№6
日付:2023/2/24
タイトル:とべない風船
監督・脚本:宮川博至
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン1
パンフレット:あり(\800)
評価:5.5点

 

瀬戸内海の島で暮らす男と、その島を訪れた女の、再生の物語。

監督は確信犯的に男の人物描写と映画のタッチを徐々に変えていくので、観客の側も「あれ?そうなの?」となる。映画紹介コーナーや記事で事前にあらすじを聞いていたりすると、色々と台無しになってしまいそう。

 

立ち直れないままの憲二(東出昌大)に、島の住民がくれる勇気の数々。凛子(三浦透子)の母親とのエピソードをはじめ、自然と涙が溢れ出る。自宅の物干し竿に括りつけられた風船が、本作の映画としては実にベタなモチーフの象徴として描かれますが、これも最後に最高の出番が待っている。

過去の呪縛から抜け出せない男を東出君が好演。三浦透子さんは一見主人公のように見えて、実は物語の進行に合わせた少々便利使いな役回りに過ぎないのがちょっと可哀想に思えた。

 

1980年生まれの宮川監督はこれが長編1作目ですか。映像制作の現場にいたとはいえその演出センスに巧みさも感じた。地元広島で豪雨災害を経験した監督が向き合ったテーマへの本気度が、心揺さぶられるシーンに生かされていると思います。次回作にも付き合いたいと思いました。

 

 

 

パンフレット。シナリオ付きだった