私たちが目にするもの、手にするもの。様々な色がセンスよく組み合わされ、場合によっては機能よりデザインを優先して購入してしまう、なんてこともあるのでないでしょうか。
しかし、色を使って情報を伝えることが、必ずしもすべての人にとって見やすいわけではありません。
今回は、「誰にでも見やすいデザイン」という観点から、ダイバーシティを考えてみたいと思います。
■色彩で不自由を感じている方は500万人
様々な色を使った製品は、一般の人の色の見え方だけを考えて、デザインされていることが大半です。
しかし、目が見えていても、そのデザインが見えない方もいます。
色弱、色盲といった障がいを持っている方や、視覚機能が衰えてきた高齢者です。
色弱の方は、男性の20人に1人、女性の500人に1人とされています。色を見分けられず、明暗のみを感じることのできる方は数万人程度、そして緑内障、白内障など、老化に伴う眼の疾患で、色の見え方が変化する方もいらっしゃいます。これらをあわせると、日本国内だけでも、500万人以上が、色の見え方が一般の方と異なるとされています。
こうした皆さんは、デザインや色使いによっては、むしろ、「文字が見えにくい」「情報が伝わらない」ということがあります。
重要な注意書きを読むことができなかったり、肝心な説明が見えなかったりすることは、日常生活に支障をきたすだけでなく、場合によっては生命を脅かすことにもなりかねません。
■すべての人が美しく感じられ、かつ情報が伝わるデザイン
「カラーユニバーサルデザイン」という言葉を聴いたことがあるでしょうか。「だれにでも見やすい色の組み合わせに配慮したデザインを行うこと」と定義されています。
カラーユニバーサルデザインを広め、社会の色彩環境を、多様な色覚を持つさまざまな人々にとって使いやすいものに改善してゆくことで、「人にやさしい社会づくり」をめざすことを目的として立ち上げられたNPO法人が、「Color Universal Design Organization」(カラーユニバーサルデザイン機構)、略称「CUDO」(クドー)です。「カラーユニバーサルデザイン」の考え方を伝え、色を上手に使い、全ての人に美しく感じられるカラフル、かつ情報をきちんと伝えるデザインを広めています。
企業への印刷物や製品に対するモニタリングやアドバイス、カラーユニバーサルデザインに配慮して作られている製品や施設に対する「CUD(Color Universal Design)」の認定、普及啓発に向けたセミナー開催などの活動を進めています。
■バリアフリーからユニバーサルデザインへ
これまで視覚に関する対応は、「点字ブロック」や「音声案内」など、眼が見えない方への「視覚バリアフリー」を意味していることが大半でした。しかしこれからは、色彩に関する「色覚バリアフリー」への対応が必要です。
色弱、色盲の方は、他人から見て、障がいが分かりづらいこともあり、対応が遅れていました。このため、進学や就職、自動車運転免許などの資格試験で、不利益をこうむることもありました。また遺伝性のため、結婚の際差別を受けることもありました。
こうした状況に対して、色弱、色盲の方は、声をあげるのではなく、見えるふりをしたり、不便を我慢していました。声をあげづらい環境が、ますます問題を潜在化させていたのです。
現在「バリアフリー」(障がい者や高齢者などが社会生活を営む上で支障となる障壁を取り除く)から「ユニバーサルデザイン」(できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにする)への転換が進められています。
カラーユニバーサルデザインはその名の通り、「ユニバーサルデザイン」への取り組みであり、「作る側」ではなく「使う側」の立場に立って考えられたデザインです。
多くの製品が、そして私たち一人ひとりの「心」がユニバーサルデザインになること、それがすべての人が各自の持てる力を最大限に発揮できる「ダイバーシティ」につながりますね。
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