皆さん、こんにちは。

千葉県議会議員(船橋市選挙区)の石川りょうです。

 

本日(7月3日)は、千葉県議会令和6年6月定例会における総合企画企業常任委員会に出席し、東葉高速鉄道に関する質疑を行いましたので、その内容をご報告いたします。

 

6月20日に東葉高速鉄道の2023年度(第43期)決算が公表されました。

決算の内容はこちらからご覧いただけます。

 

コロナ前の水準には達していないものの、社会経済活動の回復による輸送人員は前年度比6.7%の増、それによる旅客運輸収入は7.7%増、関連事業による運輸雑収も4.4%増となり、結果として、経常利益は約47億円、当期純利益は約33億円を計上しました。これは14期連続のプラスということになります。そして記念すべきは、東葉高速鉄道株式会社の純資産合計が24億9千6百万円とプラスになり、1997年度決算以来続いていた債務超過が解消されたことです。これはとても喜ばしいことだと思います。しかし、依然として残る2,202億円余りの長期債務と同鉄道が資金ショートに陥る可能性については引き続き大きな課題となっています。

 

昨年11月15日に開催された東葉高速自立支援委員会において、早ければ令和13年度には同鉄道が資金ショートに陥る可能性が示されたことは報道でも大きく取り上げられ、世間に大きなショックを与えました。この時の試算では、金利動向と運輸収入という2つの項目からそれぞれ、前者については低金利ケース、基本ケース、高金利ケース、後者については横ばいケースと上昇ケースとで長期収支推計のローリングを行っています。

長期収支推計のローリングはこちらからご覧いただけます。

 

私がこれを昨年度の決算と突合させてみたところ、運輸収入については、「横ばいケース」に当てはまると考えます。金利動向については、我が国の最新の長期金利は7月2日付では1.095%(10年国債利回り)となっており、高金利ケースに当てはまります。金利に関しては、本年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、イールドカーブコントロールを撤廃、さらには、いつになるかはわかりませんが(7月末ともいわれていますが)、近いうちに追加利上げに踏み切る可能性があるともいわれている状況の中で、我が国でも金利のある世界に向けて動き始めているため、今後上がることはあっても下がることはないと考えています。このように見ていくと、同鉄道の資金ショートの時期は、現時点で推計されている最速の令和13年度となるか、それよりも早くなってしまう可能性すらあるのではないかと私は推測しています。

 

そこで、私からはまず、上記の私の推測と執行部(千葉県庁)との推測が同様であるか否かという点を確認したところ、執行部からは以下のような回答がありました。

 

【執行部の回答①】

令和5年度の長期収支推計のローリング結果との比較では、現時点では、金利は高金利ケース、運輸収入は横ばいケースに近い値で推移しており、今後の金利や物価の動向によっては、同社の経営が悪化することも考えられる。

 

ただちに資金ショートに陥るとは考えていないが、こうした経営環境の変化を踏まえて、国や沿線市などで構成される「東葉高速自立支援委員会」を通じ、今後も新たな条件設定について関係者と検討しながら、同社の長期収支推計のローリングの検証を進めていきたい。

 

 

つまり、執行部の認識も私の認識と同様であることがわかりました。つまり、これから新しい長期収支推計のローリングは行うものの、現時点では、東葉高速鉄道株式会社の経営環境はかなり厳しいということです。

 

そのような状況ではありますが、千葉県がもう20年近く毎年求めている国(国交省)から同鉄道に対する長期債務の元利償還金の負担に対する抜本的な支援(この要望についてはこちらに詳しく記載しています)がまったく期待できない中では、同鉄道による輸送人員の増加、運輸収入や経常利益を増やすための更なる自助努力を図っていかなければなりません。

 

そのヒントになるのが、東葉高速線と同じく千葉県内を走り、建設方式や莫大な長期債務といった抱える課題なども共通している北総鉄道株式会社だと考えます。北総鉄道株式会社も6月20日に2023年度(第52期)の決算を公表しました。

決算の内容はこちらからご覧いただけます。

 

売上高に当たる営業収益は前年比で4.5%の減となってしまったのですが、純利益は6.5%の増でした。注目すべきは輸送人員が1割増えていることで、その結果、旅客運輸収入は0.8%増の105億円だったことです。輸送人員と旅客運輸収入が増えた要因は2年前の運賃値下げにあると考えています。

 

2022年の値下げでは、運賃を全体として15.4%、通学定期にいたっては64.7%と大幅な値下げを行いました。東葉高速鉄道についても運賃値下げが利益を増やす可能性につながるかもしれません。経営がピンチなのに値下げなのかと疑問に思われるかもしれませんが、北総線は値下げによって、これまで運賃が高すぎて北総鉄道を回避してきた沿線住民の利用が増えて増益になったのです。例えば、北総鉄道利用が便利なはずなのに、別の鉄道路線の駅までバスや自転車を使ったり、親に別の駅まで車で送ってもらったりしていた学生が利用するようになっているようです。その結果、通学定期はコロナ禍前より3割も増えているとのことです。運賃が高すぎて回避するという行動は東葉高速鉄道でも多数生じていると推察します。

 

本当は、この隠れ需要を全体的に調査していただきたいところなのですが、調査手法の難しさが予想されるため、今回は昨今の物価高騰の中で家計をまともに直撃している通学定期のみに絞り、通学定期運賃を値下げした場合の影響を数パターン試算して収支を推計してみるべきではないかと質問したところ、執行部からは以下のような主旨の回答がありました。

 

【執行部の回答②】

昨今、金利や物価が上昇しており、資金ショートの可能性もある中において、同社が安定的な運営を維持できることが大前提だが、通学定期運賃の値下げの試算については、同社の経営への影響を慎重に見極めながら、国や沿線市と研究していきたいと考えている。

 

 

通学定期運賃値下げの試算は、国や沿線市と一緒に研究していきたいということで、その結果に注目です。執行部の言う通り、東葉高速鉄道株式会社が安定的な運営を維持できることが大前提ですので、北総鉄道ほどラディカルに引き下げることは難しいかもしれませんが、このくらい値下げすればむしろ乗客が増えて全体の利益は上がるという良い塩梅が見つかれば、東葉高速にとっても、利用者(学生)にとってもWin-Winの関係になると考えますので、自立支援委員会の中で是非ご検討いただきたいと思います。

 

2024年7月3日 千葉県議会議員(船橋市選挙区) 石川りょう

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