わって、やっぱりちゃんと書いておこうと思う。
ぐっちゃんとのこと。
* * * * *
大阪から帰って、
私になにができるんやろう、と考えた。
ぐっちゃんにしてあげられることがあるんやろか。
何をしたら喜んでくれるんやろう。
毎日ラインを送ることにした。
私が勝手に送るからなあ。
見たいときだけ見て、別に返事はいらんでえ。
それから毎日、
私は歩きながら、電車に乗りながら、ネタを探した。
今日はぐっちゃんに何を送ろう。どうやって笑わせよう。
私にとって、ちょっと楽しみでもあった。
・今日は桜が咲いてたで。
・街でこんなん見かけたで。
・息子の入学式やってん。
・うちの犬のこと。
・今日の空きれいやで。
そんな、他愛もない短いメッセージと写真。
たまに、
ええなあ。とか
きれいやなあ。とか返事があった。
すぐではなくても、既読になることで、
私もホッとしてた。
でも、それがだんだんだんだん、
なかなか既読にすらならなくなってきた。
彼女に体調を聞くことはなかったんだけど、
ある日心配になって、思い切って尋ねてみた。
ぐっちゃん
具合どう?
ちょっと心配。
数時間後に、奇跡的に返事がきた。
『3日ほど前から高熱が、、、
40度超えるほどで
寒気がすごいねん
ガタガタ震えてる』
『そうやったんや
それはつらいなあ。
私も早く下がるように祈ってるわ』
でも、それから二日間
その後も送り続けたメッセージは既読になることはなかった。
夕方、外出先から戻った私は、ものすごい胸騒ぎがした。
電話せなあかん。
ぐっちゃんに電話せな。
今すぐ連絡せなあかん。
あ、ぐっちゃんの電話番号知らんやん。
どうしよう、このままラインでぐっちゃんの携帯に電話するか。
いや、自宅の電話番号変わってないかもしれん。
私は高校の名簿を引っ張り出し、
見覚えのある懐かしい番号に、祈るような気持ちでかけてみた。
お願い!誰か出て!!
ーもしもし。
ぐっちゃんとよく似た声で、妹のYちゃんだとすぐにわかった。
よかった。
手短に先日伺ったことを告げ、
ぐっちゃんの容態を聞いた。
ーもう、この2、3日意識がないんです。
そんなことになっていたんや、、、心底驚いた。
月末のぐっちゃんの誕生日前に、再度会いに行こうと思っていたことを告げると
ーたぶん、、、もう、もたないと思います。
じゃあ、明日すぐ会いに行っていいかと尋ねると、
ーいいんですけど、本人がわかるかどうか、、、それでもよかったら。
とにかく明日、会いに行きます。
もしも何かあったら必ず電話をください。とYちゃんに頼んだ。
電話を切ってすぐ、私は翌日の大阪行きの交通手段を探した。
奇跡的に、うちから行きやすい成田空港発のLCCの午前便が、
これに乗りなさいと言わんばかりに、1席だけ空いていた。
しかも割引価格で。
即予約したけど、
次は何したらええんやろう。
頭がまわらん。
胸がばくばくするまま段取りを考えていたら、、、
私の携帯が鳴った。
Yちゃんからや、、、
もしもし、Yちゃん?!
ーいま、亡くなりました。
ーたった今、亡くなりました。
眠るような最期でした。
ぐっちゃん、ごめんやで。
間に合わんかったなあ。
ほんまにごめんやで。
もっと早う行ったらよかったなあ。
こんな呑気でごめんやで。
でもなあ、ぐっちゃん、
ようがんばったもんなあ。
もうそんなに待ってられへんよなあ。
Yちゃんと二人でわあわあ泣きながら、
話したのを覚えている。
とにかく明日の便で大阪に行こうと思うこと、
お見送りに参列させてほしいことを告げて、ようやく電話を置いた。
ぐっちゃん、
私が飛行機とったのわかったん?
何回も行ったり来たりせんでええよ、
そんなん悪いわあ。
そう言ってくれてるみたいやった。
ほんまにぐっちゃんってそんな子やねん。
昔から。
ぐっちゃんのこと④につづく