だいじょうぶなわけがないし | 阿蘇の国のクララ

 

8月2日(月)...

 

「クーちゃん、いらっしゃい♪」

 

「クー♪」

 

ボワ・ジョリ

 

月曜日の昼下がり、

私たちはいつもの席につきました。

 

「食べよう、いただきます♪」

 

次の日が

ママの病院だということを除けば、

平和な午後でした。

 

恐ヶ渕

 

「クー!」

 

「クーちゃん、今日は阿蘇神社に行くよ!」

 

「クー!」

 

「拝殿が新しくなったの」

 

阿蘇神社

 

昭和23年に完成した旧拝殿は

熊本地震で全壊しました。

 

「水を汲んで帰ろう」

 

不老長寿の水

 

 

8月3日(火)...

 

イノシシ林

 

「暑くなりそう」

 

「パパ、ママを頼んだよ」

 

ママとパパの二人で病院へ...

 

新阿蘇大橋

 

病院の日はどうしても

ママのことを考えてしまいます。

 

ママはもう6年以上前からがん。

 

肺がん。

 

ママもパパもタバコは吸わないのに、

肺がん。

 

「タバコを吸わなくても肺がんにはなるわよ」

とママは言いました。

 

「お酒を飲まなくても肝臓がんにはなるし」

 

医師も似たようなことを言いました。

 

「アレセンサの服用を継続です」

 

「お世話になりました」

 

それから、

鶴屋へ...

 

ママががんだとわかった翌年に

アリスおねえさんが脳腫瘍だとわかりました。

 

6歳。

 

ママは泣きました。

 

メルカード

 

ママの体調がおちついた頃だったので、

アリスが私のがんを食べたのだと、

そんなことまで言いました。

 

その年は熊本地震もあって、

アリス家にとっても

ツラい一年になりました。

 

病院にいる時、

パパはママに質問しません。

 

だいじょうぶ?

 

苦しくない?

 

そんな質問さえしません。

 

だいじょうぶなわけがないし、

苦しくないわけがないのだから。

 

そんな質問をして、

だいじょうぶ、苦しくない、

と答えさせる。

 

それを聞くことで自分が安心する。

 

そんなことはしたくないのです。

 

だから病院では、

ただ一緒にいるだけになることが多い。

 

ママはそれでいいそうです。

 

何なら一言も話さなくていい。

 

ただ、

おうちに帰った時は、

おかえりって、抱きしめてるけど...。

 

「ママ、おかえりなさい」