この衝撃的なポスターと、禍々しい予告編の
内容から興味津々で観たくなって行ってきました。
本作の言語には舞台となる国や場所を特定されないよう、
インタースラーヴィクという人工言語が使われていますが、
一部の俳優は劇中で完全に喋れなかった様で、
アフレコで矯正されていたのはご愛敬。
そして内容は全然御愛嬌では御座いません。
第二次世界大戦中にホロコーストから逃れ、
疎開していた少年が、滞在先の叔母の死を
きっかけに家ごと火事で焼失してしまい、
家に戻る為に過酷な一人旅へと向かいます。
その道中、まさに人間の業に翻弄され続けます。
”退出者続出!”と宣伝で煽ってましたが、そこそこ
ハードな内容には違いはありません。しかし、一線
を越える事は無い映像の中での過酷な表現の範疇
には私には見えました。
それでも痛々しいのは確かです。
映画の構成はシーケンスに別れており、もっと重々しい
のかと思ってましたが、かなり軽快なカット繋ぎには
肩透かしを食らいました。ポンッポンッとテンポ良く
様々な人と出会って行くのですが、なにせ3時間尺
なので次から次へと妙な奴らが出てきます。
大変なテーマを扱っているのは間違い無いんですが、
どうにもこうにも逆に展開が早過ぎて、それが長尺の
中に目一杯詰め込まれている感は否めず、違う意味
でしんどくなってきました。
う~~ん、、、最早心の荒んだ汚いおじいさんが
観るものでは無かったかもしれません。
ちょっと辛かったです。
”退出者続出”現象は確かに目の当たりにはしましたが、
長尺が故のトイレへ途中退出の人が多いようでした(笑)
そんな内容でしたが、画と音は美しかったです。
モノクロ作品との触れ込みでしたが、脱色効果の様で
場合によってはギリギリ色を感じさせる所まで、色が
見えるシーンもありました。音の荒漠とした表現は得に
よろしくて、東欧の厳しい自然感を風を中心に丁寧に
練り込んであり、少年の心の声の代弁の様な趣すら
漂う出色の出来栄えで、これには関心しました。
マスターミックスはATMOSの様で、出来たらこれを
聞いてみたいと素直に思いました。