ああ、リーマンショック2、おそろしや・・・。ストーリーが怖いのでアップします。
○コラム「リーマンショック2」封切り間近(ウォール・ストリート・ジャーナル)
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Finance/node_309188?mod=MostPopularBlock
3年前、リーマン・ブラザーズはもろくも破たんした。この第1作も恐ろしかったが、IMAX3D、デジタルサラウンドで近日公開される第2作の恐怖にはそれをしのぐものがある。
というのは、カナダのトロントに拠点を置くファースト・アセット・インベストメント・マネジメントの上級副社長兼ポートフォリオ・マネジャー、ジョン・スティーブンソン氏の見解である。
同氏はリーマンショックのような金融危機が向こう6-12カ月のあいだに起こると予想する。前回との違いは、今回の危機の原因が財政赤字と欧州の銀行にある点だ。
これが起きれば、株式相場は2008年秋にリーマンが破たんし、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が破たん危機に陥った直後のレベルまで暴落し得る、というのが同氏の見方である。
スティーブンソン氏は電話インタビューで「そうなれば相場はあっという間に暴落し、かなり深いダメージを負うことになる」と述べ、「前回の金融危機よりもひどいものになる。前回は政府に人々を救済する余裕があったが、もはやそのような能力はない」と続けた。
米国ではあまり知られていないが、筆者は同氏を賢明で信頼できるストラテジストだと思っている。保守的なカナダ金融界にどっぷりと浸かっている同氏は、カナダの資産運用マネジャー上位50人に選出されたこともある。
その他の著名投資家もこの考えに賛同している。投資界の巨人、ジョージ・ソロス氏もその1人で、「今回の危機には、リーマンショックよりもずっと深刻な結果をもたらす可能性がある」と述べている。
◇救済措置の政治的ツケ
スティーブンソン氏は、カーメン・ラインハート教授とケネス・ロゴフ教授の論文通り、金融危機はまず民間部門を襲い、政府が経済を守ろうとして銀行を救済すると、今度は公的部門がダメージを受けるのだと説明する。
「この100年間に起きた金融危機の直後に顕著な特徴は政府債務の増加である」。両教授は2011年に発表した論文『A Decade OF Debt(債務の10年)』でこう書いている。「システミックな金融危機とソブリン債問題の両方、あるいはいずれかを抱える国は、平均債務レベルが約134%上昇する」
これは納税者にとって大きな負担となり、ソブリン債の信用度を傷つけることになる。スティーブンソン氏はこう指摘する。「リスクが政府に転嫁されると、一般市民はどうして他人の過ちの報いを受けなければならないのかと疑問に感じる」
確かにその通りで、特にドイツやその他の欧州北部諸国の国民はギリシャのような国々を救済することにためらいを感じている。彼らからすると、そうした国々はたかり屋でしかないのだ。「政治的に、ドイツは他国民を救済したいと思っていない」とスティーブンソン氏は言う。こうした状況はアンゲラ・メルケル首相のような議員を苦しい立場に追い込んでいる。
ユーロ圏の団結を強く主張するメルケル首相は不人気で、与党連合はいつ分裂してもおかしくない状況にある。そうしたこともあり、メルケル首相やその他の欧州首脳は本当に実施しなければいけないと思っていることを有権者に伝えるよりも短期的な措置を次々と打ち出し、根本的な対策を後回しにしてきた。(メルケル首相とフランスのニコラ・サルコジ大統領がギリシャのデフォルトを回避するための新方策を発表すると、15日の株式市場はこれを好感して値を上げた)
◇比較的健全な米国
今にして思えば、酷評された不良資産救済プログラム(TARP)や続いて実施されたストレステストのおかげで、米国の銀行は欧州の銀行に比べると健全な状態にある。
「米国の取り組みの方が先を見越していた。2008年と2009年、米国の銀行はわけがわからなくなるほどの株式を発行した。一方の欧州の銀行は、資本構成を改めるチャンスをまったく生かそうとしなかった」とスティーブンソン氏は言う。
実際、欧州の危機はユーロのせいで悪化したという側面もある。欧州の銀行は、ギリシャやポルトガルといった国が発行できた超低金利の国債を購入した。当時はリスクが低いと思われていたソブリン債でわずかでも利回りを稼ごうとしたのだ。スティーブンソン氏によると、銀行は今日までまったく評価損を計上していないという。
去年の12月の時点で、フランスの大手銀行はギリシャ国債で570億ドル弱、スペイン国債で1400億ユーロ、イタリアの社債・公債をすべて合わせて4000億ユーロ弱を保有している、とニコラ・ルコーサン氏が本紙に書いている。
米国の三大銀行の債務総額は米国の国内総生産(GDP)の39%に相当するが、フランスの三大銀行の債務総額は同国のGDPの250%に相当する。
14日、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはフランスの銀行、ソシエテ・ジェネラルとクレディ・アグリコルの長期債格付けを1段階引き下げ、さらに引き下げる可能性があることも示唆した。連邦準備理事会(FRB)を含む5つの中央銀行が協調し、ドル資金の追加貸付を通じて商業銀行に流動性を供給することになると、15日の相場は反発した。
◇再度拡大する金融危機
それでも大きな試練が近々やって来るかもしれない。ギリシャのソブリン債のクレジット・デフォルト・スワップは、デフォルトの可能性が92%であることを示している。スティーブンソン氏は「市場が債務不履行になるとみているのは明らかだ」と述べた。
ギリシャのデフォルトは出血を止めるどころか、さらなる出血を招くことになると予測する同氏は、スペインとイタリアは「大きすぎて潰せない、大きすぎて救済できない」国だと指摘する。
その上、どれだけ多くのデリバティブ契約にユーロ圏のソブリン債や社債が組み込まれているのかはまったくわかっておらず、その影響は世界的に拡大し得るという。
「一度デフォルトが起きれば、欧州の金融危機が米国、カナダ、オーストラリアの金融危機になることは想像に難くない」と同氏は言う。
米国の銀行のようにばかげたリスクを冒すことを避け、本物の銀行家のように行動したおかげで最初の金融危機を免れたカナダでさえ危ないのだ。
スティーブンソン氏は、欧州が来年までに再び景気後退に入り、米国は緩やかな成長でやり過ごせるかもしれないと考えている。だとしたら、新興国市場はどうなるのか。「短期的にはかなりの打撃を受けるだろう。すべての短期資金が消えてなくなるのだから」
これは「唯一の安全な避難先となるであろう」米国ドルにとっては朗報である。しかし同氏は、長期的にはあらゆる紙幣通貨に、特に機能不全に陥っているユーロには弱気で、銀と金には強気である。
同氏は個人的なポートフォリオの60%を占めるキャッシュも選好しており、欧州、米国、カナダ、オーストラリアといった地域や国々のあらゆる銀行をショートにするのも得策だと考えている。
同氏のS&P500指数の目標値は800前後で、これは2008年11月頃のレベルである(2009年3月には700を下回った)。S&Pトロント総合指数は8000まで下がるとみている。
◇救命ボートを準備しろ
筆者はスティーブンソン氏のハルマゲドン的な予測を完全に信じているわけではない。小さな悪材料が長期間に渡って出続け、突然パニックが起こるというパターンもあるだろう。いずれにしても、筆者はこうしたことを懸念して、この晩春に株式の保有高を減らした。
S&P500指数は1100台を下回ることなく、よく持ちこたえているが、一度1100を割ると1020ぐらいまで落ち込み、さらに下げ得る弱気相場に突入する可能性が高い。したがって筆者は、市場が反発した局面で、リスクが大きい資産を売り続け、この危機の成り行きを見守っていくつもりである。
「唯一の驚きは、もっと早くにこうならなかったことだ。圧力が高まればダムは耐え切れなくなる」とスティーブンソン氏は言う。
同氏が言うことが正しければ、救命ボートのロープをほどいて、救命胴衣の準備をするときが来たのかもしれない。ジェームズ・キャメロン監督が『タイタニックII 』を制作することはなかったが、作るとしたら今だろう。同じ船が2度沈むなどということは、市場と映画でしか起こりえないのだから。