昨日も、このブログで書きましたが、ゼネコンは大規模修繕工事ができません。マンション管理組合の大規模修繕工事では、居住者からはさまざまな質問や要求、ときにはクレームが寄せられます。「工事中にエアコンは使えるのか?」「明日はベランダに洗濯物を干してもいいのか?」「ベランダに置いている植木鉢はどうしたらいいのか?」「自転車置き場が工事中で自転車が置けないじゃないか」「子どもの洋服にペンキがついてしまったが、どうしてくれるのか」などなど、長い工事期間のなかで、居住者にはさまざまな不安や不満が募ってくるものです。その際に必要なのは、技術やエンジニアリングよりも、そうした居住者の不安や不満を事前に察知するいわゆる「空気を読む力」や、不安や不満が募る前に、居住者たちに工事についての広報や案内をする「説明力」といった能力なのです。
こうした住民対応は、実は世界に誇る技術を有するゼネコンが最も苦手とする分野だといえます。もちろん理系のエンジニアのすべてが渉外能力に劣るというわけではありませんが、新築畑のゼネコンにはそういうことが得意だという人材は比較的少ないといえます。
つまり、同じ建設業でも、ゼネコンが手掛けるマンションの新築工事と、塗装と防水が中心の大規模修繕工事とでは、まったくの別業態だと考えるべきなのです。内科と皮膚科、あるいは眼科と整形外科を比べるようなもので、医師という職業は同じでも、その診察内容や治療方法は診療科によってまったく異なります。ひとりですべての診療科の診療ができて、外科手術もできて、というオールマイティな医師がいないように、建設業界でも、マンションの新築工事の業務に加えて、大規模修繕工事における住民対応までそつなくこなせるような担当者はまず見当たりません。
したがって、ゼネコンが大規模修繕工事を受注したとしても、実際には改修専業者に一括で仕事を流します。なかには、改修専業者に該当する工事会社を子会社として持っているゼネコンもありますが、どちらにしても中間マージンを抜いて、専門の子会社、あるいは改修専業者に一括発注、つまり“丸投げ”をするのです。
しかし、丸投げされた下請け業者は、元請け業者であるゼネコンのユニフォームを着て、ゼネコンの名刺を持ち、現場ではゼネコンの社員を装いながら作業をしているケースがほとんどですので、表立ってはわかりません。彼らをつかまえて話を聞いてみると、「実は○×塗装の社員なんです」などと下請け業者の人間であることを教えてくれたりします。
この“丸投げ体質”はゼネコンだけのものではなく、管理会社においても同様で、大規模修繕工事を元請けとして受注したとしても、それを自社の系列会社や改修専業者に丸投げするというスタイルは、ゼネコンとなんら変わりはありません。そして管理組合には、ゼネコンや管理会社が抜いていく中間マージンの部分も乗せられた工事費の請求がくるわけです。