監督、脚本 三木 聡。
「ゴジラ」等の怪獣映画はたくさんあるが、その巨大な死体の後始末はどうしているのか?という着眼点から出発したコメディ。予告編はかなり前からやっていて、なかなかの意欲作に感じられたので、僕も楽しみにしていた。
本作はその出来の酷さから、SNS上で大いに話題になっている。今のところヒットしているらしい。話題性という点では成功しているのだろう。でも作品としては本当に駄作である。自分の中では、早くも2022年のワースト作品が決定した感じである。
破壊の限りを尽くした大怪獣は謎の光に包まれて死んだ。政府直轄の特殊部隊「特務隊」に所属する帯刀アラタ(山田涼介)はその死体処理の責任者となる・・
話はアラタとアラタの元恋人で環境大臣秘書の雨音ユキノ(土屋太鳳)、その夫で総理大臣(西田敏行)の秘書官の雨音正彦(濱田岳)を中心に進行する。政府の中枢部に所属する人物からの視点という点では「シン・ゴジラ」に似ている。総理以下の閣僚がドタバタを繰り広げるのだが、下品な下ネタのオンパレード。単に下品なだけで笑えないネタばかりなので、劇場内は終始白けた雰囲気に包まれた。
90分もあれば十分完結する話を115分に引き伸ばしているので、特に後半はだらける。ダムを爆破してその水流で死体を押し流そうと試みるのだが、そのエピソードはそのまま無くてもいい感じだ。
予告編からは映像的な凄さも期待していたのだが、その期待も完全裏切られた。
そしてラストの締め括り方も、もう酷いの一言。
けれども僕が本作をダメだと思う理由は、笑えないギャグやつまらないストーリーなどではない。
本作は、松竹と東映による初の共同製作作品である。ご存じのように、「ゴジラ」は東宝。その「ゴジラ」東宝に対する2社の敵意と嫉妬が終始感じられる。「シン・ゴジラ」のヒットや名声が羨ましいのはわかるけど、こんな形で出ると余計に情けなくてみっともない。こんなことだから松竹と東映は常に東宝の後塵を拝するのだ。
さらに本作は、僕のような怪獣特撮映画をこよなく愛する者に言わせると、「怪獣映画に対する冒瀆」である。別に内容はコメディでもなんでもいいのだ、そこに怪獣に対するする愛があるのであれば。だが、本作には怪獣及び怪獣映画に対するリスペクトなどは毛頭無くて、逆にその手の映画を揶揄し茶化し馬鹿にしている。その点が許せないのである。
だからこんな映画をわざわざ映画館に観に行って興行収入に貢献するのはやめよう。TVで十分である。