なかなか”100選”に戻れませんが、妙に気になるチャン・ヘッサル出演作をAmazonPrimeで見つけちゃったので…負けることの恐怖から囲碁を諦めた元天才囲碁少女がふとしたことから五目並べに邁進することになる青春ストーリーの小品…「五目少女」

 

第一手【神童】 イ・パドゥクは、トルチャンチ(1歳誕生日祝い)で好きなものとして碁石をつかみ、連戦連勝を続け神童と呼ばれる天才囲碁少女だったが、ミドルティーンの時とある試合に敗れ、負けることの恐怖に取りつかれ囲碁を辞めてしまう。今の彼女は、生活費を稼ぐため、何故か囲碁クラブでバイトをしている。ある日、閑つぶしにクラブにたむろする少女ヨンナムと五目並べをしていて、ヨンナムがピンチに陥り長考しているところへ突然眼鏡の青年が近寄り、見事な逆転手を耳打ちする。青年は地域の五目並べ大会のポスターを貼りに来たキム・アンギョン(眼鏡)だ。五目並べを見下しているパドゥクだが、ポスターの1位賞金50万₩(5~6万円)に心が動く。同居人トン・ガインが魔除け札を餌にカモられたりで金欠病なのだ。こうしてパドゥクは五目並べの深淵な世界に誘われていく…

 

元囲碁の天才少女のイ・パドゥク(=囲碁の意味)に、「聖女」で強烈デビュー後「宝くじの不時着」などで輝くキュートなパク・セワン、パドゥクを五目並べの世界に引きずり込む謎の眼鏡の青年キム・アンギョン(=眼鏡の意味)に、『力の強い女ト・ボンスン』などTVでは活躍中と聞く映画デビューの二枚目アン・ウヨン、囲碁サロンにたむろする生意気少女チャン・ヨンナムに、「犬どろぼう完全計画」でイ・レと共にW主演など達者な子役イ・ジウォン、パドゥクのルームメイト、トン・ガイン(同家人=同居人)に、「愛鼻叫喚」ヒロイン友人役で妙に気になるチャン・ヘッスル、怪しげな五目並べ師匠サンサム(双三:五目並べの石形で三目並びが二つ出来ること、いわゆる三三)、「アワ・ボディ」「ひかり探して」など文芸作でも名演キム・ジョンヨン。監督は、「今日よりもっと」のペク・スンファ。

 

まずは五目並べ(競技名では連珠)の思い出を少し。中学生くらいの時でしょうかそれなりに五目並べに凝ったことがあります。制約のないルールでは先手(黒番)が必ず勝つことが明治32年には証明されていて、中学生当時、白番が最善手を打ち続けて150~200手くらいだったでしょうか、必勝手番を追いかけたことがあります。そのため、連珠のルールでは黒の2手目に制約をかけたり、三三、四四など禁じ手が決められたりしています。感想に戻りますが、本作は60分弱という短尺で、映画かいな、と疑問を持ちましたが、KMDBでも1,253人と観客数も記録されているので劇場公開されたと思われます。作りはそれなりに工夫されていて、第一手【神童】第二手【着手】第三手【布石】第四手【双三】第五手【五目】と章分けしてヒロインの新世界五目並べへの挑戦を軽やかに描いています。よくある、五目並べとの出会い、地獄の特訓、大会挑戦、みたいな話で新味はありませんが、細かいギャグもそれなりですし、多少五目並べを知っていたら、ウムウム、とか思わず応援しちゃう感じはあるかもしれません。

 

とはいえ二時間ドラマほどの密度があるわけでもないので、迂闊に近づくとアンガー・コントロールが必要になる方も多いと思われるので、お気を付けください。個人的には、ヒロイン、パク・セワンの魅力が十二分に発揮されていて、名脇役キム・ジョンヨン、名子役イ・ジウォン、今回もヒロインの変な親友役が笑えるチャン・ヘッスルなどのおかげで、フムフム、といった感じでしょうか。

 

楽曲について。エンディングに流れるのは<電気うなぎ(전기뱀장어)>というチャネル登録者数4330人の無名四人組バンド2016年「赤道(적도)」という曲ですが、これが意外にイケてたりします。もう一曲劇中でも使われたチャン・ヘッスルががなりまくるパンクも流れますが、ここは耳を塞いだ方が良いでしょう。

 

ちなみに、全くどうでも良いことですが、同居人トン・ガインの部屋には何故かイム・スジョン「あなたの頼み」のポスターが貼られてたりします。特に監督とかと関係があるわけではなさそうですが、金に縁のない売れないパンク歌手志望ではあるものの趣味は良いようです。