2年前に同人紙に寄稿した

 

エッセイ「恩返し」の続きです

 

恩返し① 女医の進路 産婦人科の場合 | 三兄弟国公立医学部受験現役合格日記 シンママ産婦人科医の手抜き子育て (ameblo.jp)

 

恩返し② 女子の進路 産婦人科の場合 | 三兄弟国公立医学部受験現役合格日記 シンママ産婦人科医の手抜き子育て (ameblo.jp)

 

 

先日、後輩の女医さんが近くに婦人科のクリニックを開いたというので、お祝いに駆けつけた。

 

ターミナル駅から歩いて二分、メデイカルモールと呼ばれる各科のクリニックが集まった新築のビルの最上階。

淡いクリーム色で統一された院内は、女性デザイナーが手掛けたらしくおしゃれで都会的なデザインだった。

真新しい診察台や使いやすそうなエコー機器を案内しながら、後輩の先生はその積極的な性格に似合わずひどく遠慮がちに言った。

 

「婦人科は専門外のことも多くて、色々教えてください」

 

彼女は複数の周産期センターで産科医療の中心で頑張ってきた、いわゆる産科のプロだ。

 

ずっと産科を専門にやっていくのだろうと思っていたから、今回の婦人科医への転身は私には意外だった。

 

 

ただ、一人っ子のお嬢さんが入園するタイミングで、仕事をどうしようか相談を受けたことがあったので、彼女なりに悩んでの決断であろうことは想像できる。

 

彼女ですら子育てと産科医を両立していくことはできないのかと思うと、やはり問題の根は深い。

 

もちろん婦人科のクリニックだって決して足りているわけではないから、彼女のような産科医も経験し子育て中の女医さんが、地域で診療をすることに十二分な意義はある。

 

きっと患者さんの立場の立ったいい診療ができるはずだ。

 

ただ子育て中の女医が、産科や救急など負担の多い仕事から離脱するのを見るたび、このまま女医の比率が増えていって大丈夫なのかと心配になる。

 

今、産婦人科を志す若い医師は女性の割合が圧倒的に多い。

 

五十代以上の年配の医師は男性が大半だから、景色はすっかり変わってしまった。

 

学会などに出かけても、年長者は男、若手は女ばかりと、そのコントラストは奇妙な程だ。

 

 

医学部の五年生になった長男に、産婦人科をめざす男子学生はいないのかと聞いてみた。

 

「えっ、なんで?あれは女性がやればいいんじゃない?男の出る幕じゃないよ」

 

とのんきに答えた。

 

あまりの意識の違いに愕然とする。

 

私が若いころ、産婦人科はキツイ、きたない、休暇が取れない医者の三K職場と言われ、特に女子はあまり行きたがらなかった。

 

最近の女性外来、レディースクリニックブームで産婦人科のイメージもずいぶん変わったのだろう。

 

 

対応できる女医が増えたせいもあるが、若い未婚の患者はもとよりすべての年代で、診察を「女医希望」や「女医限定」とする患者はもう日常だ。

 

産科などの負担の多い常勤医は男性医師や子どものいない女医。

パート勤務や健診業務は子持ちの女医というすみわけが、なんとなくできつつある。

 

最近の医学生は合理的だから、大変な割には男というだけで冷遇されそうな科にはいきたくないということだろう。

 

 

 

エッセイ 恩返し④につづきます