オススメ作品(※ネタバレなし)
アメリカで多発する未成年者による学校での銃乱射事件を題材に、その加害者の両親と被害者の両親が事件のこと子供のことお互いのことなどをひたすらに対峙して会話していくという、ただそれだけといえばそれだけの映画。
重いです…。
でも考えてしまう。考えさせられてしまいます。
『MASS』
[邦題:対峙]
(2023)
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■『対峙』あらすじ
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愛する者よ、
私たちはどうすれば良かったのか――。
アメリカの高校で、生徒による銃乱射事件が勃発。
多くの同級生が殺され、犯人の少年も校内で自ら命を絶った。
それから6年、いまだ息子の死を受け入れられないジェイとゲイルの夫妻は、事件の背景にどういう真実があったのか、何か予兆があったのではないかという思いを募らせていた。
夫妻は、セラピストの勧めで、加害者の両親と会って話をする機会を得る。
場所は教会の奥の小さな個室、立会人は無し。
「お元気ですか?」と、古い知り合い同士のような挨拶をぎこちなく交わす 4人。
そして遂に、ゲイルの「息子さんについて何もかも話してください」という言葉を合図に、誰も結末が予測できない対話が幕を開ける──
(映画『対峙』公式サイトより)
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■全体評
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観ている間、ずっと「早く終わってくれ…」と願っていました。
願わずにはいられませんでした。
それだけ緊張感や重い空気が最後の最後まで続く映画です。
実際自分がこの状況に直面したら───この登場人物の1人になったとしたら、この対峙=対話がどんなものになると思いますか?
………。
おそらく今脳裏に浮かんだ光景や言葉・空気がこの映画の中に余す所なく表現されてると思います。
映画は会場のセッティングから始まりますが、何をどこまで用意するべきかというところから観客は否応なく居心地の悪い緊張感に晒されます。
そしていざ始まると、やはり努めて雑談をしようとする人、黙る人、本音が漏れている表情をする人、建前をそれっぽく話す人、など四者四様の態度が見え隠れし、ぎこちないスタートとなります。
空気の読み合い───というと言葉がアレですが、場の空気や他者を慮る大人の振る舞いによる会話劇は、観客からするとなんとも居心地が悪く、ずっと劇場の椅子でソワソワとお尻の位置を何度も変えてしまいました。
当事者の周りって辛いんですよね。
見方によっては当事者より辛い場合もあるんだと思います。
今回は当事者が子供で、見方によっては「当事者以外」だけど最も近い人間、そして世間からすると「当事者」と捉えられる「親」が主要人物です。
二児の親としては観ながら「育てる」ことの怖さや責任もずっと感じながら観ていました。
この映画を観ると、自分の大切な人や周りの人がそんな辛い状況にならないようにという気持ちが強くなります。
そういった気持ちが犯罪の抑止力になることもあると思います。
この映画は確実にその一助になってると思います。
映画的なカタルシスがあるようで、分かりやすい映画にあるようなキレイな終わり方はしません。
それでも。
それでもどこか浄化された気持ちと一抹のモヤモヤを抱えながら劇場を後にする。
そんな作品でした。
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■予告編
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