学生時代に自転車屋で入手したカンパニョーロのカタログを見つけたので、ご紹介します。
冊子ではなく、1枚の紙を短冊状に四つ折りにした表裏8ページのカタログです。しかし、ペラペラの紙ではなく、光沢のある厚紙を使っているので、かなり高級感のあるものになっています。
50周年のロゴが入っているので、1983年のものですね。ただ、50周年記念モデルは掲載されておらず、当時の商品ラインナップを紹介している総合カタログです。
表の面は大きなピスト競技のカラー写真が3ページ分を占めていて、ピストのバンクに大きくCampagnoloのロゴが入っています。折ってある時は気づきませんが、広げてみると、なかなか迫力のある写真ですね。
裏面はコンポの紹介で、
スーパーレコード
レコード
ツーリング
グランスポルト
980
の5種類のコンポと、工具セットが掲載されています。
日本語で説明が書いてあるのですが、イタリア語から翻訳したと思われる文章は少々陳腐な感じの文章です。それでもカンパニョーロが日本語版のカタログを作ったということは、日本市場に本気で目を向け始めたことの証でしょう。
では、個々に見てみましょう。
スーパーレコードのリアメカはすでに後期型になっています。
レコードのコンポは、リアがヌーヴォレコード、フロントは穴あきのモデルです。
グランスポルトのコンポは、リアがヌーヴォ・グランスポルトで、フロントは穴なしのモデルです。ブレーキレバーのパッドはアメ色ではなく黒になっています。
いずれのコンポでも、ペダルの内側にはシューズが入りやすくするためのツノ状のプレートが付いています。
このツノ状のプレートは、カンパのトークリップにも付いていますが、この時はまだトークリップがコンポには含まれておらず、プレート単独でも存在したようです。
ツーリング用コンポはあまり馴染みがありませんが、主にアメリカ市場向けだったようです。グランスポルト・ツーリングというトリプルのチェンホイールに、リアは縦型のラリー・ツーリング、フロントはレコードという組み合わせになっています。
そして980のディレイラーセットです。
980は、1980年に発売された製品で、グレードとしては中級クラスです。それまでのスーパーレコードやヌーヴォレコードなど、芸術品レベルにまで洗練されたデザインのディレイラーと決別し、カンパが新しい時代に踏み出した第一歩の製品ですが、それにしても、角ばった金属の塊のようなデザインは、見るからに粗削りという印象です。980がお好きな方には申し訳ありませんが、私には『カンパ迷走の時代への第一歩』だったと思われてなりません。
フロントは曲線的なデザインからシャープなデザインに変わり、この流れは、その後のCレコ時代を経て、現代まで踏襲されています。
さて、最後は有名なカンパの工具セットです。こちらは、古き良き時代のカンパの良心と矜持が詰まった名品で、ある意味、全盛時のカンパの凄さが最もわかるアイテムであり、最も魅力的なカンパ製品のひとつかもしれません。
創業50周年の節目である1983年のカタログには、良くも悪しくも、古いカンパと新しいカンパが同居していました。
自ら変革を決意したカンパニョーロですが、あれからすでに半世紀近い年月が経った今日から見ると、栄光の前半世紀と苦悩の後半世紀の境界がそこにあるように感じられました。