第一回
作り手として金彩の質にこだわるのは、古来それは製品全体の品質と希少性を象徴する場合が多く、
同時にテイスティング茶器としてのグレードのメッセージとも言えます。
これからメーカー目線での話をします。
お茶の先生やアンティークのお店の方も茶器選びの参考にされてください。
※まず限定しておきたいのは、話の前提が硬質磁器に限るということです。軟質磁器そのものがそもそもテイスティングに不向きです。また焼成未熟なものに金彩施したものも除外。あくまでも焼成が完全なもの硬質磁器の色絵の前提で読んでください。
今日はですね、特に「除外したほうがよいものである可能性が高い」ものという目線での話をします。
同時に歴史的有名メーカー共通の生産ラインの発想など行間から感じていただけると物を見る手助けになるでしょう。
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第二回
本当のことを書くと都合の悪い人が出て行ったり、反発するのはわかります。
しかしだからと言ってお茶の味や酒の味を阻害するものを黙って推薦しておくのは良心に反します。
業界の既得権はお茶にやさしいところで展開してほしいです。
道具屋さんもきちんとテイスティングして茶器としても両立するアンティークを出来るだけ別枠で紹介してほしい
人達が多いことを再考していただければと。
さて本題です。
このところの金価格の上昇を見ても、金は国際的な資産としての価値が確立したものです。
金の保有ということは様々な経済的意味合いがあります。
同時に、金は工業製品の素材として用いられる「マテリアル」でもあります。
経済的意味合いの強い常に高額な金というマテリアルを「工芸品」に用いるということは
作り手としては金を用いることは常に高い「コスト」を乗り越える必要に迫られることでもあります。
そして同時に、金の相場、各国の金融政策に非常に生産現場が影響を受けやすいことになります。
皆さんお手持ちのマイセンでもヘレンででもいいです。
こういうことをお考えになってお茶を飲まれたことありますか?
皆さんのマイセン、ヘレンドなど西洋アンティークの金はいかがでしょうか?
もしかしてすり減ったり、最初から違う色が乗せられていたり。
アンティークだからと現代のものと違っても気にしなかったと思います。
ただのデザインの違いだと思ってきたかも知れませんね。
本来磁器は高級品であり、王侯貴族がその品質を高め競わせてきた経緯があります。
中国の官窯然り、日本の潘窯然り、高い品質を求めるベクトルに変わりはありません。
それがまた世界共通のクラフトマンシップ由来でもあります。
ところが、支援者を失って企業自らが経営に迫られる時代になると状況のベクトルが変わります。
本来、メーカーというものはベストで仕事をしているものですが
経営者の判断によっては、企業を維持するために時流で材料や工法を変えることで
対応することがあります。
その典型が、国家的財危機や戦争です。
国民の消費そのものが落ちたり、統制されるばかりではなく
メーカー側も原料の調達が困難になるなど影響が出ます。
とりわけ強く影響出るのは金です。
移動できる財産としての金の需要が高まったり
戦費調達のため金が制限されたり
工業用としての金の流通に制限がかかります。
第二次世界大戦におけるヨーロッパの諸窯を見れば
金を利用すべきところが、黄色になったり緑になったり他の在庫の顔料が代用されています。
これはデザイン的にそうなったのではなく、あくまで金が不足している、または金を節約している
苦肉の代用策なのです。
では、この現実から、皆さんはそのようなことを想定して茶器を選ぶでしょうか?
次はそこに行きます。
ここに仕事の合間に書き足していきます。
景徳鎮東北試験場にて、ほんづづはこれまで。ごぎげんよう。Good day!(斎藤實子爵の物まね)