あなたにはお子様がいらっしゃいますか?
希望するお子様の数と、実際のお子様の数は、一致していますか?
国立社会保障・人口問題研究所が2002年に行った「出生動向基本調査」によると、初婚夫婦の理想の子どもの数は2.56人、しかし予定している子どもの数は2.13人と、現実が理想を下回っています。
その理由の第1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」。
なんと20代では81%が、この理由を選択しています。
そんな中、全国の流通・サービス業などで、自治体と連携した子育て世帯向けの優遇サービスが広がりつつあります。
少子化が進む中、なぜ企業は、子育て世帯を対象としたサービスを展開しているのでしょうか。
埼玉県内では、2007年5月から、飲食・小売店が県と連携し、子育て世帯向け優遇サービスを開始しました。
中学生以下の子どもがいる世帯に「パスポート」を発行。県内に約5,000店ある協賛店で提示すると、ポイントの優遇や手数料割引等のサービスが受けられます。
福島県でも同様の「子育て応援パスポート」を発行。県内約2,200店が協賛しています。
一方石川県では、子どもが3人以上いる世帯に、2006年1月から「プレミアムパスポート」を発行。
1,900店の協賛店舗がサービスを提供しています。
2007年4月からは子どもの数に関係なくサービスが受けられる制度も取り入れ、対象世帯を増やしています。
また青森県と岩手県は、両県の協賛店で、サービスを受けられる仕組みとなっています。
これらのサービスの原資は店側の負担です。それでも協賛企業は増えています。
これは「子育て世帯へのサービスを拡充することで、イメージを高めたい」という企業側の狙いがあるためです。そこに、限られた予算の中で少子化対策に取り組む自治体の思惑が一致し、広がりをみせているのです。
自治体は協賛店舗を冊子やHPで紹介しています。
これが企業の認知度の向上や、自治体による「お墨付き」としてのイメージ向上につながるというわけです。
企業の子育て世帯優遇サービスを後押しする自治体数は、2007年度には30以上にのぼります。
では、日本で子どもを育てることは、そんなにお金がかかるのでしょうか。
他国の子育て支援施策を調べてみました。
日本では、働く男女が子どもを産み育てる場合、子どもが1歳になるまで、育児休業の取得が可能、休業前賃金の40%相当額が、育児休業給付として支払われます。
また就学前の第1~第3子に対して、平均7,000円の児童手当が支給されますが、所得制限があります。
一方海外の育児休業ですが、フィンランドでは両親合わせて3年間の休業ができます。
また賃金保障については、所得水準により43%~82%が保証されます。
フランスでも、両親合わせて3年間の休業ができ、出産休暇期間の賃金保障は100%です。
スウェーデンでは両親合わせて480日の休業を取得でき、うち390日間は賃金の80%が保証されます。
子育てにかかる費用の軽減ですが、児童手当については、オランダでは0~17歳が対象で平均約10,000円、フランスでは第2~3子が対象で約17,000円、イギリスでは16歳未満の第1~3子が対象で、平均約18,000円、スウェーデンも同じく16歳未満の第1~3子が対象で、平均16,000円等となっており、これらの国々では、所得制限なく、手当てが支給されます。
またフィンランド、オランダ、フランス、イギリス、カナダ、ドイツでは、公立学校の義務教育費は無料です。
残念ながら日本は、子どものいる世帯に対する所得保障の施策が不足している国であることが分かります。
子どもは社会の宝です。
子どもも、子どものいる世帯も、安心して生活することができる社会が求められています。
それは誰もが活き活きと、自分の持てる力を最大限に発揮できる社会、つまりダイバーシティの実現にあります。
たかがお金、されどお金。
子どものいる世帯に対する所得保障を増やすことで、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」と子どもを生み育てることをためらう夫婦がゼロになり、少子化問題が解決できるのであれば、このコスト、随分安いと思いませんか?
2007年2月11日付「日本経済新聞」より
↓少子化の状況をまとめた「平成20年版少子化社会白書」はこちら ↓
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/index-w.html
↓出生動向をまとめた「第12回出生動向基本調査」はこちら
↓
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou12/doukou12.asp
↓各国の少子化対策をまとめた「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書」はこちら
↓
http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/syosika/houkoku/index-kokusai.html