キャロル・オデッセイ | Sound@Cinema

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さぁ、話題作が目白押しでごわす。

天気も微妙なので今日は映画館に籠るぞ!!


キャロル


まずは”キャロル”

二人の芝居達者の女優の演技が話題になっておりますが、
私的に着目していたのは、スーパー16mmでの撮影の画質。

トータルで暗い印象と、暗部のノイズが気になったけど
味って言えば味の世界かもしれない。しかし最早何かの
特殊効果の様な印象もしないでも無い。というのも物語
のトーンと合っているからだ。

50年代という時代設定において、同性愛的な感情は世間的
に異常とみなされ迫害寸での状況でも、抑えきれない衝動
を非常に微妙な間合いとトーンで演じる二人の女優の心象
に、この16mmの風合いがマッチしている。

実に朧げで16mmっぽいブワブワした不安定さがこの心象に
ドンピシャ、暗部のゾワゾワノイズも事の成り行きの不透明
さを象徴するかの様にも見える。

音的には気分の高揚するシーンでは有名な音楽を多用し、
一歩間違うと難解に転げ落ちるところを上手にフォロー。

古典的な”ス(無音)”の効用もキワキワの心理状態の
二人の表現にかなり貢献している。

物語後半1/3のケイトとルーニーは見事としか言いようがない。

ケイト・ブランシェットはあの強い美貌と同様に強い女を
演じつつも、裏返しで脆い部分を見せる芝居をさせると
右に出る物が居ない程上手い。しかし”ブルージャスミン”
でもっと強烈な役柄を十分に堪能させて貰っているので、
”キャロル”はそこにまで至っていない。ここは演出家の
成せる技なので、ウッディ・アレンに軍配が上がる。

兎に角、今作は1950年代という時代設定が肝である。
こんな時代の同性愛者の不遇は我々は知らない。

しかし”人を愛す”という美しい所業で有る事は間違いなし。


オデッセイ


そして”オデッセイ”2D版を観た。

これは本当にリドリーが撮ったのかと、まず錯覚する。
総体的にまったくリドリー・スコットのトーンに見えない?

兎に角、明る過ぎる位ポジティブな映画に仕上がっているので、
テルマ&ルイーズを彷彿とさせると言えばそうかもしれないが、
あながちエイリアン臭に囚われている俺もいけないのかも?

しかしこんなにも明るい作風で、中国よいしょしちゃって
大量動員を見込んで稼ぎに行ってるのが透けて透けて
仕方が無いのも気にくわないが、原作には忠実な様で
最初からNASAが中国の支援を受ける設定の様だ。
なので、そこを見越し金に成ると踏んで作ったのかな?

おそらく科学的にはかなり検証して作られており、仮説
含めて本当の事が多そうだが、マット・デイモン演ずる
マーク・ワトニー博士が余りにも精神的にタフで、これが
ちょっと信じられないぐらい凄い。希望を持って生きる
様に最後には説く場面はあるが、どうしてもここがネック。

1800円出して観る程立派な映画には仕上がっているけど、
私的には”ゼログラビティ”の方に軍配が上がる。
やはり対比で人の弱さを露見させた方がリアリティは
上がり、物語には感情移入し易いと思う。

このままコールドスリープに入って”インターステラー
に続く”にすれば程無く繋がるんじゃないかと・・・(爆)

ちなみに今作にはルーニー・マーラのお姉ちゃん
ケイト・マーラが出演ている。姉妹共々美しく大変結構。

エンドの字幕にDOLBY ATMOSのロゴがあった。

せめてATMOSで上映して欲しいよなぁ、、、