№27
日付:2022/8/27
タイトル:犬王
監督:湯浅政明
劇場名:小田原コロナシネマワールド SCREEN3
パンフレット:あり(\1,400)←高っ!
評価:5点

 

時は室町、未だ南北朝の諍いが続く都を舞台に、異形の能楽師“犬王”と若き琵琶法師が民衆の絶大な支持を得てゆく様を描いた本作。

 

二人の生い立ちと出会いが描かれる前半。

人ともののけが共存し、互いに干渉し合っていたこの時代の生贄として生まれ育った子供達の逞しい生命力そのままに、湯浅ワールドがダイナミックに繰り広げられる。ワクワク感が止まりません。

 

ゲリラライブを敢行し、民衆の心を掴んだ挙句に時の政権の目に留まる後半。

彼らが市中で繰り広げる劇中劇としてのアヴァンギャルドな舞台は、当時の民衆には初めて観る新鮮極まりない舞と演奏だったのかもしれませんが、スクリーンを通したその先の観客、つまり私達にとってはただの模倣に過ぎない。ここ数十年の間に実在したミュージシャンやダンサー達のパフォーマンスを随所になぞり始める後半の演出は、退屈さが先に立ってしまった。

時の権力者の裁定に翻弄され、時代の闇に葬り去られる二人。そんな中での犬王の変心も、もう一つ釈然としないまま。

 

湯浅監督作品は「きみと、波に乗れたら」以来2作目。間にTVアニメ「映像研には手を出すな!」も観ているのだけれど、この3作を比べただけでも作風にかなりの幅を感じるのと、商業主義に乗っかりつつも妥協はしない作家性も感じる。原恵一監督と同種の魅力と危うさを同居させているような気がします。

 

 

 

 

 

パンフレットは増刷版(初版とは表紙の色が異なる)