今朝のコラムより。
なかなかいい記事だったのでアップします。
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薬に効能と副作用があるように世の中なべて表と裏がある。自由な競争によって市場が殷賑(いんしん)を極めれば、それはそれで結構なのだが、競争に敗れた地元勢は見る影もなくなる。6年間、38場所も日本出身力士が優勝できていない大相撲は副作用ばかりが目立つ例だろう。
ロンドンの金融街シティの繁栄と英国勢の没落。そんな経済現象をテニスの聖地での英国選手の不振になぞらえ、世が「ウィンブルドン現象」と呼び始めて20年ほどもたとうか。ときに「ウィンブルドン効果」とも称する。繁栄に目を向ければ確かに効果でも、どのみち英選手に向けられているのは揶揄(やゆ)のまなざしである。
アンディ・マリー選手が英国人としては77年ぶりにウィンブルドンの男子シングルスを制した。去年は決勝で敗れ、「もう少しなんだけど(I’m getting closer)」ときれぎれに語った涙顔をテニス好きなら覚えているかもしれない。「もう少し」にことし手が届いたのはなぜか。まず本人の精進をたたえねばならない。
もう一つ、テレビ画面からはスタンドの興奮がコートを走り回るマリー選手の背を押しているのが伝わってきた。地元の大声援にも表裏があって、選手にとってはエンジンでもあるが、往々にしてブレーキにもな る。それを糧にして勝ちきった姿に敬意を表し、「ウィンブルドン現象」の一語は私製の辞書から削除しよう。