№24
日付:2021/9/27
タイトル:ドライブ・マイ・カー
監督・共同脚本:濱口竜介
劇場名:109シネマズ湘南 シアター5
パンフレット:あり(\900)
評価:5.5点

 

濱口竜介監督を最初に意識したのは6年前に「ハッピーアワー」が評判になった時ですが、観たいという気持ちが317分という超・長時間な上映時間の壁に負けてしまった。その後の作品ともすれ違うばかりだったのですが、今回ようやく劇場に足を運べた。

 

この作品も179分となかなかの長尺。濱口監督はそれを長いと感じさせることのないシチュエーションとストーリー展開を用意していた。

妻との営みの際に交わされる謎の口述。演出家兼俳優である物語の主人公家福(西島秀俊)による劇中劇(その製作過程の描写がすごい)。残された男たちによる奇妙な三角関係と、愛車サーブの運転を任せた女性ドライバーみさき(三浦透子)との交流とが同時進行的に映像で語られ、最後まで飽きさせない。俳優が舞台上で行う演技と、男と女が実生活で振る舞う演技。その虚と実とが交差しつつ、残された者たちの生き様が問われる。

観ている間中、人気漫画の実写化やベストセラーの映画化といった商業映画とは無縁の、純文学ならぬ純映画とでも言いたくなるような世界に身を置く事となった。作品の出来に対する満足感とは別の次元で、映画という表現手段に誠実に向き合う表現者の姿勢を感じる作品。

 

鑑賞後、村上春樹の原作との関わり具合を確かめたくて早速読んでみた。

原作が「女のいない男たち」という全体モチーフに準拠しているの対し、映画にはそれ以外の要素、女性ドライバーみさきの境遇に家福がシンクロする展開が加わっていて、作品のモチーフ自体も少なからず異なる。原作とは“Inspired by”的な関係で、作品の自立性は高い。

本作への満足度が上がらない原因が二つあって、一つは家福がみさきに共感する様にこちらがみさきの生い立ちに関心を持てない点。敢えて日本縦断まで決行する意味が私には伝わらなかった。

もう一つは冴えない二流俳優として描かれていた高槻(岡田将生)に、必要以上に重要な役回りを与えてしまっている点。一箇所だけ、高槻が家福に向かって原作に忠実に長台詞を話すシーンがあるのだけれど、そこで感じた違和感は、原作を読んでそのセリフが持つ意味というか役割りが、原作と映画とで微妙に異なってしまっているのが原因なのだと判った。

 

大学時代に付き合っていた彼女に浮気されて、思い切り凹んだ過去を思い出した。そもそも妻が浮気する理由が判らないだなんて、男の思い上がりも甚だしいのだ。

 

 

 

原作では黄色のコンバーチブル

 

 

パンフレット