アガサ・クリスティー原作。1978年にもジョン・ギラーミン監督で映画化されている。2017年の「オリエント急行殺人事件」の続編という位置づけで、監督と主演は同様にケネス・ブラナーが務める。
舞台は1937年のロンドン。あるナイトクラブで大富豪の女性リネット(ガル・ガドット)はサイモン・ドイル(アーミー・ハマー)と出会い、結婚する。新婚旅行先はエジプト。だが、サイモンにはジャッキー(エマ・マッキー)という婚約者がいたため結果的に略奪婚となってしまった。そのジャッキーはエジプトまでやって来て二人を付け回すのだった。
そしてナイル川をクルーズする船上で殺人事件が起きる。名探偵ポアロの推理はいかに?
前作の「オリエント急行」の方が楽しめた。あれが面白かったので、本作への期待が大きかったのだが、やや裏切られた感じだ。
本編に入る前に、エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)の過去が描かれる。第一次大戦に従軍していた時のエピソードである。トレードマークとなっている口髭の由来もわかる。
全体的な構成にやや難があると思った。冒頭のポアロの過去はまあいいとして、その後のナイトクラブのシーンが妙に長い。ま、これも伏線と思えばいいのかもしれないが・・
舞台がエジプトになってからも、話の進みがまだるっこしい感じ。ランニングタイムは2時間7分と普通なのだが、長く感じるのはそのためか?
船上で殺人事件が発生し、ポアロが犯人を言い当てるまでは、1時間くらいではないかと思う。それ以外の部分を膨らませて、肝心の推理部分を端折っている感じなので、バランスが悪いのだ。ポアロの舌鋒の鋭さよりも慌ただしさが気になってしまった。
金が掛かっていることは間違いなく、美術関係は見事。あのクルーズ船は何と実物大のセットを製作したというから大したものだ。
あとこれは「オリエント急行~」の時にも感じたことだが、ケネス・ブラナーが監督と主演を兼ねているので、必要以上にポアロをかっこよく描き過ぎているのが気になる。クリスティーの原作におけるポアロは風采の上がらない小男なので、この点で違和感がある。