前の記事の続き。

もともとは一曲ずつ、サラッと書いていくつもりが、書き出したら止まらなくなったので二部になったのです。

このアルバムでこれだと、この後のアルバムが思いやられるのですが…。



『MOONRIDERS 『Amateur Academy 』(パート1)』一番最後に手に入れたアルバム。東京以外で置いてるところを見たことがない。いま持っているものも、CD BOXのものをわざわざ買って揃えたものだし… (先に書いて…リンクameblo.jp



オープニングナンバーの「Y.B.J.(Young Blood Jack)は、開放的なロックンロールナンバー。


作曲は鈴木博文さん、鈴木慶一さん、岡田徹さんの三人名義、作詞は鈴木博文さん。


冷たく硬派なのに閉塞感がないのがこのアルバムの不思議なところで、だからこそ気持ちが悪いというか、居心地がたいこの感じ。


いや、居心地悪いのに思い切りがいいのか、振り切った結果の解放感と言ったところか。


この曲の主人公、Jackよろしく。


ちなみに、このあと “彼” はもう一回出てくる。



二曲目の「30」は、丸出しのドゥーバップ。


こんなに真面目にドゥーバップやっているアーティスト、他にいるのだろうか。


楽曲自体は楽しいポップチューンだけど、歌詞の世界観はどこか焦燥感に駆られているのが、MOONRIDERS


ちなみに、演奏時間と詩の世界観の時間は、同じ時間で進んでいたりする


芸が細かい、作詞作曲ともに鈴木博文さんの作品。



そして、「G.o.a.P.(急いでピクニックに行こう)」は、MOONRIDERS お得意のお耽美ナンバー。


作曲は岡田徹さん、作詞は鈴木慶一さん。


いま書きながら思うのだけれど、ロックンロールというよりも、もっと大きな括りのポップチューンという感触がこのアルバムは大きく占められている気がする。


ブラックミュージックを意識した作りからなのか、キチンと “跳ねてる” ポップチューン。


MOONRIDERS のなかでも、かなり上位で好きな楽曲



つづく「BTOF(森へ帰ろう〜絶頂のコツ)もお耽美ナンバー。


作詞は前曲に続いて鈴木慶一さん、作曲は鈴木博文さんという兄弟名義。


めずらしい組み合わせのような気もするけど、どうだろう。


楽曲自体は牧歌的でパッパラパーって感じなのだけれど、一抹の不穏感は一体なんだろうとも思う。


…聴きながら気づいたのだけれど、“森へ帰る” ってフレーズ、意味深だよなあ。


からの、「S.E.X.(個人調査)」。


作詞作曲ともに、橿渕哲郎さん。


なんというか、橿渕さんの楽曲は流石のマイペースさというべきか、アレンジに負けないメロディーラインのロマンチズムがあるのが面白い


むしろ、この振れ幅こそがギャップとして機能していて、MOONRIDERS のつかみどころのなさを演出しているのではないかとさえ思う。


…とは言っても、耽美は耽美なんですけどね。


「G.o.a.P」や「B TO F」が、物語的なのに対し、この楽曲はかなり直截的というか、生々しい。




ここまでが、A面。



M・I・Jはシングルカットされた楽曲。


作曲は岡田徹さん、作詞は Diane Silverthorn。


さて、シングルカットされているのだけれどこの楽曲、キャッチーかと言われればそうでもなくポップチューンかと言われればそうでもなく表題通り “Made In Japan” かと言われればそもそも日本語詩ですらなく歌モノでもない

「え、じゃあ、何よ、この楽曲?」と言われると






うーん?






一番近いのはヒップホップ。


でも、この “限りなくヒップホップに近いなにか としか言いようがないこれは本当になんなのだろう。


そして、こんなこれは一体なんなんだ⁉︎と言った楽曲をシングルカットしたのも凄い。




いや、カッコいいんですけどね。




カッコいいんだけど!




…って言う。








ま、ここからはボクの感想みたいなものなのだけれど。


この楽曲で、ブラックミュージックというか洋楽の要素(?)を消化しきったのかなぁと思うのです。


この、限りなく “洋楽” に聴こえる何か。


それでいて、どこか “邦楽” っぽさが残る何か。


ただ、そのどちらでもない、“無国籍感”

(無国籍感は、ボクの大好物)


この楽曲の中で、何かが終わって、何かが始まったのではないかと思うのです。


だから、「M・I・J」というタイトルを堂々とつけたと考えれば、なんとなく腑に落ちるんですよね。


日本人でも洋楽に負けないくらいヒップな楽曲をゼロから作れるようになったんだぞ!みたいな。



…昨今のシティポップブームに乗っかって、この楽曲も再発見されないかなぁ。えー(遠い目)








からの「NO.OH」は、白井さんお得意の江戸前ロック。


作詞作曲ともに、白井良明さん。


この楽曲は前作収録の「トッピンクレン子」と地続きにあると言われて納得できる楽曲。


むしろこの楽曲がないと、MOONRIDERS としての連続性がわからない。


ただ、そのぶん前作との違いがわかる作品であることも確かで、お祭り感がなくなり、ソリッドで硬派な印象が強くなったのがよくわかる



D / P(ダム / パール)」は、作曲白井良明さん鈴木博文さん、作詞は橿渕哲郎さんの作品。


…これもあまり見ない組み合わせだなぁ。


サビで解放感を感じる楽曲。


ちなみにこのアルバム、全体的にローマ字表記なのだけれど、これもブラックミュージックへの傾倒の影響。



最後の二曲はちょっとしたメドレー。


BLDG(ジャックはビルを見つめて)は、コーラスが印象的なゴスペル風の楽曲。


作詞作曲ともに鈴木慶一さんで、編曲も鈴木慶一さん単独名義。


英語詩のバージョンである「STARーSTRUCK」もあって、そちらの方がこの楽曲のゴスペル感を味わえる。


聴けば聴くほど、好きになっていくスルメ曲。


ちなみに、ジャックは一曲目のジャック。


意味がわかると、少し寒気がする詩



そしてこの楽曲から続くのが「B.B.L.B.(ベイビーボーイ、レディ・ボーイ)」。


作曲は鈴木慶一さんと岡田徹さん、作詞は鈴木慶一さん。




“ハッピネスは辞書にものってるとおりで

しあわせなんて人それぞれ”




という詩に最終的にこのアルバムは集約されている気がする。


側から見ると、「常識的でない」みたいなところをこのアルバムはついていくのだけれど、それはあなたがそう思っているからで、「常識外のことでしか幸せを感じれない人もいるんですよ」みたいなことをサラッと言っているのだと思うのです。


大衆性への反逆ともいうべきか。

(「M・I・J」でやたらとテレビについて言及するのもなんか意味深に思えてくるな。いや、そもそもこの楽曲の原型はテレビCMなのだけれど。)


ただこのアルバム、売れようとして外部プロデューサーを招いたのではなかったかとか、海外の音楽シーンを取り入れることで大衆性を獲得しようとしたのではなかったかとか、他にもいろいろなことが頭をよぎるのだけれど、最終的には、「バンドが納得のいくものを作る」という “幸せ” に行き着いたのかなぁと思う。




というわけで、このアルバムで見事オリジナリティを発見した MOONRIDERS は次のアルバムでさらに自身の道を突き進むことになる




…ようやく、ボクが一番書きたいアルバムに追いつくな。ニコニコ