「仕事と子育てを両立しよう」「ママだけでなくパパも子育てを」と言われて久しいものの、やはり両立は難しく、主にママが退職せざるをえなかったり、子育てがママに偏よらざるをえないのが現状です。
それでも、ほんの少しずつではありますが、現状は変わりつつあります。
厚生労働省は「平成20年度雇用均等基本調査」を発表しました。「育児・介護休業制度」などの利用状況について、結果がまとめられています。今回はこの調査結果から、仕事と子育ての両立について、考えてみたいと思います。
■育児休暇を取得するママもパパも増えている
調査によると、在職中に出産した女性のうち、育児休業を取得した人は90.6%でした。2年前の平成17年度調査では72.3%だったので、18.3ポイントの大幅増となりました。
一方配偶者が出産した男性のうち、育児休業を取得した人は1.23%でした。女性と比較すると本当に大きな開きがあります。また今年6月に改正された「育児・介護休業法」で、男性の取得率目標として定められた10%にも、はるかに届きません。しかし平成8年度はわずか0.12%であったことを考えると、
「10年間で約10倍も増えた」と捉えることもできます。
また男性には「配偶者出産休暇制度」が設けられています。この制度がある事業所において、配偶者が出産した男性労働者に占める休暇利用者の割合は55.6%と、半数以上が取得する結果となりました。
■事業所は育児休業制度を進めている
育児休業制度の規定がある事業所の割合は66.4%と、前年の61.6%から上昇しています。
また子が何歳になるまで育児休業を取得できるかをたずねたところ、「1歳6ヶ月(法定どおり)」が87.0%であったのに対し、「2歳~3歳未満」が7.9%(平成17年度調査では6.1%)、「1歳6ヶ月を超え2歳未満」が3.1%(同3.0%)となっています。本人の希望により、法定以上の休業を取得できる事業所が、増えています。
さらに取得対象者について、労使協定で除外できることになっている者を対象とする事業所も増えています。例えば「配偶者が常態として子を養育することができる者」は25.5%(同24.1%)、「勤続1年未満の者」は20.3%(同16.9%)、「所定労働日数が週2日以下の者」は15.8%(同13.3%)等です。
復帰後も働き続けることができるよう、「短時間勤務制度」を導入している事業所は38.9%(同31.4%)、「所定外労働の免除」が26.8%(同23.2%)、「始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ」が22.0%(同18.5%)と、あらゆる制度において、導入する事業所が増えています。
また「配偶者出産休暇制度」についても、制度がある事業所の割合は36.0%(同33.0%)と、上昇しています。
■ポイントは「中小企業の取り組み」と「金銭保障」
生まれてきた子どもをパパママで育てる。当たり前のことを実現するための、企業の取り組みにおけるポイントは、「中小企業の取り組み」と「金銭保障」です。
事業所の取り組みを規模別で見てみると、大きくなるほど取り組む割合が高くなっています。
例えば「育児休業制度」のある事業所は、5~29人の事業所では36.4%ですが、500人以上では99.8%です。「配偶者出産休暇制度」は、5~29人の事業所では32.4%ですが、500人以上では81.0%です。
中小企業がどれだけ取り組めるかが、制度利用対象者を増やす鍵です。
また、特にパパが育児に関する制度を利用しようと考えた時、ネックになるのは、「休業に対する金銭保障がない」ことです。
休業中に労働者に金銭を支給している事業所割合は、13.7%にとどまります。また定期昇給の取り扱いについても、休業期間中の「定期昇給時期に昇給する」のは20.5%にとどまり、「休業期間中の定期昇給は行わない(復帰後時期をずらして昇給、もしくは復帰後の定期昇給時期に持ち越し)」が52.6%と半数を超えます。賞与算定についても、「休業期間も休まなかったものとみなして支給する」「一定程度出勤したものとみなして支給する」を合わせても、6.0%にすぎません。70.8%は「出勤日数又は休業期間に応じて支給する(休業期間は算定対象外)」となっています。育児休業を取ることは、休業中だけでなく、復帰後の給与額にも、大きな影響を及ぼすのです。
男性が家計の中心を担うことが大半の日本の家庭において、男性の金銭保障がなければ、制度利用は難しいというのが実情です。
未来の宝である子どもを育てるという、素晴らしい経験。パパもママも、仕事と無理なく両立していかれるよう、制度、そしてパパママの周りにいる人たちが、サポートしていくことが大切ですね。
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