関東15市町で実施されている最新検査で、子どもたちの尿の7割からセシウムが検出されていたことがわかった。さらに併せて入手した食品検査の結果でも、米、きのこ、お茶など280品目からセシウムが続々と出ていた。安倍晋三首相(59)はこれでも健康リスクはないと世界に約束できるのか。 ジャーナリスト 桐島 瞬 週刊朝日10.4号より
入手したショッキングなデータをまず、ご紹介しよう。常総生活協同組合(茨城県守谷市)が、松戸、柏、つくば、取手など千葉、茨城の15市町に住む0歳から18歳までの子どもを対象に実施した尿検査の結果である。
「初めの10人を終えたとき、すでに9人からセシウム134か137を検出していました。予備検査を含めた最高値は1リットル当たり1・683ベクレル。参考までに調べた大人は2・5ベクレルという高い数値でした。いまも検査は継続中ですが、すでに測定を終えた85人中、約7割に相当する58人の尿から1ベクレル以下のセシウムが出ています」(常総生協の横関純一さん)
検査を始めたのは、原発事故から1年半が経過した昨年11月。検査対象全員の146人を終える来年明けごろには、セシウムが検出される子どもの数はさらに膨れ上がっているだろう。
セシウム134と137はウランの核分裂などにより生じ、自然界には存在しない物質だ。福島から近い関東の子どもたちが、原発事故で飛び散ったセシウムを体内に取り込んでいるのは間違いないだろう。副理事長の大石光伸氏が言う。
「子どもたちが食べ物から常時セシウムを摂取していることが明らかになりました。例えば8歳の子どもの尿に1ベクレル含まれていると、1日に同じだけ取り込んでいると言われます。内部被曝にしきい値はないので、長い目で健康チェックをしていく必要があります」
関東だけではない。放射能汚染による体内被曝が、東海や東北地方にまで及んでいることも分かった。
福島を中心に200人以上の子どもの尿検査を続けている「福島老朽原発を考える会」事務局長の青木一政氏が、実例を挙げて説明する。
「昨年11月に静岡県伊東市在住の10歳の男児、一昨年9月には岩手県一関市在住の4歳の女児の尿からセシウムが出ました。この女児の場合、4・64ベクレルという高い数字が出たため食べ物を調べたところ、祖母の畑で採れた野菜を気にせずに食べていたのです。試しに測ってみたら、干しシイタケから1キロ当たり1810ベクレルが検出されました」
食品に含まれる放射性セシウムの基準値は、1キログラムあたり一般食品100ベクレル、牛乳と乳児用食品50ベクレル、飲料水と飲用茶10ベクレルだ。ただし、基準そのものに不信感を持つ消費者も多い。検査もサンプル調査だから、東日本の食材を敬遠し、なおかつ1ベクレルでも気にする風潮につながっている。
体内にセシウムを取り込むと、どういう影響が出るのか。内部被曝に詳しい琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬氏が解説する。
「セシウムは体のあらゆる臓器に蓄積し、子どもの甲状腺も例外ではありません。体内で発する放射線は細胞組織のつながりを分断し、体の機能不全を起こします。震災後、福島や関東地方の子どもたちに鼻血や下血などが見られたり甲状腺がんが増えているのも、内部被曝が原因です。怖いのは、切断された遺伝子同士が元に戻ろうとして、間違ったつながり方をしてしまう『遺伝子組み換え』で、これが集積するとがんになる可能性があります」
矢ケ崎氏は、尿中に含まれるセシウム137がガンマ線だけ勘定して1ベクレルだとすれば、ベータ線も考慮すると体内に大人でおよそ240ベクレルのセシウムが存在し、それに加えてストロンチウム90もセシウムの半分程度あるとみる。
体に入ったセシウムは大人約80日、子ども約40日の半減期で排出されるが、食物摂取で体内被曝し、放射線を発する状態が続くことが危険だと言う。
常総生協が昨年度、食品1788品目を調査した資料がここにある。
結果を見ると、280品目からセシウムが検出されていた。米74%、きのこ63%、お茶50%、それに3割近い一般食品にもセシウムが含まれていたのだ。
安倍晋三首相は五輪招致のプレゼンテーションで自信満々に「食品や水からの被曝量は、基準値の100分の1以下」と言い切ったが、その根拠は何なのか。
資源エネルギー庁原子力政策課がこう説明する。
「厚生労働省が2012年に、流通食品と家庭での調理食品のセシウム調査を行った結果、1年間に受ける線量が、国内どの地域でも年間1ミリシーベルトの1%以下と推計されました。総理の発言はこのデータが根拠となっています」
つまり、放射線を出す能力を示す「ベクレル」を人体への影響の度合いを表す「シーベルト」に換算した結果、食べ物による内部被曝は年間10マイクロシーベルト以下ということらしい。
だが、入手した常総生協の調査データを見る限り、100分の1などととても言えないのではないか。
試しに平均的な量を食べるとして試算してみると、セシウムが検出された白米を毎日、納豆を1日おき、鶏肉、マイタケを週2食、レンコン、アジを週1食べただけで、年間10マイクロシーベルトを超えた。
セシウムが含まれていた食品はほかにもまだある。
東京都荒川区で放射能測定所を運営する関井守氏が言う。
「国が測定する対象には偏りがあり、食品からセシウムが出ていないなどと断定的に言える状況ではありません。事実、ウチで測定しても、木の実や青果から10や20ベクレル程度が出るケースは結構あります」
どうやらきちんと調査してみる必要がありそうだ。 筆者と取材班がさっそく1台300万円以上する測定器をレンタルし、都内のスーパーで買い込んだ食材を測定したところ、次々とセシウムが検出された。
まず、セシウムが出たのは、秋の味覚レンコン。この秋収穫されたばかりの茨城産が22・68ベクレル(セシウム134と137を合算、単位はベクレル/kg、以下同じ)と表示された。
食品の放射性物質検査を行う都内の生活クラブ連合会が指摘する。
「水生植物のレンコンはセシウムが蓄積されやすい。川魚から出やすいのと同じ理屈です。こちらで測定した茨城産と栃木産からも検出されています」
調べると、長野県や札幌市などが測定した茨城産のレンコンからも同様にセシウムが出ていた。だが、奇妙なことに地元、茨城県の検査では昨年から一度も検出されていない。
茨城県農林水産部に検査方法を聞いた。
「市町村から要望があがった時点で検査を行い、その地区の1本をサンプルとして測定します」
今年の検査は6月に実施したハウスものだけという。
次に出たのが牛乳だ。
購入した栃木産牛乳を測定にかけると、4・43ベクレルを検出した。
基準値の50ベクレルより十分に低く、少量だが、毎日コップ2杯を飲むと試算すると、年間で最低10マイクロシーベルトの内部被曝をする量だ。安倍首相のスピーチとまたも矛盾する。
栃木県畜産振興課が放射性物質検査をこう説明した。
「県内にサンプルの生乳を取る場所が6カ所あり、2カ所ずつ持ち回りで毎週検査をします。昨年、今年ともセシウムが出たことは一度もありません」
こちらの検査でセシウムが出たことを伝えると、絶句した後、こう答えた。
「4・43ベクレルでも絶対に安全とはいえません。さっそく製造業者を指導します」