№1
日付:2022/1/5
タイトル:偶然と想像
監督・脚本:濱口竜介
劇場名:ル・シネマ1
パンフレット:あり(\1,200)
評価:7.5点

 

「偶然と想像」というタイトルがそのままモチーフとなっているオムニバス形式の3つのお話で構成された本作。ちなみにル・シネマとしては1989年の開館以来、初の邦画上映なのだそうです。

第1話「魔法(よりもっと不確か)」

タクシーの後部座席で延々と続く他愛もない恋バナ(このシーンを飽きさせない濱口監督の力量)。2人が別れた後に始まる、恋に傷ついた経験のある人ならスリリングに立ち会う事になる男女の口論(このシチュエーションを会話劇として成立させる濱口監督の脚本力)。恋の始まりと恋の残骸とが偶然に導かれて交錯する、かつての恋人同士の未練がましい傷つけ合いに付き合わされているだけなのに、実に身勝手なだけの自己中女の葛藤から目が離せなくなる。
 

第2話「扉は開けたままで」

学び直しを志して大学に通う主婦が遭遇する自業自得の災難。よくもまぁこんな話を思い付くもんだと感心してしまう。主婦役の奈緒(森郁月)が程好くエロい。付き合いの浅いカップルがこの作品をデートに選ぶと、鑑賞後気まずいです。

第3話「もう一度」

濱口監督はきっと新作落語のゴーストライターとしても人気を博するのではなかろうか。突飛なシチュエーションで劇場内は度々笑いに包まれた。


登場人物が何人だろうと、基本は2人の会話劇。その世界はお芝居としても成立しそうな建付けだし、実際この内容でそのまま小劇場で客を呼べそうなのだけれど、ちゃんと“映画”として堪能させてくれる。類い稀なる創作力をもって、独自の映画言語を操り観客に映画という表現を“体験”させてくれる監督さん。
濱口作品の入門書としても適役ではなかろうか。本作を面白いと思わない人は以後この監督の作品はパスして構わないかと。

 

一昨年の7月以来となる都内の劇場での鑑賞(上映館少ない!)となりましたが、観に行って良かった。本シリーズは全7話を予定していると、監督自身がパンフレットに寄せた記事で語っていた。残りの4話が待ち遠しい。

この監督の作品から目が離せなくなりました。どこかで濱口竜介監督特集やってくんないかなぁ。

 

魔法(よりもっと不確か)

 

扉は開けたままで

 

もう一度

 

小振りなパンフレット

こんなに小っちゃくて1,200円!?と思ったら、中身は充実。

ドライブ・マイ・カー」に出てくる役者同士の読み合わせのシーンは濱口監督が撮影の前に実際に実施している手法だと知った。
 

チラシ