マエストロ:その音楽と愛と | Sound@Cinema

Sound@Cinema

))) Cinema Sound Works シャチョーの日々 (((
映画の音響技術評価などをプロ目線で、車系もたまにw
http://www.csw.jp/

 

 

レナード・バーンスタイン、20世紀の代表的な

指揮者であり作曲家で知らぬ人は余り居ないと

思われます。

 

表題の作品は伝記的作品として、監督兼主演で

ブラッドリー・クーパーがまとめ上げたのですが

色々と政治的なメッセージも多く発した部分は

割愛し、夫婦の愛憎劇中心に構成されています。

 

元々はスコセッシが監督する予定だったのが

スピルバーグに代わり、最終的には若いクーパー

に託され、巨匠二人は製作に回りました。

 

 

 

 

なんと全編フィルム撮影です。

 

そして、若かりし頃、妻フェリシア存命期、

妻が亡くなった後と主に3つの骨格を用意し、

前半期はモノクロにスタンダードフレーム、

時間が流れカラー化、最後はビスタサイズに

画角が変更されております。

 

特筆すべきはモノクロの部分で、古き良き

ハリウッドスタイルを継承し、ノリノリで

薔薇色の日々を大絵巻物で描いています。

 

カラー化後は、”老い”もメイクで表現して

おりますが、その化けっぷりがリアル過ぎ

で凄いな・・・と思っていたらば、やはり

カズ・ヒロさんのお仕事でした。見事です!!

 

 

 

 

夫婦の話しが柱な上に、バーンスタインの

男色傾向な描写も取り込まれ、奔放過ぎる

彼の行動から妻の呵責を喰らう場面も多く

見ている方も苦しくなるほどのキャリー・

マリガンの圧は見事としか言いようがありません。

 

物語的なバランスはさておいての話しですが・・・

 

最大の見所は、イーリー大聖堂における

”マーラーの復活、最終章”の長回しに場面。

オリジナルの指揮場面を完コピし、臨んだ

との事ですが、やや誇張かな?それでも凄い!

 

と言うか、常時バーンスタインの作った

楽曲は劇伴として使われていましたが、音楽家

の作品としての要素がここで爆発します。

 

 

 

 

これがオリジナル。

 

 

 

 

で、これが本編。

 

 

 

 

物語の佳境はフェリシアの死によって、

ピークを迎え、彼女の死後2年で後を追った

彼の余生のターンは同様に短い物でした。

 

作品はあくまで、家族目線からのバーンスタイン

夫婦が基調となっており、社会的に外から

見えた彼の描写は余り多くありません。

 

しかしこれだけ有名な人の伝記的な内容と

なると、ダイナミズムに欠けた様な気がし、

要所要所は確かに見事なんですが、多くの

人が触れた彼の功績や遺した作品などなど、、、

ちょっとそこが足りねぇなって気がします。

 

しかし、フィルム撮影を敢行した物は

テンポや構図がこうも違う物か?と

デジタル収録ばかりの中で久々に王道を

見たような気がしました。

 

そして多くの映画ファンが感じたように

”TAR"が常時頭をよぎりました(笑)