【マイ・インターン】 | シネフィル倶楽部

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洋邦ジャンル問わず最新作から過去の名作まで色んな作品ついて、ライトな感想や様々な解釈・評論を掲載orつらつらと私「どい」こと井戸陽介の感想を書く場にしたいと思います!観ようと思ってる作品、観たい過去の作品を探す時とかの参考書みたいに活用してもらえればと♪

NEWオススメ最新作♪(※ネタバレはありません。)

『ゴッドファーザーPart Ⅱ』のマフィアのボス───ヴィト・コルレオーネが、朝の公園で太極拳をやるシーンから始まる本作。

『アンタッチャブル』のギャングのボス───アル・カポネが、チャーミングな好々爺然とした自己PR動画でタイトルロールを飾る本作。

…もう心掴まれずにはいられません(笑)

誰もが名優ロバート・デ・ニーロの好演に魅入られること間違いなしの最新作をご紹介!

『The Intern』
[邦題:マイ・インターン]
(2015)

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ターミナル』や『マダム・イン・ニューヨーク』など、ハートフルでコミカルなヒューマンドラマにまた一つ名作が生まれた気がしています。

本作、ロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイのダブル主演となりますが、主人公は確実にアン演じるジュールズだと思うんです。

冒頭でも述べたように、とにかくデ・ニーロの名演が本作の魅力の半分以上を占めているんですが、キャラクターで言うと良くも悪くも完璧なんですね。

欠点がない。

そういう言い方するとアレですが、いや、ホント、マジで魅力的なんスよ(笑)

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物語の始めから終わりを通して、一貫してダメなところがない。
そういうキャラクターは、特に『ヒューマンドラマ』というジャンルにおいては主人公にはなり得ないんですね。

『アクション』のジャンルであれば成立するかもしれません。…スティーブン・セガール先生みたいに(笑)

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「呼んだ?」


アクションであれば主軸は格闘、重火器、乗り物などのスタントであって、極端な話それが格好良ければ格好良い程いい訳です。

主人公が完璧であってもなんら問題はないし、完璧な方が格好いいアクションができるのも頷ける。

けれどヒューマンドラマというのは兎にも角にも「人の変化」を描いており、物語の核はそこなんです。

だからこそ「完璧な人」というキャラクターは大きな変化を望めないので、主人公には向いていません。

まぁ、逆に言ってしまえば最高の助演キャラクターな訳です。

主人公が目指すべき人であったり、主人公に的確なアドバイスができるキャラであったり、困った時に助けられるキャラクター、つまり「助演」です。

本作でロバート・デ・ニーロ演じるベンは、長年電話帳製作会社の事務畑、営業畑で働きあげ、奥さんを亡くし時に寂しく感じることもありつつ、今は一人で悠々自適の暮らしをしています。

そんな酸いも甘いも知り尽くした70歳の新人が、220人が従事するファッションサイト経営会社にインターンとしてやってくるところから物語が始まります。

その彼が社長であるジュールズの専任インターンになるのですが、そのジェネレーションギャップから若干ジュールズが苦手意識を発揮するものの段々と交流を深めていき…という展開です。

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物語の要所で主人公がトラブルに見舞われたりツラい事があったりしますが、最後まで観客を不快にはする事のない、とても気持ちの良い映画です♪

しかし、ただただ甘ったるいだけのストーリーではすぐに飽きてしまいますし、誰も長く観ていたいとは思いません。

本作にはきちんと「渋み」が含まれています。

その上でその渋みが不快なものではなく、味わいとしてこの映画の魅力となっています。

どういうところが渋みかは展開のネタバレになってしまうので伏せますが、主人公や会社に降りかかるあれやこれや、人間関係のあれやこれ、とっても人間臭く共感できる物語となっています♪

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■『マイ・インターン』あらすじ
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ジュールス(アン・ハサウェイ)は、家庭を持ちながら何百人もの社員を束ね、ファッションサイトを運営する会社のCEO。

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女性なら誰しもが憧れる華やかな世界に身を置く彼女。
仕事と家庭を両立させ、まさに女性の理想像を絵に描いたような人生を送っているかに見えたが...彼女には人生最大の試練が待っていた。

そんな悩める彼女のアシスタントにやってきたのは、会社の福祉事業として雇用することになった40歳年上の“シニア”インターンのベン。

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人生経験豊富なベンは、彼女に“最高のアドバイス”をする。

次第に心を通わせていく2人だが、彼の言葉に救われたジュールスには予期せぬ人生の変化が訪れるのだった。

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ベンのまばたき練習、ベンが初めてFacebookのアカウント登録をするシーン、ジュールズの娘とベンの交流、見どころがとっても多くて始まりから終わりまでずっと映画に引き込まれます。

また、良い映画には良い音楽が付き物。
本作のスコアもとっても魅力的です。

魅力的に映し出されたブルックリンの街並みと、良い音楽と良い物語、そして何より素敵な登場人物たちに酔いしれる121分。

良い映画には自然と劇場の観客のリアクションもついてくるものです。

場内が一体となって笑い感動することができる映画ですので、是非劇場でご覧いただきたい一作です♪

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■下ネタ
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下ネタって意外と扱うのが難しいと思うんです。

思い切り下らない感じのネタでの大爆笑や、もっと多くの人が笑えるようなユーモアの範疇でくすっと笑えるものなど、いろいろなトーンが考えられます。

セリフ自体はもちろん、演じる人がどういうトーンで言うか、どういう画の上でそのセリフを言わせるか、少しのさじ加減でその印象が変わってきてしまうものですよね。

ホリデイ』の時も感じましたが、監督のナンシー・メイヤーはその辺りのバランス感覚も上手な気がします。

下ネタ然としながらも、イヤらしくない。

そのあたりって結構女性監督ならではの強みなのかなーと思います。

例えばレネ・ルッソ演じるフィオナのマッサージシーン。

彼女はジュールズの会社で専属マッサージ師として働くキャラクターで、ベンと良い感じの関係になります。
そして劇中でベンが彼女にマッサージをしてもらうシーンが2回あるんですが、そこに良い具合に下ネタがまぶされていて爆笑を生みます。

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「女性も心から笑える下ネタ」
それは確実にこの作品の魅力の一端を担っていると言っても過言ではないでしょう。

ちなみにレネ・ルッソはここ最近映画への出演がまた増えている女優さんですが、顔のきつさから、今回みたいなチャーミングなキャラクターを演じているのは個人的には意外でした。

良い意味で裏切られたキャスティングです♪

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■3人組(あらため3バカ、もしくはエセ・オーシャンズ)
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3バカとは誰のことか。

レディースデーにとっても混み合いそうな映画の中で3バカと呼ばれてしまうキャラは一体誰なのか?

…彼らです。

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・デイビス(左)
元ニートっぽいインターン。
若手枠でもインターン採用を行っていたようで、ベンとは同期ということになります。
完全にこの映画のコメディ・リリーフは彼でしょう。
彼が画面に登場すると明るく騒がしい方に物語が進みます(笑)

・ジェイソン(右)
ベンの出勤初日に社を案内する中堅社員。
良いやつです。良いやつだけど女心がわかってない…。

・ルイス(中)
ベンの隣の席に座る中堅社員、
3バカの中では一番マトモ。というかいたって普通の人ですw


3バカあらためエセ・オーシャンズwww
(これは映画を観てもらえれば分かるネタですw)

オーシャンズのネタはこの映画のコメディという側面で最大のハイライト───ジュールズのお母さんの自宅に侵入し”ある"ミッションを遂行するくだりで登場します!

まぁ、そこは文章で説明してしまうのは勿体ないので是非映像でご覧あれ(笑)

そこでベンを筆頭にこの3バカが絡んでくるんですが、この三人が映画のコメディ部分を担っており腹を抱えて笑わせてくれます。

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ちなみにこの3人はお笑い担当でありつつ、ベンの説得力や影響力を測るバロメーターになっているんですね。

彼らは皆、ベンから何かしらのアドバイスをもらったり、影響を受けたりしています。

デイビスは生活や人生においてベンに助けてもらい、ルイスはファッションや身だしなみなどの面でベンに憧れ、ジェイソンは恋愛面でアドバイスをもらうなど、彼らも物語の中で少しだけ変化していきます。

先述の通り、ジュールズは大きく変化しそれが観客の共感を得て、観る者の心をつかみ感動させるわけです。

そういう趣旨の映画ですので、主人公を成長させるという役割を与えられた「ベン」なるキャラクター。
彼がいかに魅力的であり、素敵な人物であるかを観客に提示する必要がありますよね。
そうでないとこの映画は、ジュールズが中途半端な成長を遂げるだけで消化不良のまま終わってしまいます。

物語では彼女と深く関わる前に、ベンはまずこの三人と交流しているんです。
前半にそのシーンをもってきて、三人とベンとの交流を描くことで、ベンの「説得力」「影響力」を描くからこそ、後半でジュールズに影響を与えていくベンというキャラそのものや、そのアドバイスを素直に受け止めることができるんじゃないでしょうか。

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■ロバート・デ・ニーロについて
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冒頭でも少し書きましたが、ロバートデニーロは『ゴッドファーザー』や『アンタッチャブル』『タクシードライバー』『レイジングブル』『ヒート』『ミート・ザ・ペアレンツ』など、数々の代表作を持つ名優です。

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アカデミー賞も受賞しており、歳をとってからはコメディにも積極的に出演するなど、コアな映画ファンはもちろん大衆ウケもいい稀有な存在ですね。

近年は『世界にひとつのプレイブック』などで、デビッド・O・ラッセル監督の作品の常連といったイメージもあります。

特に若い頃はその徹底した役作りが話題で、頭髪抜いたり、体重の増減を繰り返したり、キャラクターが住む土地へ移り住んでみたり、とにかく役への執念がすごい。

そういったデ・ニーロ流の徹底した役作りは「デ・ニーロ・アプローチ」と呼ばれるようになり、彼の代名詞となりました。

他にもこういう役者バカ(敬意を込めてそう表現しています)は他にも多数います。

◇クリスチャン・ベール
『マシニスト』
『アメリカン・ハッスル』
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◇ヒース・レジャー
『ダークナイト』
『ブロークバック・マウンテン』
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◇シャーリーズ・セロン
『モンスター』
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
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◇ジョニー・デップ
『エドウッド』
『ブラック・マス』
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◇マシュー・マコノヒー
『ダラス・バイヤーズ・クラブ』
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◇エドワード・ノートン
『アメリカン・ヒストリーX』
『ファイト・クラブ』
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◇ヒラリー・スワンク
『ミリオンダラーベイビー』
『ボーイズ・ドント・クライ』
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◇伊勢谷友介
『あしたのジョー』
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◇鈴木亮平
『天皇の料理番』
『俺物語!!』
『変態仮面』
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◇松田優作
『ブラック・レイン』
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◇三國連太郎
『異母兄弟』
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身体や見た目の変化に限らず、精神的に自分を追い込んだり、自ら過酷な環境に身を置いたりなど、徹底した役作りで観客を魅了する俳優像────デ・ニーロはその先駆けとも言える存在です。

今回はどちらかというと生身のデ・ニーロに近いので、等身大のまま演じている感が強いと思います。

個人的なイチオシシーン。

彼が奥さんの事を思い出して涙する場面があるんですが、そこでグッときてしまいました。

『雨に唄えば』の映像で涙ぐむベンに、もらい泣きです。

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■監督について
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監督のナンシー・メイヤーは『ホリデイ』という名作を世に生み出した名監督です。

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つい最近もジェニファー・ローレンスの発言で話題となったハリウッドの男女格差。

そんな問題がまだ根深く残るハリウッドにおいて、ヒットを連発する女性監督として稀有な存在なのかなーと思います。

そんな監督は、ニューヨークを撮るのがとっても上手いなぁと思いました。

上手いというか、人々の頭の中にある『理想のN.Y.』を確信犯的に仕上げてきてる気がします。

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■あとがき
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「新旧の価値観の交流」というのも本作のテーマ。

ビンテージもののスーツケースを隣の席のルイスが良いと思ったり、ファッションの通販サイトのビジネスモデルにベンが感心したり。

そんなテーマを象徴するのが「ハンカチ」。

ベンが常に持ち歩く必須アイテムなんですが、若い世代の登場人物は彼に「ハンカチなんてなんのために持つのか?」と問いかけます。

彼はいぶし銀な感じで答えます。

「女性の涙を拭くためにあるんだよ
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この映画を観る時にも持っていくことをオススメします(^^)

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■予告編
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