連続3本目、ちょっと古めのホラーですが、これが一番暑苦しい夜向けかも…三人の見知らぬ同士の男女が山奥の山荘で目覚め体験する恐怖を描いて、個人的には好感度の高い知的密室迷宮ホラーの佳編…「二つの月」

 

森に囲まれ人里離れた山荘。二人の少女が怪談話に興じている。一人の少女が言う「月が二つ出ると、近くに幽霊(鬼神)がいる。人間界と霊界が出合っているから」…真っ暗闇の中、28歳無職ソクホが目覚める。携帯の明かりで周りを見渡すと突然少女の顔が現れる。怯えきった18歳高校生インジョンだ。二人には何がなんだか訳が分からない。どうやらそこは倉庫のようだ。二人がさらに周りを照らすと女の顔が現れる。28歳小説家ソヒだ。彼女にも事態が分からないようだ。三人は何とか脱出しようとするが、意外にも簡単に扉が開く。そこは深い森に囲まれた深夜の山荘だ。そして家の中では不気味な音が聞こえる。ソクホとインジョンは人里に逃げると森に入って行くが、朝を待つべきだと言うソヒは残る。ソクホとインジョンは森の中を彷徨うが何者かの気配が迫ってきて、結局二人は山荘へと逃げ帰る。こうして、恐怖の一夜が始まったのだ…

 

小説家28歳ソヒに、「狐怪談」で映画デビューし先代「ヨガ学院」でも主演級、密かに”ホラーのプリンセス”と呼ぶ清楚美形パク・ハンビョル、無職28歳ソクホに、「国家代表」などのキム・ジソク、女子高生18歳インジョンに、「しあわせまでの距離」「スウィング・キッズ」などのキュートな名脇役パク・チンジュ、謎の中年女ヨンスンに、今の主演女優の貫禄には今しばらく時間のかかる名女優ラ・ミラン。友情出演では、チョンTVディレクターに、20世紀末から活躍する名脇役パク・ウォンサン。

 

個人的には良く練られたホラーだと思います。中盤までは、「キューブ」を思い起こさせるデス・ゲーム・ホラーっぽい不条理な雰囲気が悪霊的ではなく状況的な恐怖心を巧みに煽っていますし、次第に事態が分かってくる終盤は、ナイト・シャマランやアメナーバル風の知的でトリッキーなサスペンス・ホラーっぽい語り口がじわりと迫ってくる、そういった感じです。とはいえ登場人物5人のこじんまりした低予算ホラーであるのは間違いないので、過度な期待は外れる可能性が高いでしょう。ともかく、作品への個人的な好感度は、ひとえにパク・ハンビョルの魅力に尽きます。序盤の悪女か聖女かの境目で揺らぐ危うさ、とか、凛として気丈な女性像、とか作品の世界観に良くマッチしていると思います。

 

時空の歪みとか、二つの月とか、根本の原因になった事件とか、理解力の無さ故でしょうが判然としない部分が残るので五つ星とはいきませんが、パク・ハンビョルの魅力で引っ張る知的密室迷宮ホラーの佳編と呼んでしまいましょう。これは暑苦しい夏の夜向きだ、といってもそんなに叱られなければ良いんですが…