セシウムが含まれた牧草を牛が食べて生態移行することが多いため、県では牧草管理の指導も行っている。だが、サンプルを採取する段階ですでに多くの酪農家の生乳が混ざっていることから、原因となった牧場を特定するのは困難だと言う。
茨城、栃木と並んで、放射線量が高いのは群馬だ。 中堅スーパーで群馬産のホウレン草、キャベツ、生シイタケを購入したところ、すべてからセシウムを検出した。中でもホウレン草は26・12ベクレルを記録し、セシウムが移行しやすいと言われるシイタケの値を超えた。
群馬産は、今回都内で購入した6品目中4品目から検出。加えて、県北の川場村で買ったアユの甘露煮、生栗からも出た。
県内北部にある物産販売店の店長はこう説明する。
「放射性物質の検査は生産者に任せていて、50ベクレルを超えたら販売しません。ですが、それ以下は基準値以下なので問題ないと思っています」
しかし、小さい子どもを持つ親など、少ない数値でも気にする人が増えているようだと水を向けると、途端に顔を曇らせた。
「正直、どう対応してよいのか。どのくらい含まれているかを商品ごとに表示するやり方もありますが、お金がかかりますので……」
さらに心配なのは、福島第一原発が太平洋へ垂れ流している汚染水による魚の汚染だ。
三陸沖の魚を使ったサバ味噌煮缶詰、サンマの冷凍一夜干しから、それぞれ15・52ベクレル、4・73ベクレルが検出された。サバ缶の製造業者はこう言う。
「昨年秋に八戸港で水揚げされた秋サバです。石巻工場内で第三者機関の測定を受け、10ベクレル以下ということを確認しています」一方のサンマだが、岩手の発売元によると、昨年秋に北海道に近い三陸沖で水揚げされ、検査に合格したものを仕入れて販売しているという。ともに12年産のものだ。
東京海洋大の神田穣太教授がこう指摘する。
「基準値より低いとはいえ、回遊性の魚としてはかなり高い数値。サンマやサバのように広範囲を泳ぎ回る魚からは、最近は放射能が検出されていませんので。仮に魚自体に由来する数値とすれば、回遊する中で原発のごく近海を通ったのかもしれません」
サバ缶ダイエットがはやりだが、念のため用心したほうがよさそうだ。
意外だったのは、福島産のキュウリ、ツルムラサキ、ナメコ、米、地鶏ソーセージのいずれも未検出となったことだ。南相馬市にある放射能測定センターの神谷俊尚さんが、こう言っていたのを思い出した。
「福島の生産者は、農作物がセシウムを吸うのを防ぐためにカリウムを畑にまくなど、かなり気をつけている。近隣県のほうが危ないですよ」
福島県によると、他県にない独自の対策を採用しているという。
「12年度に50ベクレルを超えた品目は、事前確認検査をしてからモニタリング調査をする2段構えの体制を敷いています。また、県と関係機関で協議会を設立し、県内38カ所に放射能測定器を導入して生産者が自主検査できるようにしています。この二つは福島県独自のものです」(福島県農林水産部園芸課)
今回測定した54食品中、12食品からセシウムが検出されたが、やはり福島近隣産がこれらを毎日食べていたら、年間被曝量が10マイクロシーベルトどころではなくなるのは明らかだ。
しかも、流通網が発達している今の時代。全国のどこへ行っても同じ野菜や魚が買えるだけに、地域を問わずセシウムを取り込む可能性がある。
さらに群馬、栃木、茨城、千葉で線量が高いと言われる地域8カ所の畑の土壌をサンプル調査したところ、最も汚染されていたのは千葉県柏市の3736ベクレル。次は、茨城県守谷市の2106ベクレルだった。大地の放射能汚染もまだまだ続いているといえそうだ。
当然、生産者への打撃も大きく、茨城県石岡市で農業を営む魚住道郎さんはこう嘆く。
「100品種以上の野菜を全国に直販していますが、震災後、放射能を気にしてキャンセルが相次ぎました。農地を90センチ掘って下の土を上に入れ替える『深耕』を実施すると、セシウム濃度が3分の1程度まで下がり、ウチのホウレン草は0・5ベクレル未満です。ですが、こうしたことを知っている農家はごく一部です」
さらに福島から遠ければ安心というわけでもない。
福島第一原発から約千キロ離れた大分県の干しシイタケから18・61ベクレルが検出されたからだ。
大分といえば、干しシイタケの生産量が全国一を誇るシイタケどころである。セシウムが出たシイタケ農家はこう釈明した。
「ウチではすべて地元の原木を使い、出荷後に行う椎茸農協の検査でもいままで問題が出たことはありませんでした。今回は都内のスーパーと直取引したものがそのまま売られ、結果的に検査を潜り抜けてしまいました」多かった。5月に測定したときも茨城産タケノコ(93・81ベクレル)、生シイタケ(16・99ベクレル)、レンコン(7・80ベクレル)、群馬産メグスリノキ(50・54ベクレル)、栃木産菌床シイタケ(11・45ベクレル)、静岡産お茶(24・38ベクレル)から検出された。
大分県椎茸農協では10ベクレルを超えるものは販売しない決まりを作っているが、こうした例外もあるという。それにしても福島から遠く離れた九州のシイタケになぜ、セシウムが出たのか。調査すると、今回だけではなかった。
大手生協では、11年4月からの放射性物質検査で、実に30検体もの九州産シイタケからセシウム137を検出していた。
「九州産シイタケで福島事故以降に測定したものは、だいたい検出され、10ベクレル前後ありました。ただ、チェルノブイリ事故直後も九州産のシイタケに高い値のセシウムが検出されているので、どちらが原因かは定かではありません。セシウム137の半減期は30年と長いですから」(大手生協)
ただ何が原因であれ、放射性物質入りの食品を食べれば、内部被曝するのは確かだ。
名古屋大学名誉教授の沢田昭二氏は、放射能汚染された食品摂取による危険性をこう指摘する。
「たとえ少量でも内部被曝が長期にわたれば、将来のがんにつながる可能性があります。放射線によって染色体が傷つけられればいろんな健康被害が起こりうると考え、できる限り被曝を抑える必要があります」
多くの食品にセシウムが含まれている現状を前に、私たちはどうすればいいのだろう。青木氏、矢ケ崎氏、沢田氏が声をそろえて言うのは、国が尿検査を行い、内部被曝の実態を詳細に明らかにすることだ。
「300ベクレルが検出下限のホールボディーカウンターで福島の子どもたちを測定し、内部被曝は防げた、などと言う人たちがいますが、尿検査をすれば100倍の精度でセシウムが検出されます。食べ物も十分に気をつけて、子どもたちを守らないといけません」(矢ケ崎氏)
家庭でもできる対策はないのだろうか?
放射性セシウムとストロンチウムを減らす基本的な調理法は(1)表面についた放射性物質を洗って取り除く、(2)水溶性放射性物質を塩の浸透圧等で取り除く、というもの。
筆者は今回、18ベクレルが出た干しシイタケを煮込んだところ、約6割のセシウムが煮汁に移行した。
国が事実に反して食の安全神話をつくり出そうとしている限り、こうして自衛するしかないだろう。