『国土と日本人』 | くらえもんの気ままに独り言

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 さて、今回は先送りにしておりました大石久和先生の『国土と日本人』(中公新書)の感想および解説をやってみたいと思います。ちなみに大石先生の動画はコチラ。


藤井聡先生の師匠

http://ameblo.jp/claemonstar/entry-11816344003.html


 この著書は2012年2月の発行なので現在のデータと比べると変わっている箇所もあるかもしれませんが、御了承ください。(興味のある方は調べて教えてくれるとうれしいです。)


 それでは日本の現状を中心にかいつまみながらいきます。


日本列島の自然条件

①国土の歪みと複雑さ

 なんと日本は細長い!! 端から端まで直線距離で3300kmもある。列島の幅は最大250kmしかないのに。ゆがみ度(真円を1とする)を計測するとフランスは1.23、ドイツは1.30だが日本は4.06である。これは地域や都市間のネットワーク形成が大変だということを表す。また地形の複雑度(真円を1とする)を計測するとフランスは2.08、ドイツは2.91だが、日本は15.6である。これは海岸線が複雑であり、やはり都市間を結ぶことがより困難であることを示している。


②四島に分かれている

 実は海峡を渡るというのは結構困難であり、四島を一体として国土形成を行うのは大変である。四島の一体化が完成したのは1988年と最近のことである。


③脊梁山脈が縦貫し、河川が急流

 日本は平野が少なく、細長いうえに脊梁山脈の標高は2000~3000m級。道路を通すのもかなり難しいうえ、水害も桁違いの頻度で起こる。主要河川において洪水時には平時の1000倍近い流量が河川を流れるところも。欧米では数倍から数十倍程度。


④地質が複雑で不安定

 国土面積の70%が山岳地帯のうえ、地質はモザイク模様で断層や活火山も多い。降雨や地震の影響で簡単に山崩れを起こしてしまう。


⑤全体として少なく狭い平野

 国土面積に対する可住地面積はイギリス84.6%、フランス72.5%、ドイツ66.7%だが、日本は27.3%しかない。しかも細かく分かれている。(関東平野はまとまった広い平野のように見えるが、開墾し、河川の整備の末、ようやく今のようにまとまって使えるようになった)


⑥軟弱地盤上の土地

 欧米の主要都市は河川は標高0mを流れているが、日本の主要都市は標高10mくらいを流れている。これは堤防が決壊すれば都市は全域浸水してしまう危険があるということ。また地下水位が高く地下の工事が困難。地下水位を下げるために排水すると地盤が緩んでしまう。


⑦いつ起こっても不思議ではない地震と津波

 国土面積は世界後表面積の0.25%だが、M4以上の地震の10%、M6以上の地震の20%が日本で起こる。4つのプレートのせめぎ合う場所。日本は全土で地震の発生を想定しないといけないが、欧米ではごくわずかの場所のみ(ドイツに至っては発生確率ゼロ)。


⑧短期間に集中する豪雨

 日本は他国に比べて国民あたりのダム貯水量が圧倒的に少ない(東京首都圏で30㎥/人)。雨も台風期や梅雨期にまとまって振るため、渇水と豪雨被害に悩まされる。


⑨台風による強風

 台風の通り道に日本列島が存在。強風対策も必要になってくる。


⑩日本海側を苦しめる豪雪

 日本の国土面積の60%が積雪寒冷地帯。豪雪地帯に大都市が存在する国は他にはない。脊梁山脈が雪を全部日本海側に降らせてしまうから。


⑪緑に覆われた国土

 飛鳥時代より森林の衰化は始まり、開発や乱伐、大火の影響で日本の山は禿山化していった。戦後の植林事業により、禿山や裸地がほとんどないという日本史上はじめての状態となっている。


⑫歴史をも動かす自然災害

 短期間に大災害が多発することを日本は幾度となく経験しているが、そういった時期に歴史の転換点が訪れている。


 こういった実情を考えると公共事業に多額の費用がかかるのは当たり前ですし、多額の費用をかけなくてはならないということ誰でも分かる話です。それなのに「公共事業は嫌だ。給付金をくれ。」と言う輩が存在するというのが嘆かわしいですね。

 しかしまぁ、日本というのは国土条件的にはすごく住みにくい場所ですね(;^_^A

 大陸と陸続きでなかったのは不幸中の幸いでしょうか。

 逆に考えると、こういった自然災害という負荷が日本人を鍛え上げていったのかもしれませんね。


 そして、インフラ整備に関する現状の話です。


①公共事業の削減

 「無駄な公共事業はやめろ」から「公共事業は無駄だ」へ変化。公共事業削減により地方経済は大打撃。建設会社の倒産により災害対策もままならず。世界には例を見ない愚策。


②現在の道路整備状況

 ヨーロッパの100km/hで走れる道路はイギリス8483km、フランス10509km、ドイツ12174km、イタリア6532km、日本は80km/hで走れる道路で6709kmのみ


③高速道路の車線数

 3車線以下の高速道路は日本では33.1%、欧米では3%以下、韓国でも4.5%。かたや6車線以上の高速道路は日本では6.4%、欧米では20%以上(イギリスは70%)、韓国では24.7%。


④日本と東アジア主要港のコンテナ取扱量

 1980年から2009年にかけて日本の主要港では3.9倍になった一方、釜山では19.0倍、上海では500倍、高雄では8.8倍、香港では14.4倍、シンガポールは28.1倍となっている。日本で最大のコンテナ港湾である東京港は世界の26位と低迷。


⑤公的固定資本形成の削減

 1996年を100としたときに2009年で日本は50、フランスは165、アメリカは201、カナダは287、イギリスは313である。GDPに占める割合も日本だけどんどん下げてきている。


⑥東京一極集中

 海外の主要都市は多車線の環状道路が何重にも走っているが、東京は環状道路が全然つながっていないし、部分的にできているところも4車線(場所によっては2車線)。東京圏は火災時の延焼の危険も高い。

 

⑦ミッシングリンク

 例として大阪から鹿児島まで道路で行くルートは全部で20通りしかないが、計画中の道路がすべて開通すると12600通りとなる。こうなれば断線しても迂回路がたくさんある(海峡はボトルネックだが)。


⑧老朽化

 建設後50年以上経過する橋梁は2006年時点で6%(8900橋)だが、2016年で20%(28700橋)、2026年で47%(68200橋)。にもかかわらず道路維持管理費は年々削減され続けている。


 他にも下水道の整備なども欧米に比べれば遅れている様子。それなのみ「無駄な公共事業が~」とか「財政再建が~」とか「道路はもう十分だ~」とか言っている連中は今の日本の状況をしっかり見るべきではないでしょうか。


 災害の危険がめちゃめちゃ高いにもかかわらずインフラ整備がめちゃめちゃ遅れている日本。国土強靭化が急務であることは言うまでもないでしょう。それを邪魔するアヤカシ派や政府のワクワクバカどもは国賊と呼んでも差し支えないでしょう。


 みなさん現状認識できましたか?


今回の参考図書はコチラ

国土と日本人 - 災害大国の生き方 (中公新書) 大石久和著

http://www.amazon.co.jp/dp/4121021517



くらえもんが至高のギャグマンガ「ドラえもん」を独自の視点でおもしろおかしく解説!興味のある方は下記のエントリーにまとめを作っていますので是非ご覧ください。