民主党が子ども手当構想を打ち出し、子育て支援が政策議論の1つとなっています。「子どもに関することが政治における議論となる」このこと自体、とても画期的です。その分、どのような結論が出されるかを、しっかり見る必要があります。
そこで今回は、子育て家庭に対する支援について、考えてみたいと思います。
■子育て支援事業は継続できるのか
子ども手当をめぐっては、ここにきて所得制限を設ける案が浮上してきました。根底にあるのは、子ども手当を「本当に効果のあるものとする」こと、そして「財源確保」です。
子ども手当に限らず、民主党が2009年8月の衆議院議員選挙で掲げたマニュフェストの実行性については、「財源をどこで確保するのか」が問われ続けてきました。子ども手当については、既存の育児支援事業の予算を削る方針が打ち出されています。
日本経済新聞2009年12月4日付朝刊では、「地域子育て支援拠点事業」の交付金を利用して事業を展開している団体を紹介しています。
NPO法人びーのびーの様は、「地域で共に育ち合う子育て環境づくり」を目指して、預かり保育を手がける「子育て広場」を展開しています。
NPO法人びーのびーの様ウェブサイトはこちら
2010年度の概算要求では、「地域子育て支援拠点事業」が、要求額を明示しない「事項要求」にとどまってしまっています。びーのびーの代表である奥山千鶴子氏は、今でも委託金の半分が家賃に消え、スタッフに支払う時給700~800円ほどの厳しい状況の中、万が一予算が認めらなかった場合の、事業を継続する困難さを訴えています。
2009年11月に行われた事業仕分けでは、子育て支援に関する予算についても取り上げられました。
話題となった「子ども読書活動」と「子どもゆめ基金」の廃止をはじめ、「保育所運営費負担金」「こども未来財団」「放課後子どもプラン推進」「地域協働による家庭教育支援」「子どもの健康を守る地域専門家」等の各事業についても、厳しい結果が出されています。
「事業仕分け」に関する資料はこちら
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/shiryo.html
これまで提供してきた支援を継続できるか、関係者の不安が募っています。
■休みたくても休めないパパママの味方
働くパパママにとって心強い味方でありながら、事業を提供する施設の半数以上が赤字、というサービスがあります。それは「病児保育」です。病児は保育所では預かってもらえないため、パパママとも仕事を持っている場合、どちらかが仕事を休むことが必要となります。しかし休みたくても休めない、また休暇を取りづらい職場も多いものです。そんな悩みを解決するのが、病児を預かる「病児保育」です。
2009年11月22日付「日本経済新聞」朝刊では、この病児保育を取り上げています。
病児保育の全国組織である、全国病児保育協議会様によると、病児保育の主な設置先は、医師が直接運営にかかわる「医療機関併設型」や、保育所に併設され看護師がみる「保育所型」がありますが、施設の64%が赤字だそうです。原因は、利用者数の季節変動が大きいこと(冬は利用が増えるが夏はゼロの日が続く)、直前のキャンセルが多いこと(親が仕事を休めるようになった)などが挙げられています。
全国病児保育協議会様ウェブサイトはこちら
他方で、パパママにもっと使いやすいサービスにしようとする取り組みも進められています。
東京都板橋区と板橋区医師会は、保育所や幼稚園で子どもが発病した場合、病院の看護師が子どもをタクシーで迎えに行き、院内の病児保育所で預かるサービスを開始しました。このサービスがあれば、パパママが仕事を途中で抜け出す必要がなくなります。
板橋区「病児・病後時保育、お迎えサービス付き病児保育」の紹介はこちら
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/019/019346.html
NPO法人あい・ぽーとステーション様では、「子育て支援者」を独自に育成し、病後児の子どもの自宅に24時間派遣する体制を整えています。
NPO法人あい・ぽーとステーション様ウェブサイトはこちら
http://www.ai-port.jp/
またNPO法人フローレンス様は、東京都23区であれば当日朝でも100%の対応を保証。サービス利用を希望する家庭を会員制とし、入会金、年会費、月会費を支払うことで、事業としての採算性を確保しています。
NPO法人フローレンス様ウェブサイトはこちら
■必要なのは現金給付だけではない
こうしたサービスに共通しているのは、子育て家庭のニーズに対応する、きめ細やかなサービスです。「現金が給付されれば解決できる」問題だけではなく、「子育て家庭は今何に困っているのか」を踏まえた対応が、市場から受け入れられています。
子ども手当は現金給付ですが、それがきちんと子どものために使われるよう、必要な事業の拡充が望まれます。
「日本経済新聞」ウェブサイトはこちら