阿蘇の国に秋風 | 阿蘇の国のクララ

 

9月27日(月)...

 

四季見茶家

 

「ジュン、ジュン、キィーキーキーキー」。

 

モズの甲高い鳴き声が

大地に響きはじめると、

阿蘇の国に秋風が吹き始めます。

 

「...秋をください♪」

 

南登山道

 

南郷谷

 

南の山の方には雨雲が広がっていて、

西の山の中腹には霧がかかっていました。

 

山の天気は変わりやすく、

同じ町の同じ時刻でも

それぞれの山では

天気が異なることがよくありました。

 

「クー!」

 

阿蘇山烏帽子岳

 

私はママより10歩先を歩きました。

 

「なにあれ...」

 

私は低い声でつぶやきました。

 

ママが息をのむ音が

はっきりと聞こえました。

 

私は逃げたほうがいいと、

とっさに思いました。

 

イノシシだ、

と一瞬思ったものの、

その異常なほどの身体の大きさに

言葉を失いました。

 

それは道幅いっぱいに、

2メートルほどの身体を

横たえていました。

 

「退け!」

 

と声をかけたのはパパでした。

 

イノシシはくるりと反転し、

鼻を鳴らすとヤブへと

消えていきました。

 

それから3人は、

夕暮れの登山道を、

静かに下りました。

 

「怖かったけど、楽しかったね」

 

ママは遠くを見るような目で話しました。

 

「ママ」

 

その言葉の響きに、

私はぴくっとしました。

 

ママって、ママだったんだって、

あらためて思いました。

 

「私の本当のママ...」

 

そう言って、

私はママをじっと見つめました。

 

そういえば並んだ顔はどことなく似ている。

 

「カエルさんとおうちに帰ろう♪」