<正式なポスターが見つからないので、この作品を上映した短編映画祭広報のタイトル画像を借用しています>

 

YouTubeサーフィン中に個人的に大注目の女優二人を見つけたので…実力派若手女優二人がブレーク前に組んで、女子高生の同性愛をリリカル、そしてちょっと残酷に描く秀作中編…「あるアルゴリズム」

 

スマホ画面の中でミナは「ユンジョンだけには言わないで」と懇願している…ユンジョンは手首にカッターを当て、ヒョンジに迫る。「好きだって言ったじゃない」しかし、ヒョンジの答えは冷たい。そこで演出・脚本チウォンが制止する。ここはソンファ女子高校演劇部の練習場で演目は女子高生の同性愛の悲劇を描く「落花」。チウォンはヒョンジに「もっと男っぽく」と指導するが、ユンジョンは不満げだ。どうして女同士の愛情で片方が”男らしく”しないといけないか分からないと言う。ユンジョンは同性愛者で、ちゃんと理解して脚本を書いて欲しいと言い放つ。廊下でこっそりユンジョンを覗き見する女子高生がいる。付き合っていたユンジョンに、演劇に集中したい、と別れを告げられたミナで、まだ未練があるのだ。彼女の手を引っ張る者がいる。二人の関係を知るチウォンだ。彼女はミナを屋上に連れて行き、インタビューを受けて欲しいと頼み込む。同性愛を理解したいと言う。これが切ない物語の始まりだ…

 

演劇「落花」演出・脚本担当チウォンに、情報が見つからない美形キム・ユンジ、ユンジョンへの未練に苦しむミナに、この頃は「春の夢」を含むインディーズ系で腕を磨いていた「ベイビー・ブローカー」「緑の夜」などの実力派イ・ジュヨン、ミナに別れを告げた「落花」主演ユンジョンに、この頃は商業映画その他大勢ですがやがて「チョ・ピロ 怒りの逆襲」「ソウルメイト」で開花するチョン・ソニ。

 

40分ほどの中編ですが、ミン・ミホンという女流監督のせいか、繊細な仕上がりになっていると思います。脚本には独特の香りがあって、主人公チウォンの人物造形と物語の締めくくり方に微妙な解釈の余地を残す語り口は、いかにも映画らしい余韻を残し好感です。さらに、映像が魅力的で、手持ちカメラによる本編と、劇中チウォンが主にミナのインタビューを撮るスマホ映像を巧みに切り替え、その中でこれからが楽しみな若い女優の切実な演技を美的に構築する腕はなかなかだと思われます。

 

残念ながら昭和の年寄りには近づきがたい題材なので没入感に欠けますし、くっきりした話が好きな観客には不向きなのでしょうが、イ・ジュヨン、チョン・ソニという注目の女優の成長過程を見守る感覚は悪くありません。この二人の女優に興味があれば、40分ほどYouTubeに時間を割くという手も十分あり得ると思います。

 

【YouTube】An algorithm 2017 engsub<Mochifilms>(英字幕付き)