「同感(リメイク版「リメンバー・ミー」)」美形ヒロインの一人キム・ヘユンが主演と聞いて…ブルドーザーを運転する入れ墨少女の復讐劇、と聞いてサスペンス・アクションかと思いきや、結構ヘビーな社会派ドラマでもあった…「ブルドーザー少女」

 

インチョン(仁川)の裁判所。判事は、コンビニの喧嘩沙汰で店員を守るためとはいえ先に三人の不良女子高生に殴りかかったとして、19歳ヘヨンに反暴力セミナー受講と40時間の職業訓練の判決を命じる。彼女の左腕には二の腕から手首にかけて龍の入れ墨があり、暴力沙汰が初めてはないことも心証を害したようだ。彼女は”海賊のチャンポン”という中華料理屋で、店長の父親ボンジンと幼い弟ヘジョクと暮らしているが、ある夜、父親は油を左腕にかけ火傷を負う。病院に行くが、保険も切れており、クレジットカードも限度額を超え、財布は馬券やロト券で一杯だ。ボンジンはヘヨンに、保険を復活させるため金を貸して欲しい、と頼み込み、ヘヨンはやむなくバイトで貯めた金を振り込む。ある明け方、娘息子の寝顔を確認して、スーツ姿のボンジンは包丁を新聞紙でくるみ出かけていく。それがヘヨンの悲劇の始まりだ…

 

19歳ク・ヘヨンに、「殺人鬼から逃げる夜」ヒロイン妹役で注目され「同感(リメイク版「リメンバー・ミー」)」でヒロインに抜擢された美形キム・ヘユン、ヘヨンの悲劇の父ク・ボンジンに、名脇役パク・ヒョックォン、若いコ・ユソク刑事に、ボーイズグループ<スーパージュニア>のメンバーだという二枚目イェソン、被害者キョンジンに、次作ではヒロインの美形チェ・ヒジン、㈱韓国重装備社長で議員候補チェ・ヨンファンに、二枚目じゃない方のオ・マンソク、チェ社長の右腕テワンに、良く見る脇役キム・ジュンギ、ヘヨンの叔母に、美熟女ヤン・ソミン。

 

痛快アクション系か、と思ってましたが、サスペンスと社会派ドラマ、ヘビーではあるものの双方に優れた作品だった、といえるでしょう。サスペンス面では、父親の起こした事件が実に謎めいています。元の職場に包丁を持って面会に行き、暴れ出し、社長のヒュンダイ高級車ジェネシスEQ900を盗んで逃走、若い二人にぶつかり、そのまま工事中の高架から転落し昏睡する、といったものですが、その真相をヒロインと共に追いかけていくのは極めて上質な映画的体験といえるでしょう。社会派ドラマとしては、やはり独特の尖ったヒロイン像でしょう。幼い弟を守るため、社会や父親に対して怒った針鼠のように敵意をむき出しにする少女像は、必ずしも共感しにくい面も多いですが、ブルドーザーという象徴的乗り物と相まって相当に刺激的だと思います。しかもそんな彼女に、これでもかという悲劇と悪意が降り注ぐ様は、現代社会を見事に戯画化しているといえるでしょう。そこで問題は、このサスペンス要素と社会派ドラマ要素のバランス、或いはモザイク模様が観客を選ぶのではないかと思われるところですが、そこは自分の目で確かめるしかないでしょう。

 

物語のスケールとしては巨悪が出てくるわけでもなく、その意味で映画的ではありませんが、謎の父親の事件や襲い掛かる悪意と必死に格闘するヒロイン像は、充分に価値ある映画時空間を作り上げていると感じます。ともかく、痛快アクションでないことは、頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。一方で、ヒロイン、キム・ヘユンの演技を見るだけでも充分価値あり、とする観客も少なくないかもしれない、と思ったりもしています。