フランク・ハーバートが1965年に発表した古典的SF小説の名作『デューン』の映画化作品。
1970年代にはアレハンドロ・ホドロフスキーが映画化を試みるが果たせず。また1984年にはデビッド・リンチ監督で映画化されたものの、この壮大な世界を描き切れず、批評的にも興行的にも失敗に終わる。
今回は「ブレードランナー2049」他のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による。前後編の二部作で、今回は前編にあたる。それでもランニングタイムは155分という長さ。確かにこの壮大な世界を描くには5~6時間は必要だろう。
人類が宇宙帝国を築いた西暦1万年の未来。皇帝の命により抗老化作用等のある秘薬「メランジ」を産出する砂の惑星DUNEを統治することになったレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティモシー・シャラメ)と共にDUNEに乗り込む。しかし、メランジの採掘権を持つ宿敵ハルコンネン家と皇帝が企む陰謀により、アトレイデス公爵は殺害されてしまう。母と共に逃げ延びたポールは原住民フレメンの中に身を隠し、やがて帝国に対して革命を決意する。
結論から言うと今回の映画化は大成功。充分に見応えのある作品に仕上がっている。原作の「DUNE」は数多くのSF映画に影響を与えてきた。最も影響を受けたのはスターウォーズだろう。最初のスターウォーズ(エピソードⅣ)は砂漠の惑星タトゥーインから始まるが、はっきり言ってDUNEそのままだし、ジャワが廃品回収に使うサンドクローラーもDUNEのメランジ採集マシンに酷似している。なので、本作は「もう一つのスターウォーズ」だという解釈も成り立つのである。スターウォーズがディズニーの製作になって堕落してしまった今、この「DUNE」にかつてのSWの面影を求めるオールドファンも多いことだろう。
脚本はよく考えられており、155分の長さも気にならない。登場人物は当然多いのだが、比較的よく描き分けられている。西暦1万年の世界は高度なテクノロジーは前面に出ずに、精神世界が重んじられている。そのどこか中世ヨーロッパのようなダークで落ち着いた世界観が魅力である。ポールの母は正式の王女ではなく側室なのだが、特殊なスピリチュアルパワーを有する種族の出身。巫女のようなものだ。スターウォーズのフォースのような力を使う。ポールもまたその能力を修行中であるという設定である。
映像は特に文句をつける部分は無い。砂漠に棲む全長数百メートルに達する巨大な虫サンドワームも含めビジュアルも迫力十分である。また、この映像に花を添えるのがハンス・ジマーによる音楽。
今回、通常のシアターで鑑賞したのだが、その点は非常に後悔している。この映像と音を堪能するには絶対にIMAXシアターで鑑賞すべきだろう。