それは遠い夏の日のお話。

 

 

あしあとあしあと

 

 

昨年の今頃から、

みっちーの通訳をしてきた訳なのだが、

 

私は昔から、

目に見えない存在に掴まれやすいというお話をば。

 

 

 

 

 

それは私がまだ小学生の、

とある夏の日。

 

毎年恒例の北海道帰省。

 

いつも通り、

母方の祖父母の家に泊まっていた。

 

 

お盆には、

祖父の弟妹が家に来て、

仏壇に線香をあげるのが恒例行事だった。

 

その年も、

いつものように線香をあげ、

お茶をして帰っていく親戚たち。

 

中でも一番親しみのあった、

私から見たら叔父にあたるその人も、

いつも通り線香をあげ、

お茶をして、

「最近はペースメーカーの調子も良いんだよ。」

「こちらの家にも遊びに来なさいよ。」

なんて話をして、

いつも通り帰っていった。

 

 

翌朝、

叔父は目を覚まさなかった。

 

 

 

 

 

数年の時が経ち、

母がこんなことを言い始めた。

 

「叔父さんが夢に出て、

喉が渇いたと言っている。」

 

 

私も母も、

夢で誰かに何かを言われるというのは、

昔から良くある事だった。

 

その年の北海道帰省では、

叔父にも線香をあげに行こうという話になった。

 

 

私の母方の先祖たちは、

お寺に御骨を納めている。

 

お寺の中はとても広い上に、

皆同じ見た目の棚がギッシリと並んでいる。

 

どの棚に御骨が納めてあるのか、

場所を知らずに行ってしまったら、

とてもじゃないが探し出せない。

 

 

それにも関わらず私達は、

叔父の御骨がどこに納めてあるのか、

聞くのを忘れたままお寺に行ってしまった。

 

当時はまだ母も携帯を持っておらず、

一度公衆電話まで戻り、

祖母に場所を聞くことになった。

 

私と父だけ、

その場で待っていることになった。

 

 

当時の私が何を思ったかは覚えていないが、

ふと、

気になった方へ歩き始めた。

 

とある棚の前に辿り着いた。

 

 

後ろから着いてきた父が、

棚の中の位牌を見てこう言った。

 

「叔父さんの名前が書いてある。」

 

 

しばらく待つと、

母が慌ててやって来た。

 

「探せなくなるから動かないでと言ったのに。

場所を知っていたなら先に教えてよ。」

 

 

そこはやはり、

叔父の御骨が納めてある棚だった。

 

もちろん、

子供の私が場所を知っているはずもない。

 

 

母がこう言った。

 

「きっと、叔父さんに呼ばれたんだね。」

 

 

 

 

あれから20年以上の時が経った今でも、

私は良き様に掴まれ、

使われています。

 

先祖の皆様方、

どうか安らかに。

 

 

あしあとあしあと