皆さん、こんにちは。
船橋市議会議員の石川りょうです。
 
先月のブログでは、鈴木亘氏の「社会保障と財政の危機」をご紹介しましたが、今日は、元日本マイクロソフト社長でいらした成毛眞氏の「2040年の未来予測」をご紹介します。
 
現在、船橋市では2021年から2031年までの道しるべとなる「総合計画」の策定が進んでいます。
しかし、その素案を見ると、10年後の未来のための計画にもかかわらず、未来のテクノロジーの予測がほぼなされていないことにショックを受けました。2030年ともなれば、AI、6G、自動運転、MaaS、遺伝子治療などの世界になっているのかなぁ・・・と漠然とした想像をもっていたのですが、私の頭の中にもより鮮明な未来をイメージしたいと思ってこの本を手に取りました。
 
しかし、メインで頭に入ってきたのは、先週の鈴木亘氏の著作と同じ、年金や社会保障の議論でした。
日本の年金制度について、先週読んだ「社会保障と財政の危機」とほぼ同様のことが書いてあったことに衝撃を受けました。
そして、世の中の識者たちは同様の考えを持っている方が多いのだという思いを一層強くしました。
今日のブログでは、成毛眞氏が考える我が国の年金制度の未来について見てみたいと思います。
 
そもそも年金とは、社会保障の一つです。
社会保障には、他にも医療保険、雇用保険、介護保険、災害補償保険などがあります。
国民からお金を集めて、国がこれらのために使い道を決めてお金を払うことで、国民に最低限の生活水準を保証する。つまり、一般的な保険と同様に、多数の人からお金を集めて、それを困っている人に回して国民の生活を安定させるためのものです。
 
重要なことは、医療も介護もそうですが、年金は基本的には税金ではなく、原則は「保険」として運用されていること。
要するに、原資は保険料によって多くを賄われているということです(現在では年金制度維持のために多額の税金が使われている)。例えば、健康保険は病気にならなかった人のお金で病気になった人を保障する仕組みであるのと同じく、年金は早く亡くなってしまった人の保険料を長生きした人に渡して保障する制度です。病気にかかってしまった時のために健康保険料を支払うように、退職後に長生きした時のために年金という保険料を払うことなのです。
 
公的年金は賦課方式(現役世代から徴収した保険料を高齢者の年金に充てる仕組み)で運営されているため、保険料を支払う人が多く、平均寿命が短かった時代に比べて、保険料を払う人が減り、平均寿命が長くなれば給付額も減る仕組みが本来の姿です。現在の我が国は少子高齢化の時代を迎え、保険料を払う現役世代が減り、平均寿命も長くなっています。制度が作られた当時には想定されていなかったことが起こっていますので、もらえる年金額が減ることはある意味当たり前であり、制度自体の存続も危ぶまれているのだと思います。
 
そもそもの「保険」としての性格の年金制度を考えた場合には、保障を手厚くすることを望むならば保険料は高くなりますし、負担を減らしたければ保障は減るという仕組みになります。負担は減らしたいけど保障を手厚く・・・というのは無理な話なのです。
 
そのような現状を憂いて、若い世代には、「年金はもらえなくなる」という悲観論が唱えられていますし、現に私の周りでもそのように話す人がいます。しかし、「年金はもらえないことはない」というのが成毛氏の結論です。年金がもらえなくなるということは、日本が破綻しているということであり、そうなった場合には、もはや年金の心配をしている場合ではないということです。年金はもらえる。しかし、厳しい額が待っている(もらえる金額が少ない)ということになります。
 
先月の鈴木亘氏の著作に関するブログでご紹介した通り、2019年の年金制度検証(by厚労省)では、ワーストシナリオ(しかしこれが最も現実的)で2052年に年金積立金が枯渇し、所得代替率(もらえる年金が現役世代の男性の平均月収の何%になるか示した数値)は36~38%まで落ち込むという結果が出ています。ちなみに、2019年度の所得代替率は61.7%でした。この半分近くにまで下がるということです。
 
それではどうすればいいのでしょうか?
成毛氏の提唱する方法は、シンプルですが、「長く働いて、年金をもらう時期を遅らせる」というものです。
現行制度では、年金受給を1か月早めるごとに基準額から0.5%減らされます。逆に、70歳まで繰り下げた場合は1か月ごとに0.7%ずつ増える仕組みになっています。つまり、60歳から受給するか、70歳から受給するかで倍も違ってくるのです。国は、財政健全化のために、受給開始年齢の上限を75歳に上げる方向です。75歳まで働いてから年金受給を始めれば、所得代替率は100%を超えることも理屈では可能となるようです。経済成長率がずっと横ばいだと仮定すると、現在30歳の人は68歳4か月、40歳の人(私)なら67歳2か月まで働いて保険料を納め、受給開始年齢を遅らせれば、今の65歳で年金受給が始まる高齢者と同じ水準の年金をもらうことができるようです。
 
私自身は生涯現役で働きたいと思っていますので、成毛氏の考える年金受給方法でもいいのですが、自分の体に将来何が起きるかわからず不安がないと言えば噓になります。
 
現在の年金制度ができた1950年頃は、65歳以上を支える現役世代は12.1人もいましたが、2040年には1.5人になります。高齢者一人を、かつては胴上げできていたのが、これからは肩車しかできなくなるようなイメージです。日本がもっと豊かになって現役世代の所得が伸び、1.2人でも1人の高齢者を支えられるくらいになれば良いですが、2030年以降の我が国の経済成長率はマイナスか横ばいという予測が支配的です。年金制度に税金をもっと投入できれば良いですが、我が国の財政も火の車。借金地獄でそれどころではありません。年金制度が、このまま100年先まで安心だなんてとても言えない状況であることは一目瞭然だと思います。
 
したがって、鈴木亘氏が言うように、①ただちに年金制度の財政検証を行って現実を数字やデータでしっかりと把握し、②2004年当初の年金改革計画通り(またはそれ以上)に年金額のカットを断行し、③支給開始年齢をさらに引き上げなければならないのだと思います。
 
非常に苦しいですが、年金制度を続けるためには痛みを伴う改革が必要だと思います。政治家は、このような現実を逃げずに正しく把握し、国民に説明責任を果たし、改革を実施する。そのような姿勢が求められているのではないでしょうか。
 
2021年4月3日 船橋市議会議員 石川りょう