2人のローマ教皇 | Sound@Cinema

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さてと、年内のNETFLIXムービー最後の大物です。

 

アンソニー・ホプキンスとジョナサン・サプライスの二人が

ベネディクト16世(元教皇)とホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(現教皇)

を演じ、ベネディクトの辞任に際し、考え方の違うホルヘを

教皇職へ就くように対話を続ける話です。

 

辞任については、色々な背景があったのでここでは

割愛します。しかし一番の注目点はこの二人の雰囲気

が本物に非常に良く似ている点です。

 

 

 

 

これは非常にリアリティを誘発するので、フィクションで

あろう内容なのですが、信憑性迄作り上げるに足りる

キャスティングである事は誰も認めざる負えません。

 

おまけのこのベテラン俳優の芝居の上手い事上手い事。

感服の至りで御座います。

 

特に前半にて、ホルヘがベネディクトに謁見し自身が

辞職しようと願いを認めた手紙を渡す下りにおいて

互いの考えの違いをぶつけ合いつつも、非常に高い

レベルで尊重しあい、認め合っていく芝居のやり取り

は軽く高ぶりつつも抑制の効いたベテラン俳優の職人芸。

 

ここは大変な見どころです。

 

久方ぶりに本当に凄い物を観た思いでした。

 

日本においてカトリックそのものが余り近い存在では

無いので、私含めて現職のローマ教皇が誰なのか?

そしてホルヘの出身国のアルゼンチンにおいて政治

腐敗により国が混迷を極めた時代など知る由もありません。

 

それら含めてコメディタッチという括りにし、非常に

判り易く歴史も紐解ける様な造りに終始し、万人に

向けて構成したのは大変懸命な処置だと思います。

 

まずは知って貰わねばどうしようも無い事を丁寧に

織り込んだ上で、二人の教皇の人間性を対立から

和解、深い繋がりになるといった普遍的な流れに

置き、誰でも理解し易い流れにしてあるのでとても

好感の持てる良質なドラマに昇華しております。

 

華を添えるように多彩の音楽が背景を彩り、割と

攻め込んで状況理解を促すような効果音の造り

も好感が持てます。編集も小気味よく刈り込んで

おり良質なテンポをもたらしております。

 

南米の監督が撮るとこうなるのか!?と良い勉強

と刺激になりました。良作ですので是非ご覧下さい。