第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表のイチロー外野手(35)が2日、神宮球場でのチーム練習に早出で参加。フリー打撃では中堅から逆方向を意識した打球を打ち続けるなど、原点回帰で不振脱出へなりふり構わぬ姿勢を見せた。前日までの実戦6試合ではよもやの打率・130。本番が目前に迫る中で、天才打者は輝きを取り戻そうと必死だった。
気温9・2度。冷たい風で体感温度も一気に下がる中、イチローが神宮に姿を現した。チーム練習の開始予定より50分も早い午後1時10分。福留や青木、川崎、片岡らと自ら志願しての早出練習をスタートさせた。
「マッサージできる人いる?」。体のケアを意識しつつ、まずストレッチ、ダッシュを行うと、感触を確かめるようにティー打撃で63スイング。前日までの試合前練習ではティー打撃を行わず、いきなりフリー打撃から汗を流すケースが多かった。1から、基本から。そして全体練習でのフリー打撃では決してフルスイングはせず、中堅から逆方向により多く、慎重にボールをはじき返した。原監督が真後ろで見守る中、計62スイングで柵越えはわずかに2本。2月23日の自主トレでは「打ちっ放し」と称し、150スイングで柵越え51発を叩き込んだ光景とは対照的だった。
左へ。イチローの打撃技術をもってすれば“十八番”の打球だが、東京ラウンド開幕を3日後に控えた中であえて取り組んだところに意味がある。現役時代に2度、首位打者に輝いた篠塚打撃コーチは「宮崎合宿からずっと引っ張る練習をしていた。ここにきて自分の状態を見ながら、左方向へという形で打っていたのではないか」と解説する。
イチローはシーズン中でも、中堅から左方向へ打つ練習はほとんど行わない。体全体を使って強く打つ。全方向への巧打が持ち味だが、基本はあくまで「打撃は引っ張らないと」。例年のキャンプでも「引っ張る打撃を身につける」をテーマに取り組んでいる。しかし不振に陥ると、どんな打者でも結果が欲しいばかりに体が開き、自然と前に突っ込みがちになる。すると打球は引っ掛かり二塁方向へのゴロに。重要なのは体重を後ろに残し、ボールを引きつけた上で確実にミートすること。実戦6試合で23打数3安打ともがき、前日に「良くない結果の時はややこしくしない方がいい」と話していたが、禁を破って練習を自らに課したのは懸命な姿勢の表れだった。
「ほんの少しのきっかけでガラッと変わる。(スタメンを外すなど)代えることはもちろんない」と篠塚コーチ。本番では前日の1番ではなく、3番としての起用が濃厚だ。イチロー本人は他のナインより先に、コメントを残すことなく球場を後にした。シンプルに。そしてなりふり構わず結果だけを求めていく。